第4話玉座をもらった弟は、座らなかったバラタとラーマのサンダル(パードゥカー)
シリーズ第4話。森へ去った兄ラーマを想い、父王は若き日に放った一本の矢の報いを抱いて息を引き取る。王位を譲られた弟バラタは全軍を連れて兄を迎えに行くが、兄は父の約束を守って帰らない――二人が選んだ答えは、誰も座らない玉座に兄の履物を置くことだった。



















最後まで読んでくれてありがとう!
森の中に、たった一人。押し寄せるのは一万四千の羅刹軍――。
シリーズ第4話。森へ去った兄ラーマを想い、父王は若き日に放った一本の矢の報いを抱いて息を引き取る。王位を譲られた弟バラタは全軍を連れて兄を迎えに行くが、兄は父の約束を守って帰らない――二人が選んだ答えは、誰も座らない玉座に兄の履物を置くことだった。



















最後まで読んでくれてありがとう!
森の中に、たった一人。押し寄せるのは一万四千の羅刹軍――。
この話のもとになった神話
追放されたラーマは、妻シーター、弟ラクシュマナとともに都を離れ、ガンガー川のほとりにあるシュリンガヴェーラプラに着きます。友であるニシャーダ族の王グハがごちそうを差し出しますが、森で暮らす誓いを立てていたラーマは受け取らず、馬の飼い葉だけを受け取りました。その夜、ラクシュマナはグハと見張りをしながら、地面に寝る兄夫婦の姿を嘆きます。翌朝、兄弟は髪を苦行者の結い髪にし、御者スマントラを都へ帰して、グハの舟でガンガーを渡りました。仙人バラドヴァージャに勧められてチトラクータ山へ向かい、ラクシュマナが木と葉で庵を建てます。
一方、都ではスマントラの報告を聞いたダシャラタ王が悲しみに沈んでいました。ラーマが去って6日目の夜、王は妃カウサリヤーに若い日の過ちを打ち明けます。雨季の夜、サラユー川で水がめに水を汲む音を、象が水を飲む音だと思い込み、音を頼りに矢を放ってしまったのです。射られたのは、目の見えない両親に仕える苦行者の若者でした。王が自分から事実を話すと、若者の父は「お前もいつか、息子を想う悲しみで死ぬだろう」と告げ、夫婦は息子のあとを追って亡くなりました。語り終えた王は、その言葉が今かなったと悟り、ラーマの名を呼びながら真夜中に息を引き取ります。
母方の祖父の国ケーカヤにいたバラタは、不吉な夢を見たあと、急いで都へ呼び戻されます。母カイケーイーから、父の死と兄の追放、そしてそれが自分を王にするための母の願いだったことを聞かされ、バラタは母を激しく責めました。疑いの目を向けるカウサリヤーの前では、企みに関わっていないことを数多くの誓いで示します。父の葬儀を終えると、バラタは王位を断りました。
バラタは軍勢や母たち、祭官ヴァシシュタ、都の人々を連れて兄を迎えに行きます。旗印を見たラクシュマナは攻めてきたと早合点しますが、ラーマは弟を信じていました。兄の足元にひれ伏して帰国を願うバラタに対し、ラーマは父の死を深く嘆きながらも、父の約束を守るために帰りません。最後にラーマは、金で飾られたサンダルをバラタに授けます。バラタはそれを頭に載せ、14年が過ぎても兄が戻らなければ火に入ると誓いました。そして都の外のナンディグラーマにサンダルを据え、自分は苦行者の姿で、兄の代わりとして国を治めたのです。
『ラーマーヤナ』は、ヴァールミーキ作と伝えられる古代インドの叙事詩です。この場面は第2巻「アヨーディヤー・カーンダ」にあります。物語の中心にあるのは「ダルマ」という考え方です。ダルマとは、人として、子として、王族として守るべき正しい道のことで、ラーマにとっては父が交わした約束を最後まで守ることがそれに当たりました。
バラタの姿も、もう一つのダルマを示しています。手に入った王位を自分のものにせず、兄の履物を「本当の王」の印として置き、自分はあくまで代わりを務める。兄弟の信頼と、権力に対する慎み深さが、この話の大きな見どころです。また、ダシャラタの回想は、過去の行いの報いが自分に返ってくるという「業(カルマ)」の考え方と結びつけて読まれることも多い場面です。
なお、射られた若者は、後の時代のインドの物語では「シュラヴァナ(シュラヴァン・クマール)」という名で、親孝行の手本として語られることがあります。ただし、ヴァールミーキの原典には名前は出てきません。
漫画は原典の筋に沿っていますが、絵にするために描き足した部分があります。約3ページのダシャラタの回想は、コマ割りや光の表現が漫画の演出です。原典にあるのは「雨季の夕暮れから夜」「サラユー川」「水がめの音」という条件だけです。若者の顔立ちや両親の庵のようす、グハたちの服装や舟の形、チトラクータの庵や森の植物も、原典に細かい描写がないため、漫画で新しく描き起こしています。
サンダル(パードゥカー)の形も、原典は「金で飾られた」としか書いていません。よく知られる、木の台に指でつかむ突起がついた形は、後のインドの履物をもとにした一般的なイメージで、漫画の絵もその選択の一つです。また、長い説得の場面や、ラーマが国の治め方を細かく尋ねる場面は要点だけにまとめ、人物の心の声や沈黙の表情を漫画ならではの演出として加えています。
「玉座をもらった弟は、座らなかった」は、シリーズ『ラーマーヤナ ―追放の王子と風の子ハヌマーン―』の第4話です。文章だけでは伝わりにくい父王の後悔や、兄の足元で泣くバラタの表情を、ぜひ漫画で確かめてみてください。Manga Portalでは全話無料・会員登録なしで読めます。第1話から通して読むと、追放に至るまでの流れもよくわかり、物語はやがて題名にある風の子ハヌマーンの登場へとつながっていきます。
バラタは、母が兄ラーマを追放させて自分を王にしようとしたことを知り、その王位を正しくないものと考えたからです。王になるべきなのは長男のラーマだと信じ、兄を連れ戻すために森へ向かいました。
兄が本当の王であることを示す印です。バラタはサンダルを玉座に据え、自分は兄が戻るまでの代わりとして国を治めました。
ラーマを森へ送り出した深い悲しみの中で亡くなりました。原典では、若い頃に誤って苦行者の息子を射殺し、その父から「お前も息子を想う悲しみで死ぬ」と告げられた言葉が、このときかなったとされています。
ヴァールミーキの原典には名前は出てきません。後の時代のインドの物語では「シュラヴァナ(シュラヴァン・クマール)」と呼ばれ、親孝行の手本として語られることがあります。
父ダシャラタがカイケーイーと交わした約束を守ることが、子としての正しい道(ダルマ)だと考えたからです。弟や祭官に何度説得されても、ラーマはその考えを変えませんでした。