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第9話雪山に残った義経は、身代わりだった吉野山(静との別れと佐藤忠信)

雪の吉野山で、義経は僧兵の追手から静を守るため、彼女を都へ帰すと決める。だが静は信じた供に置き去りにされ、同じ山では佐藤忠信が主君の鎧と名をまとい、杉木立を味方に独りで敵の前に立つ。

19ページ全話無料・会員登録なし

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次回予告 · 制作中第10話 忠信最期

「兄は主を守って死んだ。弟も、そう生きると決めていた」

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この話のもとになった神話

義経と静の別れ・吉野山の佐藤忠信 あらすじ【義経記】

吉野山の場面のあらすじ(義経記 巻五)

兄の源頼朝と対立して都を追われた源義経は、弁慶たちわずかな家来と、愛する静(静御前)を連れて吉野山に入り、しばらく身を隠します。ところが吉野の僧兵たち(衆徒)は、義経をかくまえば鎌倉にとがめられると恐れました。そこで話し合いを開き、義経を討とうと兵を集めはじめます。

義経は吉野よりさらに奥の山(大峰の方面)へ逃れると決めますが、女性の静を険しい山の奥へは連れて行けません。そこで静に金銀や衣などの財宝を持たせ、供の者を付けて都へ帰すことにします。二人は雪の山の中で、涙ながらに別れました。ところが供の者たちは財宝を奪って逃げ、静を雪山に置き去りにしてしまいます。山をさまよった静は蔵王堂のあたりにたどり着きますが、衆徒に見とがめられて捕らえられ、吉野の執行(衆徒をまとめる役の僧)のもとへ連れて行かれました。

一方、追手が迫ると、家来の佐藤四郎兵衛忠信が、自分が残って敵を食い止めると申し出ます。忠信は義経から鎧を授かって義経になりすまし、弓矢で衆徒を寄せつけず、主君がまだそこにいるように見せかけて時間を稼ぎました。やがて衆徒の中でも名高い荒法師、横川の覚範が進み出て一騎打ちとなり、忠信はこれを討ち取ります。そのあいだに義経一行は落ち延び、忠信も囲みを破って都をめざしました。こうして義経・静・忠信は離ればなれになります。

なお原典では、静の話と忠信の戦いは別々の章で順番に語られます。章の題名は、写本や版本によって書き方が少しずつ違います。

主な登場人物

義経は、平家との戦いで手柄を立てながら兄に追われる身となった源氏の大将です。静は白拍子(歌や舞を見せる芸人)で、義経を慕って吉野までついて来ます。佐藤忠信は奥州出身の家来で、兄の継信は屋島の戦いで義経をかばって討死しています。

横川の覚範は、大長刀をふるう剛の者として恐れられた僧で、この場面の敵役です。弁慶も一行にいますが、巻五で目立った活躍をする場面は多くありません。

この物語が伝えていること(時代・文化の背景)

『義経記』は室町時代の前期ごろにできたとされる、作者のわからない軍記物語です。平家との合戦の場面よりも、義経の少年時代と、追われて落ちていく後半生をくわしく語っているのが特徴です。不運な義経に同情する「判官びいき」という気持ちを、広く人々に広めた作品の一つといわれます。

当時の大きな寺は、武器を持った僧兵を抱えていて、政治の力関係にも敏感でした。吉野の衆徒が鎌倉の目を気にして義経を追うのは、そうした時代の空気をよく表しています。また、静が吉野で捕らえられて鎌倉へ送られたことは、鎌倉幕府の記録『吾妻鏡』にも書かれています。物語には、実際の出来事をもとにした部分もあるのです。

この場面の見どころは、主君のために自分の命をかける忠信の忠義と、身分や男女の立場によって引き裂かれる義経と静の別れです。兄の継信に続いて主君の盾となる忠信の姿は、兄弟そろっての忠義として語り継がれてきました。

漫画版で変えたところ・足したところ

漫画は原典のおおまかな流れを守っていますが、次の部分は漫画オリジナルの演出です。別れの場面のくわしい台詞やしぐさ、形見の品。供の者たちの人数や顔、裏切りを決める瞬間。静が雪山をさまよう道のりや寒さの描き方。忠信と覚範の一騎打ちの、一つひとつの技の流れ。覚範以外の僧兵たちの顔ぶれ。それから、義経一行が雪の山へ入っていく最後の見開きなどです。

いちばん大きな工夫は、静がつかまる場面と忠信の戦いを交互に見せ、同じ時間に起きているように描いたことです。原典では別々の章で順に語られているので、これは漫画の構成上の脚色です。

漫画で読むには

文字だけでは想像しにくい、雪の吉野山の静けさや、杉木立の中でたった一人戦う忠信の姿を、漫画では絵で味わえます。『義経伝説 ―牛若丸と弁慶―』は全話無料で、会員登録も要りません。第9話を読んだあとは、ぜひ前後の話もあわせて、義経たちの旅の行方を追いかけてみてください。

この話の登場人物

源義経(みなもとのよしつね)
兄の頼朝に追われて吉野山に逃れ、静を都へ帰して、さらに山の奥へ落ち延びる源氏の大将。
静(しずか)
義経が愛した白拍子で、吉野で義経と別れたあと、供の者に置き去りにされて衆徒に捕らえられる。
佐藤忠信(さとうただのぶ)
義経の鎧を着て身代わりとなり、吉野に一人残って追手を食い止める弓の名手の家来。
武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけい)
義経一行の中心となる家来で、吉野からの逃避にも同行する。
横川の覚範(よかわのかくはん)
吉野の衆徒の中で名高い荒法師で、忠信と一騎打ちをして討たれる。
吉野の衆徒(しゅと)と執行(しぎょう)
鎌倉の目を恐れて義経を追う吉野山の僧兵たちと、捕らえた静を預かるそのまとめ役。

よくある質問

義経と静御前はなぜ吉野山で別れたの?

吉野の僧兵たちが義経を討とうと動き出し、義経はさらに奥の険しい山へ逃げることになったからです。女性の静は山の奥へは連れて行けないとされ、財宝を持たせて都へ帰すことになりました。

佐藤忠信はなぜ義経の身代わりになったの?

追手を食い止めて、主君が逃げる時間を稼ぐためです。忠信は自分から残る役を申し出て、義経の鎧を着て義経になりすまし、僧兵たちを迎え撃ちました。

横川の覚範とはどんな人物?

『義経記』に登場する、吉野の衆徒の中で特に強いと恐れられた荒法師です。吉野山の戦いで忠信と一騎打ちになり、討ち取られます。

吉野で捕らえられた静御前はその後どうなった?

原典では、次の巻六で鎌倉へ送られ、頼朝たちの前で舞を舞う有名な場面へと続きます。静が吉野で捕らえられて鎌倉へ送られたことは、鎌倉幕府の記録『吾妻鏡』にも書かれています。

『義経記』とはどんな作品?

室町時代の前期ごろにできたとされる、作者のわからない軍記物語です。義経の少年時代(牛若丸)と、兄に追われて落ちていく後半生を中心に描いています。

漫画を最初から読む(無料)