第2話王の剣が、折れた日湖の乙女とエクスカリバー
シリーズ第2話。反乱した王たちに勝って自信をつけた少年王アーサーは、知らずに犯した過ちを告げられ、泉の騎士との一騎打ちで岩の剣を失う。湖の乙女から新しい剣を授かったアーサーに、マーリンは「剣と鞘、どちらが大事か」と問いかける。



















最後まで読んでくれてありがとう!
王の前で女性の首をはねた騎士は、悪人なのか。呪いの剣を手放さなかった男の、救いのない悲劇。
シリーズ第2話。反乱した王たちに勝って自信をつけた少年王アーサーは、知らずに犯した過ちを告げられ、泉の騎士との一騎打ちで岩の剣を失う。湖の乙女から新しい剣を授かったアーサーに、マーリンは「剣と鞘、どちらが大事か」と問いかける。



















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王の前で女性の首をはねた騎士は、悪人なのか。呪いの剣を手放さなかった男の、救いのない悲劇。
この話のもとになった神話
アーサー王の伝説は、中世のヨーロッパで長い時間をかけて語り継がれ、多くの書き手が話を足してきた物語です。その中で、英語でひとつの大きな物語にまとめた代表作が、サー・トマス・マロリーの『アーサー王の死』です。1485年にウィリアム・カクストンが印刷して世に出しました。イングランドでばら戦争と呼ばれる内乱が続いていた時代のことです。
漫画の第2話は、このカクストン版の第I巻第8〜25章をもとにしています。岩から剣を抜いて王になったばかりの少年アーサーが、初めて大きな試練を受ける部分です。
若いアーサーがカーリオンで宴を開くと、ロット王たち諸王が集まります。けれども王たちは「身分の低い若者」を王とは認めず、アーサーからの贈り物を突き返しました。マーリンが「アーサーはウーゼル・ペンドラゴン王とイグレインの子だ」と明かしても、魔術師の言うことだとあざ笑います。アーサーはマーリンの助言を受けて、海の向こうのバン王とボース王に援軍を頼みました。三人の王の軍はベドグレインの森で十一人の王と戦い、マーリンの策もあって勝ちます。最後は、黒い大きな馬に乗って現れたマーリンが戦いを止めさせました。
そのあと、ロット王の妃(モルゴース)が四人の息子を連れて宮廷に来ます。表向きは使者でしたが、本当の目的はアーサーの宮廷を探ることでした。アーサーは美しい妃に心を寄せ、二人は一夜を共にして、モードレッドが宿ります。実はこの妃は母イグレインの娘、つまりアーサーの父違いの姉でした。アーサーはこのときまだ自分の母を知らなかったので、そのことに気づいていません。妃のほうが知っていたかどうかは、原典には書かれていません。
やがてアーサーは、グリフィン(鷲獅子)と蛇が国を焼く不吉な夢を見ます。気晴らしの狩りの途中で泉のそばに座っていると、腹から猟犬の群れのような声を出す「唸る獣」と、それを追うペリノア王が通り過ぎていきました。続いて十四歳の少年が現れ、アーサーの両親の名を告げますが、アーサーは子どもの言うことだと信じません。次に現れた八十歳の老人は、「お前は姉とのあいだに子をもうけた。その子が、お前と国の騎士たちを滅ぼす」と予言します。老人の正体はマーリンでした。マーリンは、自分もいずれ生きたまま地の中に閉じこめられる運命だと語ります。このあとアーサーは母イグレインと会い、親子であることを確かめ合います。
やがて、泉のそばに天幕を張り、通りかかる騎士すべてに戦いを挑む騎士がいるという知らせが届きます。若いグリフレットが挑みましたが、大けがをして帰ってきました。アーサーは誰にも告げずに、明け方ひとりで泉へ向かいます。相手はあのペリノア王でした。激しい一騎打ちの末にアーサーの剣は二つに折れ、組み伏せられて殺されかけます。そこへマーリンが現れ、魔法でペリノアを眠らせてアーサーを救いました。
