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第12話無敵の少年は、ひと言で山を怒らせたヤマトタケルと伊吹山

東の旅を終えて尾張に戻ったヤマトタケルは、約束どおりミヤズヒメと歌を交わして結ばれる。剣を彼女のもとに置き、素手で伊吹山へ向かった少年は、白い猪に吐いた「帰りに殺してやる」の一言で山そのものの怒りに打たれ、弱った足でふるさとをめざす。

19ページ全話無料・会員登録なし

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次回予告 · 制作中第13話 白鳥になった英雄 ―倭は国のまほろば―

日本の英雄の最期は、敵との戦いではなく故郷への歌だった。そして魂は大きな白い鳥になって飛び去った

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この話のもとになった神話

ヤマトタケルと伊吹山のあらすじ|ミヤズヒメとの結婚と白い猪【古事記】

元の神話のあらすじ(古事記より)

東の国々をしたがえる旅を終えたヤマトタケル(倭建命)は、帰り道に信濃(科野)の坂の神をしたがわせて、尾張の国に戻ってきます。そこには、東へ出発する前に「帰ったら結婚しよう」と約束していたミヤズヒメ(美夜受比売)がいました。ヒメが食事でもてなしてお酒の杯をさし出したとき、タケルはヒメの上着(襲=おすひ)のすそに月のもの(月経)がついているのに気づきます。

タケルはそのことを歌にしました。香具山の空をわたる白鳥のように細くしなやかなあなたの腕を枕にしたいのに、すそに「月」が出てしまった、という内容です。ヒメははずかしがって引き下がったりせず、タケルを「日の御子」とたたえる歌で返します。年がめぐれば月もめぐるもの、あなたを待ちわびているうちに月も出たのでしょう、という機転のきいた答えでした。こうして二人は結ばれます。

そのあとタケルは、草那芸剣(くさなぎのつるぎ)をヒメのもとに置いたまま、伊吹山の神を討ちに出かけます。「この山の神は素手で倒してやる」と山に登ると、牛ほどもある白い猪があらわれました。タケルは「これは神の使いだろう。今は殺さず、帰りに殺そう」と声に出して言い放ちます。ところが、この猪こそ神そのものでした。はげしい氷雨がタケルを打ち、タケルは正気を失ってしまいます。古事記には、大きなことを口に出して言い立てた(言挙げした)せいで惑わされたのだ、という説明が添えられています。

山を下りたタケルは、玉倉部の清水で休んで少し正気を取り戻しました。これが「居寤清水(いさめのしみず)」の名の由来とされます。しかし体は弱る一方でした。当芸野では「心はいつも空をかけるつもりだったのに、足がよろよろになった」となげき、杖をついて坂をのぼり(杖衝坂)、尾津の崎の一本松では、前に置き忘れた太刀がそのまま残っているのを見つけて、松を「わが兄よ」と呼ぶ歌をよみます。三重村では「足が三重に曲がったようにつかれた」と言いました。古事記は、こうした言葉がそれぞれの土地の名前になったと伝えています。

主な登場人物

主人公のヤマトタケルは、景行天皇の皇子で、各地の敵をしたがえてきた若い英雄です。この話では、約束を守るまっすぐさと、自分の強さを信じすぎる危うさの両方が描かれます。ミヤズヒメは尾張国造(おわりのくにのみやつこ)の祖とされる女性で、タケルの歌に堂々と歌で返す、かしこく落ち着いた人物です。そして敵となる伊吹山の神は、白い猪の姿であらわれ、氷雨を降らせます。古事記にはこの神の名前は書かれていません。

この神話が伝えていること(時代と文化の背景)

いちばん大きなポイントは「言葉の重さ」です。古代の日本では、口に出した言葉には力が宿ると考えられていたといわれます。古事記がわざわざ「言挙げしたから惑わされた」と説明しているのは、相手を見くびる軽い一言が、取り返しのつかない結果をまねくことを伝えるためだと読むことができます。

