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第2話迷子の王様と、日本代表のカラスヤタガラス

兄イツセを失い熊野に着いたイワレビコの軍は、正体の知れない大熊の気配に全員倒れてしまう。天から届いた太刀と、空から遣わされた八咫烏の導きを信じて進んだ先で、尾のある国つ神たちとの出会いと、罠を仕掛けた者が自分の罠に落ちる宇陀の事件が待っていた。

19ページ全話無料・会員登録なし

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次回予告 · 制作中第3話 撃ちてし止まむ ―橿原の王と七人の乙女―

日本最初のプロポーズは「その目、どうしたの?」から始まる歌のやりとりだった

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この話のもとになった神話

八咫烏の道案内と神武東征のあらすじ|熊野の刀と宇陀の罠【古事記】

元の神話のあらすじ(熊野から宇陀まで)

兄の五瀬命(イツセ)を失ったイワレビコ(のちの神武天皇)は、海をまわって熊野村にたどり着きます。そこで大きな熊がちらりと姿を見せ、すぐに消えました。するとイワレビコは急に気を失い、兵たちもみんな倒れてしまいます。そこへ熊野の高倉下(たかくらじ)という人が、一振りの刀を持ってやってきました。目を覚ましたイワレビコは「ずいぶん長く眠っていたものだ」と言って刀を受け取ります。そのとたん、熊野の山の荒ぶる神はひとりでに切り倒され、兵たちも起き上がりました。古事記には、刀を振るったとは書かれていません。受け取っただけで、敵が倒れたのです。

刀が届いたわけは、高倉下が見た夢にありました。天照大御神と高木神が建御雷神(タケミカヅチ)を呼び、「地上がひどく騒がしく、御子たちが困っている。お前が平らげた国なのだから降りて行け」と命じます。建御雷神は「わたしが行かなくても、あの国を平らげた刀を降ろせば足ります」と答えました。そして高倉下の倉の屋根に穴をあけて、刀を落とし入れたのです。朝になって倉を見ると、本当に刀がありました。

さらに高木大神は「この先の奥地には荒ぶる神が多いから、入ってはいけない。天から八咫烏(やたがらす)を遣わすので、その後について行け」と教えます。烏の後を進むと、吉野河の河口で、竹の道具で魚を獲っている贄持之子(にえもつのこ)に出会いました。次に、光る井戸から出てきた尾のある井氷鹿(いひか)、それから岩を押し分けて出てきた尾のある石押分之子(いわおしわくのこ)にも出会います。三人とも、自分は国つ神(その土地の神)だと名乗りました。

山を越えて宇陀に入ると、兄宇迦斯(えうかし)と弟宇迦斯(おとうかし)の兄弟がいました。八咫烏を使いに出して従うかどうかを尋ねさせると、兄は音の鳴る矢(鳴鏑)でその使いを射返します。兄は兵を集めようとしましたが、集まりません。そこで仕えるふりをして大きな御殿を建て、中に押機(おしき)という罠を仕掛けました。ところが弟が先に来て、兄の企みをすべて打ち明けます。道臣命と大久米命は兄をののしり、刀や矛、弓矢で追い立てて御殿に入れました。兄は自分の罠に打たれて死にます。弟が差し出したごちそうは、イワレビコが兵たちみんなに分け与えました。

主な登場人物

この話の中心はイワレビコですが、実際に動き回るのは周りの者たちです。夢を信じて刀を届けた高倉下、天から道案内に来た八咫烏、吉野で出会った三人の国つ神、そして宇陀の兄弟と、それを追い詰めた道臣命・大久米命。それぞれが短い場面で強い印象を残します。なお古事記の八咫烏には、姿や性格、台詞の描写がまったくありません。書かれているのは、道案内と使いの役目を果たしたことだけです。

この神話が伝えていること(文化・時代の背景)

熊野の場面は、それより前の「国譲り」の神話とつながっています。地上を平らげた建御雷神は自分では降りてこず、そのとき使った刀を代わりに送りました。刀には佐士布都神・甕布都神・布都御魂という神の名がついていて、古事記には石上神宮に祀られているという注が添えられています。天の神々が遠くから見守り、刀や烏を送って助ける。そういう物語になっています。

