第2話この弓を引けた者が、花嫁を得るシーターの婿選び(シヴァの弓)
シリーズ第2話。どの王も持ち上げることすらできなかった神の弓を、少年王子ラーマは師に一礼して静かに引き絞る。大地の娘シーターとの婚礼、そして帰り道には、斧を担いだ聖仙パラシュラーマの試練が待っていた。



















最後まで読んでくれてありがとう!
王位まであと一日。父が昔交わした『たった一つの約束』が、王子の人生を変えた。
シリーズ第2話。どの王も持ち上げることすらできなかった神の弓を、少年王子ラーマは師に一礼して静かに引き絞る。大地の娘シーターとの婚礼、そして帰り道には、斧を担いだ聖仙パラシュラーマの試練が待っていた。



















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王位まであと一日。父が昔交わした『たった一つの約束』が、王子の人生を変えた。
この話のもとになった神話
ラーマと弟のラクシュマナは、師である聖仙ヴィシュヴァーミトラに連れられて、ミティラーの都に着きます。ジャナカ王はちょうど祭式(神々にささげる大きな儀式)を行っているところで、一行を手厚く迎えました。王の祭官シャターナンダは、ヴィシュヴァーミトラについて長い話をします。もとは王だった彼が、長い苦行の末に最も高い位の聖仙「梵仙」になるまでの話です。
次の日、ジャナカ王は2つの話をします。1つは、かつてシヴァ神が持っていた弓のことです。この弓は神々の手を経て王の先祖に預けられ、今も王家に伝わっていました。もう1つは、祭場を清めるために田を耕したとき、鋤の溝から女の子が現れたことです。王はその子を「シーター(溝)」と名づけて育て、力を示した者にだけ嫁がせると決めていました。ところが、求婚に来た王たちは、誰ひとり弓を持ち上げることさえできません。怒った王たちは都を1年間取り囲みましたが、ジャナカ王は神々から授かった軍勢で追い払ったといいます。
弓は、8つの車輪がついた箱に入れられ、大勢の屈強な男たちに引かれて運ばれてきました。ラーマは師の許しを得てから弓を軽々と持ち上げ、弦を張って引き絞ります。すると弓は真ん中で折れ、雷のような音とともに大地が揺れました。その場にいた人のほとんどが気を失ったほどでした。
ジャナカ王はシーターをラーマに嫁がせることを決め、アヨーディヤーのダシャラタ王に使者を送ります。両家が家の系譜を述べ合ったあと、ラーマとシーター、ラクシュマナとウールミラー、バラタとマーンダヴィー、シャトルグナとシュルタキールティの4組が、そろって結婚式を挙げました。ジャナカ王は娘の手をラーマに取らせ、「ともに正しい道を歩む者」として託します。
アヨーディヤーへ帰る途中、暴風が吹いてあたりが暗くなり、斧を肩にかついだ聖仙パラシュラーマが現れます。バラモン(祭司の身分)でありながら、王族を何度も滅ぼしてきた恐ろしい戦士です。シヴァの弓が折れたと聞いてやって来た彼は、「このヴィシュヌの弓を引いて矢をつがえられたら、一騎打ちをしよう」とラーマに迫ります。ダシャラタ王は息子たちの命乞いをしますが、聞き入れられません。
ラーマは怒ってパラシュラーマの手から弓と矢を取り、弦を張って矢をつがえました。そして「相手はバラモンなので命は奪わない」と告げ、その矢で、パラシュラーマが苦行によって得た世界を滅ぼします。パラシュラーマはラーマをヴィシュヌ神だと認め、礼をして山へ去っていきました。一行は都に帰り着き、王妃たちが花嫁を迎えます。その後、ラーマとシーターは互いの愛を深めていきました。
この場面はよく「シーターの婿選び」と呼ばれます。原典でのシーターは「武勇を嫁取りの代価とする娘」とされ、結婚の条件は家柄や財産ではなく、誰にもできないことをやりとげる力でした。一方でラーマは、王子でありながら、まず師に許しを求めてから弓に向かいます。力と同じくらい、礼儀や慎みが大切にされていたことがわかります。
「シーター」は、もともと鋤で耕した溝を指す言葉です。大地から現れた娘という話を、作物の実りと結びつけて考える説もあります。また、のちのヒンドゥー教では、ラーマもパラシュラーマもヴィシュヌ神の化身とされています。2人の対決は、古い時代の英雄から新しい英雄へ力が受け渡される場面だと読む人もいます。
なお、ラーマーヤナは写本によって内容に違いがあり、章の番号も本ごとにずれます。この記事は、流布本の第1巻(バーラ・カーンダ)第50〜77章をもとにしています。
原典では、シーター本人の言葉や行動はほとんど書かれていません。弓を折る場面にいたかどうかもわかりません。漫画では、シーターがその場に立ち会い、ラーマと遠くから目が合う場面を加えました。ただし、2人は言葉を交わしません。
このほか、求婚に来た王たちが1人ずつ弓に挑んで失敗する場面、弓を運ぶ男たちの掛け声、ジャナカ王がシーターを見つけた日の回想、都や衣装のデザインなどは漫画の創作です。シャターナンダが語るヴィシュヴァーミトラの長い来歴は、大きく短くまとめています。
神の弓が折れる瞬間の迫力や、暗闇の中から現れるパラシュラーマの姿は、絵で見ると、文字だけで読むのとはまた違った面白さがあります。「インド叙事詩 ラーマーヤナ ―追放の王子と風の子ハヌマーン―」は、全話無料・会員登録なしで読めます。あらすじを知ったうえで、少年ラーマが静かに弓を引き絞る場面を、ぜひ漫画でも味わってみてください。
ジャナカ王の家に伝わるシヴァ神の弓を引くことが条件でした。求婚に来た王たちは誰も持ち上げられませんでしたが、ラーマは弓を持ち上げて引き絞り、真ん中から折ってしまいました。
原典では、ジャナカ王が祭場を清めるために田を耕したとき、鋤の溝から現れたとされています。母親から生まれていない娘で、「溝」を意味するシーターと名づけられました。
王族を何度も滅ぼしたとされるバラモンの戦士で、帰り道に現れてラーマに勝負を挑みます。ラーマに敗れたあと、ラーマをヴィシュヌ神だと認めて去りました。のちのヒンドゥー教では、2人ともヴィシュヌ神の化身とされています。
はっきりした年齢は書かれていませんが、この少し前の場面で、父のダシャラタ王がラーマを「まだ16歳にならない」と言っています。かなり若いうちに結婚したことになります。
4人の王子が合同で結婚式を挙げました。ラーマはシーターと、ラクシュマナはウールミラーと結婚し、バラタはマーンダヴィーと、シャトルグナはシュルタキールティと結婚しています。