傷が治ると、マーリンはアーサーを湖へ連れて行きます。湖の中から、白い絹の袖をまとった腕が一本の剣を高く掲げていました。湖の上を歩いて来た湖の乙女は、あとで自分の望む贈り物をくれるなら剣をあげる、とアーサーに約束させます。アーサーは小舟で近づき、剣と鞘を手にしました。マーリンが「剣と鞘、どちらが気に入ったか」と聞くと、アーサーは剣だと答えます。マーリンはそれを浅はかだとたしなめ、鞘を身につけていれば血を流しても命を失わないので、鞘は剣の十倍の値打ちがある、いつも手元から離すな、と教えました。
剣は敵を倒す力、鞘は自分の命を守るものです。戦いに勝って勢いづいた若い王に、マーリンは「勝つ力よりも、失わないこと・守ることのほうが大切だ」と伝えた、と読むことができます。またこの部分では、モードレッドの誕生とマーリンの予言という、物語の最後の悲劇につながる種がまかれています。輝かしい始まりの中に、すでに終わりの影がある。それがマロリーの物語の大きな魅力です。
なお、「岩から抜いた剣がエクスカリバー」と思われることがよくありますが、マロリーの物語では、岩の剣と湖の剣は別の場面で手に入れるものです。ただしカクストン版は、湖の場面より前の反乱の戦いの中で、すでにアーサーの剣を「エクスカリバー」と呼んでいます。原典の中でも呼び名が混ざっているのです。
漫画では、原典で長く書かれている王たちの反乱とベドグレインの戦いを短くまとめ、マーリンの策、海の向こうからの援軍、戦いを止める場面を中心にしています。原典はどの剣が折れたのかを書いていませんが、漫画では「岩の剣」が折れるように描いています。
アーサーとロット王の妃の一夜は、原典でも短く書かれているだけです。漫画では直接描かず、雰囲気で伝えています。二人の会話や気持ちは漫画の創作です。また、唸る獣の姿、少年や老人に変わるマーリンの見た目、霧の立ちこめる湖の景色、湖の乙女の姿なども、漫画で考えたものです。剣と鞘の問答も言い回しは漫画オリジナルですが、「鞘は剣の十倍の値打ち」「身につけていれば血を失わない」という要点は原典どおりです。
Manga Portal の『アーサー王伝説 ―円卓の黄昏―』第2話「王の剣が、折れた日 ―湖の乙女とエクスカリバー―」では、自信に満ちた少年王が剣を失い、湖で新しい剣を授かるまでを描いています。全話無料・会員登録なしで読めるので、気軽に開いてみてください。第1話から読むと、アーサーが岩の剣を抜いた日からの流れがよくわかります。
マロリーの『アーサー王の死』では、岩から抜いた剣と、湖の乙女から授かった剣は別のものとして出てきます。ただし原典の中にも、湖の場面より前にアーサーの剣を「エクスカリバー」と呼ぶところがあり、呼び名は混ざっています。作品によって描き方が違うので、混同されやすいのです。
湖の中の岩の住まいに暮らし、湖の上を歩いて現れる不思議な女性です。アーサーに剣を与えるかわりに、あとで望む贈り物をくれるよう約束させました。原典の第I巻では、名前や何を求めるのかはまだ語られていません。
マーリンによると、鞘を身につけていれば、どれだけ傷を負っても血を失わないとされています。そのためマーリンは、鞘は剣の十倍の値打ちがあり、いつも手元に置くべきだと教えました。
泉のそばで通る騎士すべてに戦いを挑んでいたペリノア王と、アーサーがひとりで一騎打ちをしたためです。激しい戦いの中で剣が二つに折れ、アーサーは殺されかけましたが、マーリンが魔法でペリノアを眠らせて救いました。
アーサーと、父違いの姉であるロット王の妃とのあいだに生まれる子です。マーリンは、この子がアーサーと国の騎士たちを滅ぼすと予言しました。この話の範囲では、まだ身ごもられたところまでしか描かれません。