第8話自分の力を、忘れていた猿ハヌマーンの大跳躍(スンダラ・カーンダ)
シーターを探す期限が過ぎ、南の海辺で希望を失った捜索隊の前に、翼を焼かれた老いた大ワシ・サンパーティが現れる。自分に自信のないハヌマーンは、熊の長老ジャーンバヴァンに「忘れさせられていた力」を思い出させてもらい、ラーマの指輪を胸に、鳥でも何日もかかる海を一跳びで越えていく。



















最後まで読んでくれてありがとう!
魔王の脅しにも屈しないヒロイン。そこへ届いたのは、愛する人の名が刻まれた指輪だった。
シーターを探す期限が過ぎ、南の海辺で希望を失った捜索隊の前に、翼を焼かれた老いた大ワシ・サンパーティが現れる。自分に自信のないハヌマーンは、熊の長老ジャーンバヴァンに「忘れさせられていた力」を思い出させてもらい、ラーマの指輪を胸に、鳥でも何日もかかる海を一跳びで越えていく。



















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魔王の脅しにも屈しないヒロイン。そこへ届いたのは、愛する人の名が刻まれた指輪だった。
この話のもとになった神話
雨季が終わると、猿の王スグリーヴァは集めた猿の軍勢を東西南北に送り出し、「一か月以内に戻れ。遅れれば死罪」と命じます。ラーマはとくにハヌマーンに期待し、自分の名を刻んだ指輪を、シーターに見せる証として渡しました。
アンガダが率いる南方隊は、ヴィンディヤ山の中を探しても手がかりを得られません。地下の洞窟で苦行女スヴァヤンプラバーにもてなされ、神通力で海辺に出してもらったときには、期限はもう過ぎていました。罰を恐れたアンガダは食を断って死ぬと決め、仲間もそれに従って座りこみます。
猿たちの嘆きを聞いて現れたのが、老いた禿鷲サンパーティです。弟ジャターユの死を知った彼は、若いころ兄弟で太陽を目指して飛び、弟をかばって翼を焼かれた昔話をします。そして遠くを見通す目で「シーターは百ヨージャナ(ヨージャナは長さの単位。どれくらいの長さかは諸説ある)の海の向こう、ランカーにいる」と教えます。話し終えると、聖仙の予言どおり翼が生え戻りました。
しかし海を前に、猿たちが言える跳べる距離は10、20…と足りません。年老いた熊の王ジャーンバヴァンは90ヨージャナまで、アンガダは100跳べても帰れるか分からないと言います。そこでジャーンバヴァンは、ひとり黙って座っていたハヌマーンに、風神ヴァーユの子として生まれたこと、幼いころ太陽を果物と思って跳びついたことを語り、彼を奮い立たせました。
体を大きくしたハヌマーンは、マヘーンドラ山から海へ跳びます。途中、海の神に頼まれた黄金の山マイナーカが「休んでいけ」と申し出ますが、礼を言って先を急ぎます。神々に遣わされた蛇の母スラサーは「口に入れ」と迫りますが、ハヌマーンは体を親指ほどに縮めて口に入り、すぐ出てくるという知恵で切り抜け、祝福を受けます。影をつかむ羅刹女シンヒカーは、体の中から引き裂いて倒しました。こうして彼はランカーの山の頂に降り立ちます。ここからがスンダラ・カーンダ(美しの巻)の始まりです。
『ラーマーヤナ』は詩人ヴァールミーキの作とされる古代インドの叙事詩で、紀元前数世紀から紀元後数世紀にかけて形になったと考えられています。この場面は、力を持つ者が自分を信じられないとき、仲間の言葉が一歩を押すという物語として、今もインドで親しまれています。ハヌマーンは忠実さと勇気の象徴として広く信仰されています。
原典では、ハヌマーンは黙って座っていたと書かれているだけです。「呪いで自分の力を忘れていた」という話は、この場面にはなく、後の巻(ウッタラ・カーンダ)に出てくるもので、後から加えられた部分とする見方があります。漫画ではこの設定を使い、心の迷いを描いています。
ほかに、登場人物の姿や衣装、指輪の形、スグリーヴァの地理の説明を地図にまとめたこと、洞窟の宮殿の様子、ランカーに着いたときの夕焼け、跳躍の迫力ある見せ方などは漫画の演出です。
文字で読むと一瞬の跳躍も、漫画ではハヌマーンの迷いから海を越える瞬間まで、大きな絵でたっぷり味わえます。『ラーマーヤナ ―追放の王子と風の子ハヌマーン―』は全話無料、会員登録なしで読めます。第8話で物語の山場への跳躍を、ぜひ見届けてください。
風神ヴァーユの子で、体の大きさを自由に変えられる大きな力を持っていたからです。原典では、熊の長老ジャーンバヴァンに生まれや幼いころの話を聞かされて奮い立ち、跳躍を決意します。
聖仙たちの呪いで力を忘れていたという話は、後の巻(ウッタラ・カーンダ)に出てきます。海辺の場面そのものには書かれておらず、後から加えられた部分とする見方もあります。
ラーマーヤナに登場する禿鷲の王で、シーターを守ろうとして死んだジャターユの兄です。若いころ太陽に近づいて翼を焼かれましたが、猿たちにシーターの居場所を教えると翼がよみがえりました。
ラーマーヤナを構成する七つの巻のひとつで、「美しの巻」と訳されます。ハヌマーンがランカーへ渡り、シーターを見つける場面が中心です。