この段には、地名や家の始まりを説明する話がたくさん出てきます。鳴鏑が落ちた場所の名前や、兄宇迦斯の血にちなむ「宇陀の血原」などです。道臣命は大伴氏の祖先、大久米命は久米氏の祖先、弟宇迦斯は宇陀の水取の祖先とされています。古事記ができた奈良時代のはじめの人々にとっては、自分たちの祖先が最初の天皇に仕えたと示す意味もあったと考えられています。

気を失った原因を熊の「毒気」とする説明がありますが、これは古事記ではなく日本書紀に出てくるものです。古事記では、熊と荒ぶる神が同じものなのかもはっきりしません。また、八咫烏を三本足の烏とするイメージも古事記には書かれていない、のちの時代に広まった考え方です。現在は日本サッカー協会のシンボルにも使われていて、「日本代表のカラス」として知られています。

漫画版で変えたところ

漫画では、原典にない部分を想像でふくらませています。八咫烏のしぐさや表情、鳴き声、マスコットのような性格はすべて漫画の創作です。国つ神たちとのにぎやかな会話も漫画で足したもので、原典にあるのは名前を尋ねて名乗るやりとりと、石押分之子の「お迎えに来た」という言葉くらいです。

ほかにも、高倉下の見た目や年齢、大熊の大きさや雰囲気、押機の仕組み、道臣命と大久米命のキャラクターの違い、軍勢の人数や景色などは漫画のオリジナルです。三本足や毒気のような後世の説を絵で見せる場合も、古事記本文の内容とは分けて楽しんでください。

漫画で読むには

気を失った軍勢、空から届いた刀、正体のわからない烏の道案内、そして罠を仕掛けた者が自分の罠に落ちる結末。第2話は、短い場面がテンポよく続く回です。Manga Portalの「古事記 中巻 ―英雄たちの時代―」は全話無料で、会員登録なしで読めます。原典のあらすじを知ったうえで、漫画ではどう描かれているかを見比べてみるのもおすすめです。

この話の登場人物

神倭伊波礼毘古命(かむやまといわれびこのみこと)
東へ進む軍を率いる主人公で、のちの神武天皇。熊野で気を失いますが、刀を受け取って目を覚まします。
高倉下(たかくらじ)
熊野の人です。夢のお告げのとおりに倉で見つけた刀を、イワレビコに届けました。
建御雷神(たけみかづちのかみ)
かつて地上を平らげた神です。自分は降りずに、その刀を高倉下の倉に落としました。
八咫烏(やたがらす)
高木大神が天から遣わした道案内の烏で、宇陀では使いの役も務めます。古事記には姿の描写がありません。
兄宇迦斯(えうかし)
宇陀の兄で、八咫烏の使いを矢で射返しました。仕えるふりをして罠を仕掛けますが、自分の罠で命を落とします。
弟宇迦斯(おとうかし)
宇陀の弟で、兄の企みを打ち明けてイワレビコに従いました。ごちそうを差し出しています。

よくある質問

八咫烏(やたがらす)は古事記で何をした?

高木大神が天から遣わした烏で、熊野から先の険しい道を案内しました。宇陀では、兄宇迦斯・弟宇迦斯の兄弟のところへ使いとして行っています。古事記には、姿や性格についての描写はありません。

八咫烏は三本足?

古事記の本文には、足の数は書かれていません。三本足の烏という姿は、のちの時代に広まったイメージです。現在は日本サッカー協会のシンボルとしても知られています。

熊野で神武天皇(イワレビコ)に何があった?

大きな熊がちらりと現れて消えると、イワレビコも兵たちも気を失って倒れてしまいました。高倉下が天から届いた刀を持ってくると目を覚まし、熊野の山の荒ぶる神はひとりでに切り倒されました。

高倉下が届けた刀の名前は?

佐士布都神・甕布都神・布都御魂という三つの名前が書かれています。古事記には、石上神宮に祀られているという注があります。

兄宇迦斯(えうかし)はどうなった?

仕えるふりをして、御殿に押機という罠を仕掛けました。しかし弟の弟宇迦斯に企みを明かされ、道臣命と大久米命に追い込まれて、自分の罠で死にました。

漫画を最初から読む(無料)