この話のもとになった物語
ギルガメシュ叙事詩のあらすじ|エンキドゥ誕生と王の暴政をわかりやすく
ひとことで言うと: ギルガメシュ叙事詩は、ウルクの王ギルガメシュと、神が造った野人エンキドゥの出会いと友情、そして死との向き合いを描く、古代メソポタミアの物語です。冒頭では、民を休ませない王の相手として、女神アルルが粘土からエンキドゥを造ります。エンキドゥは遊女シャムハトに導かれ、獣の世界から人の世界へ入っていきます。
元の神話のあらすじ① 王の暴政とエンキドゥの誕生
物語は、語り手の呼びかけから始まります。語り手は読者をウルクの城壁へ案内し、土台に納められた銅の箱を開けて、ラピスラズリの書板を読むようにすすめます。そこに記されているのが、世界の深いところまで見たとたたえられる王、ギルガメシュの物語です。
ギルガメシュは3分の2が神、3分の1が人で、体も力も並ぶ者がいません。ところが王は昼も夜も民を休ませず、息子を父のもとに、娘を母のもとに残しません。人々の嘆きは天に届き、神々は女神アルルに、王と張り合える相手を造るよう求めます。アルルは手を洗い、粘土をつまんで荒野に投げました。こうして生まれたのがエンキドゥです。
エンキドゥは全身が毛に覆われ、人も国も知りません。ガゼルと一緒に草を食べ、獣たちと水場で水を飲んで暮らしていました。
元の神話のあらすじ② 猟師の訴えからパンとビールまで
ある猟師が水場でエンキドゥに3日続けて出会い、恐ろしさに顔をこわばらせます。エンキドゥが穴を埋め、わなを引き抜いて獣を逃がすので、猟ができなくなったのです。父の助言で猟師はウルクへ行き、王の命令で遊女シャムハトを連れて水場へ戻ります。
エンキドゥはシャムハトと6日7晩を共に過ごします。そのあと獣のもとへ戻ると、ガゼルたちは逃げていきました。足は以前より弱くなりましたが、かわりに知恵と広い理解を得ます。
シャムハトはウルクと王のことを語り、王が見た2つの夢の話も伝えます。天から落ちてきた塊の夢と、通りに落ちていた斧の夢です。王の母である女神ニンスンは、どちらも力強い友が来る知らせだと解きました。
第2の書板の前半は欠けた部分が多く、古い時代の別の版で補って読まれます。シャムハトは自分の衣を分けてエンキドゥに着せ、羊飼いの宿営へ連れて行きます。初めてパンとビールを口にした彼は、ビールを7杯飲んで歌い、毛を整えて油を塗り、人の姿になります。そして夜の番人として、獅子や狼から羊を守るようになります。
この神話が伝えていること(文化・時代の背景)
ギルガメシュ叙事詩は、古代メソポタミアで粘土板に楔形文字で書かれた物語です。この記事のもとになった標準バビロニア版はアッカド語で書かれ、12枚の粘土板にまとめられています。編者はシン・レーケ・ウンニンニという人物だと伝えられています。
神々の対応も興味深いところです。神々は王を罰して滅ぼすのではなく、王と対等な相手を造りました。メソポタミアには、神が粘土から人を造る話がほかにも伝わっています。
エンキドゥの変化は、野生から人の暮らしへの移り変わりとして読むことができます。獣の仲間と速い足を失い、知恵とパン、ビール、友を求める心を得る。人になるとは何を失い何を得ることなのかを考えさせる場面です。物語の後半では、この友との別れをきっかけに、王は死という避けられない問題と向き合っていきます。
はっきりしない点もあります。暴政の具体的な中身は原文が難しく、若者を競技や労役に駆り出すことだという解釈があります。また、夢に出る「塊」と「斧」は、別の言葉にかけたしゃれだという説もあります。
漫画版で変えたところ
原典にあるのは、王の暴政、民の嘆き、アルルが粘土を投げること、獣と暮らすエンキドゥ、わなを壊すこと、猟師の恐れです。第1話の骨組みは、これらに沿っています。
一方、倒れた若者とその母は漫画で加えた人物で、原典に個々の民は登場しません。「もう一周だ」と命じ続ける場面も、はっきりしない暴政の中身を、強制労働と終わらない競技として描いた脚色です。性的な搾取は暗示にとどめています。
猟師たちの顔や性格、話し方、ウルクや荒野の見た目も漫画で考えたものです。第1話は猟師がウルクへ歩き出すところで終わるため、シャムハトとの出会いや2つの夢、パンとビールの場面は、この話より先の出来事にあたります。シャムハトの心の内は原典がほとんど語らないため、漫画で描く場合は創作となります。
漫画で読むには
文章で筋を知ると、粘土が荒野に落ちる瞬間や、わなを壊すエンキドゥの姿を絵で見たくなるかもしれません。『メソポタミア神話 ギルガメシュ叙事詩 ―死なない者はいない―』は、Manga Portal で全話無料、会員登録なしで読めます。4,000年ほど前にさかのぼる物語の入り口として、まずこの第1話から気軽に開いてみてください。
この話の登場人物
- ギルガメシュ
- ウルクの若い王で物語の主人公。3分の2が神、3分の1が人で、力にまかせて民を休ませない。
- エンキドゥ
- 女神アルルが粘土から荒野に造った毛深い野人で、獣と暮らし、猟師のわなを壊して仲間の獣を逃がす。
- アルル
- 人を造る母なる女神で、神々に頼まれて粘土を荒野に投げ、エンキドゥを生み出す。
- 猟師
- 名前のない人物で、水場でエンキドゥを見ておびえ、ウルクへ知らせに向かう。
- シャムハト
- ウルクの遊女で、エンキドゥを獣の世界から人の世界へ導く(第1話のあとの原典の場面に登場)。
- ニンスン
- ギルガメシュの母である賢い女神で、王の2つの夢を、力強い友が来る知らせだと解く。
よくある質問
ギルガメシュ叙事詩とはどんな話?
古代メソポタミアの王ギルガメシュと、親友エンキドゥの物語です。粘土板に楔形文字で書かれて伝わりました。2人の出会いと友情、そして友との別れのあとに王が死と向き合う姿が描かれます。
エンキドゥとは何者?
女神アルルが粘土から造った野人で、ギルガメシュと張り合える相手として生まれました。はじめは獣と暮らしていましたが、シャムハトとの出会いをきっかけに人の世界へ入っていきます。
ギルガメシュはなぜ民を苦しめたの?
原典は、王が昼も夜も民を休ませず、息子を父に、娘を母に残さなかったと語ります。なぜそうしたのかは詳しく語られず、具体的な中身についても原文が難しいため、若者を競技や労役に駆り出したとする解釈などがあります。
シャムハトはどんな人物?
ウルクの遊女で、王の命令で猟師と水場へ行き、エンキドゥと6日7晩を共にします。そのあと衣を分けて着せ、羊飼いの宿営へ連れて行き、パンとビールをすすめて人の暮らしへ導きます。
ギルガメシュは実在した王?
古代のウルクの王として記録に名前があり、実在した人物がもとになったと考える説があります。ただし、3分の2が神という姿や叙事詩の出来事は、物語として語られたものです。
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