また、タケルが剣を置いていった理由は古事記に書かれていません。自分の力を過信したからだという読み方もあれば、ヒメへの愛情のしるしだという読み方もあり、受け取り方は人によって分かれます。後半の当芸・杖衝坂・三重などは、地名の起こりを語る話になっています。「三重の勾(まがり)」は、ねじった形の餅菓子のことだとする解釈もありますが、これは後の時代の注釈によるもので、古事記の本文にはそこまで書かれていません。

漫画版で変えたところ・足したところ

漫画では、原典にない部分を想像でおぎなっています。たとえば、タケルが剣を置いていく理由は、慢心とも愛ともとれるように、読む人に考える余地を残した演出にしています。坂の神をしたがえる場面は、古事記では一文だけなので、具体的な場面として描き足しました。

宴の部屋や料理、衣装、ミヤズヒメの見た目や年れい、歌を交わすあいだの二人の表情も漫画オリジナルです。伊吹山の道のりや白い猪の細かな姿(牛ほどの大きさで白いこと以外)、氷雨の幻想的な表現、惑わされているあいだにタケルが見る幻、清水の景色、弱っていく体の描き方なども創作です。供の者がいたかどうかも、この場面の原典には書かれていません。「三重の勾」も、どれか一つに決めつけない描き方をしています。

漫画で読むには

無敵だった少年が、たった一言で山の怒りを買い、ふるさとへ向かって一歩ずつ弱っていく。古事記のなかでも特に胸にせまるこの場面を、Manga Portalの漫画「古事記 中巻 ―英雄たちの時代―」第12話で読むことができます。全話無料で、会員登録もいりません。あらすじを知ってから読むと、ミヤズヒメとの歌のやりとりや一本松の場面が、いっそう心に残るはずです。

この話の登場人物

倭建命(やまとたけるのみこと)
景行天皇の皇子で、東国をしたがえた若い英雄。伊吹山の神を見くびる一言を口にしたため、氷雨に打たれて弱っていく。
美夜受比売(みやずひめ)
尾張国造の祖とされる女性。タケルとの約束どおり結ばれ、彼の歌に機転のきいた歌で返す。
伊吹山の神(いぶきやまのかみ)
牛ほどもある白い猪の姿であらわれる山の神。使いではなく神そのもので、氷雨を降らせてタケルを惑わせる。
科野之坂神(しなののさかのかみ)
尾張に戻る前にタケルがしたがわせた信濃の坂の神。古事記では一文だけ登場する。
草那芸剣(くさなぎのつるぎ)
タケルの太刀。伊吹山へ向かう前にミヤズヒメのもとに置かれたが、その理由は古事記に書かれていない。

よくある質問

ヤマトタケルはなぜ伊吹山で負けたの?

白い猪を神の使いだと思いこみ、「帰りに殺そう」と口に出して言い放ったからだと古事記は説明しています。実はその猪が神そのもので、はげしい氷雨に打たれて正気を失いました。

伊吹山の白い猪の正体は?

古事記には、白い猪は神の使いではなく、伊吹山の神の正体そのものだったと書かれています。神の名前は記されていません。

ヤマトタケルはなぜ草薙剣(草那芸剣)を置いていったの?

古事記には理由が書かれていません。自分の強さを過信したからという読み方や、ミヤズヒメへの愛情のしるしという読み方など、解釈は分かれています。

ミヤズヒメとはどんな人?

尾張国造の祖とされる女性で、ヤマトタケルが東へ旅立つ前に結婚を約束した相手です。タケルの歌に堂々と歌で返す、かしこい人物として描かれています。

「三重」や「杖衝坂」の地名はヤマトタケルと関係があるの?

古事記では、弱ったタケルが杖をついて坂をのぼったことから杖衝坂、足が三重に曲がったようだと言ったことから三重の名がついたと伝えています。当芸(たぎ)や居寤清水も同じように地名の由来として語られています。

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