第1話人類最古の主人公は、暴君だったギルガメシュとエンキドゥ
誰にも止められない若き王ギルガメシュに苦しむウルクの民の嘆きが天に届き、女神アルルは粘土から野の者エンキドゥを生む。水場で彼を見た猟師は、恐れを抱えたままウルクへ向かう。



















最後まで読んでくれてありがとう!
野生児が「人間になる」には何が必要か? 4000年前の答えは「愛と、パンと、ビール」
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この話のもとになった神話
ギルガメシュ叙事詩は、古代メソポタミア(今のイラクのあたり)で語り継がれた、ウルクの王ギルガメシュの物語です。世界で最も古い文学作品のひとつとして知られています。よく読まれているのは「標準バビロニア版」で、アッカド語で11〜12枚の粘土の書板に刻まれています。残っている写本は紀元前1千年紀のもので、主にニネヴェの遺跡から見つかりました。
書板には割れたり欠けたりして読めない行があり、細かいところは研究者のあいだでも読み方が分かれます。この記事では、第1話のもとになった第I書板の前半を紹介します。
物語は、語り手が「深淵を見た者」をたたえるところから始まります。その人はあらゆることを知り、大洪水より前の出来事を持ち帰り、遠い旅で疲れ果てたあとに安らぎを得た人物です。語り手は読む人に呼びかけます。ウルクの城壁に登って煉瓦を確かめよ、基礎は七賢人が据えたものではないか。杉の箱の青銅の留め金を外し、ラピスラズリの書板を取り出して、王がくぐり抜けた苦難を読め、と。
続いて王をたたえる歌になります。ギルガメシュはルガルバンダと女神ニンスンの子で、体の3分の2が神、3分の1が人です。暴れる野牛のように強く、王たちの中で最も優れた者だと歌われます。
ところが、この王を止められる者はいません。王は若者たちを休みなく駆り立て、息子を父のもとに、娘を母のもとに帰さず、横暴は昼も夜も続きます。「これがウルクの羊飼い(王)なのか」という民の嘆きは天の神々に届きました。神々は、人間を造った女神アルルに、王と張り合える「分身」を造るよう命じます。アルルは手を洗い、粘土をつまんで荒野に投げました。こうして生まれたのがエンキドゥです。
エンキドゥは全身が毛に覆われ、女の人のような長い髪をしていました。人も町も知らず、ガゼルと草を食べ、獣たちと水場で水を飲んで暮らしています。ある猟師が水場で3日続けて彼に出会い、恐ろしさで顔がこわばりました。掘った穴は埋められ、わなは壊され、獲物は逃がされてしまいます。父に相談した猟師は「ウルクへ行ってギルガメシュに話し、シャムハトという女性を連れてこい」と助言され、ウルクへ向かいます。
メソポタミアでは、王は民を守る「羊飼い」にたとえられました。民の嘆きは、そのあるべき王の姿と、目の前の暴君とのずれを突いた言葉です。おもしろいのは、神々が王を罰するのではなく、張り合う相手を造って解決しようとすることです。強すぎる力には、同じくらいの力をぶつけるという考え方が見えます。
冒頭で、語り手が城壁や書板という「手でさわれるもの」を見せるのも特徴です。人は死んでも、築いたものと書き残した物語は残る、というこの叙事詩全体のテーマの入り口だと読むこともできます。なお、ギルガメシュには実在したウルクの王がモデルになっているという説もあります。
原典に出てくるウルクの民には名前も人物像もありません。漫画では、名前のない若者とその母を視点人物にして、嘆きを身近に描いています。また、若者が何に駆り出されたのかは原典には書かれていません(労役だという説や、競技や遊びだという説があります)。漫画でのその描き方は創作です。娘たちの場面を暗示だけにしているのは、「帰さない」としか書かない原典に合わせています。王が花嫁を支配したという話は第II書板などの内容で、第I書板には出てきません。
ほかにも、語り手の姿、書板箱の置き場所(城壁の土台の中にあるという解釈もあります)、神々の会議の様子、エンキドゥの顔立ちは漫画オリジナルです。原典ではわなが壊されたことは猟師のせりふで語られるだけですが、漫画では目の前で起きる場面として描いています。「若き王」という言い方も、第I書板にははっきり書かれていません。
Manga Portalの『ギルガメシュ叙事詩 ―死なない者はいない―』は、全話無料、会員登録なしで読めます。第1話では、暴君の町ウルクと、荒野で生まれたエンキドゥの姿を、民の目線から描いています。猟師がウルクへ向かったあと、二人はどう出会うのか。続きもぜひ漫画で確かめてみてください。
古代メソポタミアのウルクの王ギルガメシュが、親友エンキドゥと出会い、冒険し、やがて死と向き合う物語です。世界で最も古い文学作品のひとつとされ、アッカド語で粘土の書板に刻まれていました。
暴君ギルガメシュと張り合わせるために、女神アルルが粘土から造った野の人です。はじめは人の世界を知らず、獣と一緒に荒野で暮らしていました。
叙事詩の中で、父がルガルバンダ、母が女神ニンスンとされ、体の3分の2が神、3分の1が人だと語られているからです。神に近い力を持ちながら、人として死をまぬがれない存在として描かれます。
実在したウルクの王がモデルになったという説があります。ただし、叙事詩に描かれた出来事は神話や伝説として語られたものです。
第I書板では、若者を休みなく駆り立て、息子を父に、娘を母に帰さなかったと語られます。具体的に何をさせたのかは書かれておらず、解釈が分かれています。