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第6話猿の皮を貸せ。返せないのに靱猿(うつぼざる)

シリーズ第6話。獲物ゼロで機嫌最悪の殿が、旅の猿曳に「その猿の皮を貸せ」と弓を向けます。泣く泣く杖を振り上げた猿曳の前で、小猿は芸の合図だと信じて舟をこぎ始めた――笑って、泣いて、最後は大笑いする狂言です。

19ページ全話無料・会員登録なし

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この話のあらすじ

狂言は、室町時代ごろに形づくられ、能とともに今に伝わる日本の笑いの劇です。『靱猿』は大名が登場する「大名狂言」のひとつで、大蔵流と和泉流に伝わっています。「靭猿」と書かれることもあります。 題にある「靱(うつぼ)」は、矢を入れて背負う武具のことです。その靱に張るための猿の皮をめぐって、話が動いていきます。

原典狂言傑作集 ―笑いの六百年― — 日本 · 室町時代〜江戸時代(『狂言記』1660年刊)

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この話のもとになった物語

靱猿(うつぼざる)のあらすじ|猿の皮を貸せと迫る大名と小猿の狂言

ひとことで言うと: 靱猿(うつぼざる)は、大名に「靱に張るから猿の皮を貸せ」と脅された猿曳が、泣く泣く小猿を打とうとするものの、杖を受け取って舟をこぐ芸を始めた小猿を打てず、大名も涙して猿を許す、大蔵流・和泉流に伝わる大名狂言です。最後は上機嫌の大名が褒美を与え、自分も猿のまねをして舞う、にぎやかな結末を迎えます。

『靱猿』とはどんな狂言か

狂言は、室町時代ごろに形づくられ、能とともに今に伝わる日本の笑いの劇です。『靱猿』は大名が登場する「大名狂言」のひとつで、大蔵流と和泉流に伝わっています。「靭猿」と書かれることもあります。

題にある「靱(うつぼ)」は、矢を入れて背負う武具のことです。その靱に張るための猿の皮をめぐって、話が動いていきます。

元の狂言のあらすじ

大名が太郎冠者を供に出かけると、道で小猿を連れた猿曳に出会います。猿の毛並みの見事さに目をとめた大名は、靱に張る皮にしたいと思いつき、太郎冠者を間に立てて「皮を貸せ」と求めます。

猿曳は、皮を貸せば猿の命がないと断り、許しを願います。怒った大名は弓に矢をつがえ、猿曳もろとも射殺すと脅します。太郎冠者が取りなすなか、逆らえないと悟った猿曳は、矢傷で皮を傷めないよう、猿を扱い慣れた自分が一打ちにすると申し出ます。

猿曳は小猿に事情を言い聞かせ、別れを嘆いて杖を振り上げます。ところが何も知らない小猿は、その杖を取り、教わった舟の櫓をこぐ芸を始めてしまいます。猿曳は杖を下ろして泣き崩れ、これを見た大名ももらい泣きして、猿の命を助けると告げます。

喜んだ猿曳が礼に猿歌を歌い、小猿が舞うと、大名はすっかり上機嫌になります。扇、刀、衣服を次々に与え、ついには自分も猿のまねをして舞い、にぎやかに幕となります。なお、猿歌の細かな歌詞、与える品の順や名前、太郎冠者の関わり方は、流派や台本によって違う可能性があります。

この狂言の見どころと背景

まず耳に残るのが「貸せ」という言葉です。皮をはがれた猿は生きていられず、借りた皮を返しても元には戻りません。とても軽い言葉で命を差し出させようとするところに、力のある人の身勝手さと、どこか間の抜けたおかしさが同時に表れています。

話をひっくり返すのは、せりふのない小猿です。小猿は誰かを説得したわけではなく、自分の運命を知らないまま、教わった芸をしただけでした。弓矢で脅していた大名の心を、その無心な姿と猿曳の涙が動かします。

大名が悪人のままで終わらないのも、この作品の魅力です。短気でわがままなのに情にもろく、喜べば気前よく品を与え、猿のまねまでして舞います。権力者を笑いながらも憎みきれない人間として描いている、と読むこともできるでしょう。

上演の面でも特別な作品です。小猿の役は狂言師の子の初舞台に使われることが多く、狂言師の歩みを表す「猿に始まり狐に終わる」という言い習わしもあります。これは物語の筋ではなく、後の時代の舞台の習わしです。

漫画版で変えたところ

大名の無理な要求、猿曳の決心、舟をこぐ小猿、大名の涙、最後のにぎやかな舞という話の流れと結末は、原典を土台にしています。

一方、次の部分は漫画の創作です。時代や土地の名といった舞台の設定、登場人物の見た目や年齢、名前のない人物の呼び名、猿曳と小猿の出会いや櫓の芸を教えた日々の回想がそれにあたります。冒頭の「獲物ゼロで機嫌最悪の殿」という姿も、漫画ならではの入り口として楽しんでください。

太郎冠者の心の内や右往左往する姿、小猿の表情としぐさ、大名の心が変わる瞬間の演出、終幕の舞の広がりと後日談の余韻も、漫画で加えた見せ方です。猿歌の歌詞は、古い台本をもとに漫画と多言語版のために新しく書き起こしています。

漫画で読むには

文字で筋を知っていても、杖の下で小猿が舟をこぎ始める場面は、絵で見ると胸に迫るものがあります。このページの漫画は「狂言 ―笑いの六百年―」の第6話で、全話無料、会員登録なしで読めます。笑って、泣いて、最後にまた笑う六百年の物語を、気軽にのぞいてみてください。

この話の登場人物

大名(だいみょう)
太郎冠者を従える領主で、猿の皮を求めて無理を通そうとするが、情にもろく無邪気な一面も持つ人物。
太郎冠者(たろうかじゃ)
大名の従者で、主人の命に従いながら猿曳との間を取り次ぎ、取りなす脇役。
猿曳(さるひき)
小猿を連れて芸を見せる芸能者で、小猿を子のように慈しむ飼い主であり師匠。
小猿(こざる)
毛並みの見事な猿曳の猿で、自分の運命を知らず、振り上げられた杖を取って櫓をこぐ芸を始める。

よくある質問

「靱猿」は何と読む?どんな意味?

「うつぼざる」と読み、「靭猿」とも書きます。靱は矢を入れて背負う武具のことで、その靱に張る皮を求められた猿の話です。

靱猿の結末は?猿は殺されるの?

猿は殺されません。舟をこぐ芸を始めた小猿を猿曳は打てず、もらい泣きした大名が命を助けます。最後は大名が褒美を与え、自分も猿のまねをして舞います。

小猿はなぜ舟をこぐ芸を始めたの?

小猿は事情を知らず、振り上げられた杖を取って、教わった櫓こぎの芸を始めます。自分が打たれるとは思っていないその無心さが、この狂言でいちばん胸を打つ場面です。

「猿に始まり狐に終わる」とはどういう意味?

狂言師の歩みを表す言い習わしです。『靱猿』の小猿の役が子どもの初舞台に使われることが多いことから「猿に始まり」と言われます。「狐」は大曲『釣狐』を指すとされます。

靱猿は漫画と原典で違うところがある?

話の流れと結末は原典を土台にしています。舞台の設定、人物の見た目、猿曳と小猿の回想、後日談の余韻などは漫画の創作です。

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