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第3話自分では飲めない。でも二人なら飲める棒縛(ぼうしばり)

シリーズ第3話。留守のたびに酒を飲まれる殿(原典では「主」。本作ではシリーズの大名)は、太郎冠者を棒に、次郎冠者を後ろ手に縛って出かけます。自分の口には届かないけれど、相手の口には届く――二人が見つけた、六百年前の「協力プレイ」の狂言です。

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この話のあらすじ

ある家の主人は、出かけるたびに召使いの太郎冠者と次郎冠者に酒を盗み飲みされて困っていました。そこで外出の前に次郎冠者を呼んで相談し、太郎冠者が棒術の稽古をしていることを使った計略を立てます。 呼び出された太郎冠者は、得意になって棒の型を見せます。棒を首の後ろに担いで両腕をかけた形になったところで、主人と次郎冠者がその腕を棒に縛りつけてしまいます。ところが次郎冠者も油断はできないと、続けて後ろ手に縛られます。二人を縛った主人は、安心して出かけていきます。 それでも二人は酒をあきらめません。

原典狂言傑作集 ―笑いの六百年― — 日本 · 室町時代〜江戸時代(『狂言記』1660年刊)

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この話のもとになった物語

狂言『棒縛(ぼうしばり)』のあらすじと見どころ|太郎冠者と次郎冠者

ひとことで言うと: 『棒縛(ぼうしばり)』は、主人が留守のあいだに酒を飲まれないよう、太郎冠者の両腕を棒に、次郎冠者を後ろ手に縛って出かけるものの、二人が互いに杯を持って飲ませ合い、酒盛りをしてしまう狂言です。大蔵流・和泉流に伝わる小名狂言の代表作で、帰ってきた主人が二人を追い回して幕となります。

狂言『棒縛』のあらすじ(原典)

ある家の主人は、出かけるたびに召使いの太郎冠者と次郎冠者に酒を盗み飲みされて困っていました。そこで外出の前に次郎冠者を呼んで相談し、太郎冠者が棒術の稽古をしていることを使った計略を立てます。

呼び出された太郎冠者は、得意になって棒の型を見せます。棒を首の後ろに担いで両腕をかけた形になったところで、主人と次郎冠者がその腕を棒に縛りつけてしまいます。ところが次郎冠者も油断はできないと、続けて後ろ手に縛られます。二人を縛った主人は、安心して出かけていきます。

それでも二人は酒をあきらめません。不自由な体で酒蔵の戸を開けると、太郎冠者は棒に縛られた手で杯を持って次郎冠者に飲ませ、次郎冠者は背中越しに杯を傾けて太郎冠者に飲ませます。自分の口には届かなくても、相手の口には届く。こうして代わる代わる飲んだ二人は、すっかり酔って謡い、縛られたまま舞い出します。

そこへ主人が帰ってきて、二人の後ろに立ちます。杯の酒に主人の顔が映ると、二人はそれを「主人の未練が杯に映った」と見立て、即興の謡でからかいます。ふり返って本人に気づいたときにはもう遅く、怒った主人が「やるまいぞ、やるまいぞ」と二人を追いかけて幕となります。

主な登場人物と役の名前

狂言では、主役を「シテ」、相手役を「アド」と呼びます。『棒縛』のシテは太郎冠者で、棒を担いだ姿のまま舞う見せ場を受け持ちます。主人はアド、次郎冠者は「小アド」と呼ばれる二番目の相手役です。

冠者(かじゃ)とは召使いのこと。太郎冠者は狂言に何度も登場するおなじみの人物で、主人を困らせたり出し抜いたりする、ずる賢くて憎めない役回りです。

この狂言が伝えていること(時代の背景)

狂言は、能とともに室町時代ごろに形づくられた、日本で最も古い喜劇のひとつです。神や武将の物語を重々しく演じる能に対し、狂言はふつうの人々の失敗や欲を、せりふと身ぶりで笑いに変えてきました。

『棒縛』で笑われるのは、だらしない召使いだけではありません。知恵をしぼって二人を縛った主人も、結局は出し抜かれ、顔まで笑われてしまいます。身分が上の人がやりこめられる場面は狂言によく見られ、当時の観客の気持ちを映しているとも言われます。

また、何もない舞台で、縛られた体の不自由さや酒蔵の戸、杯の酒を身ぶりだけで見せるのも狂言らしさです。体の動きそのものが笑いになるため、言葉がわからない人にも伝わりやすく、海外公演でもよく演じられる作品です。

漫画版で変えたところ・足したところ

漫画は原典の骨組みを残しながら、読みやすく脚色しています。まず、原典では「主(あるじ)」とされることが多い主人を、このシリーズに共通して登場する大名にまとめました。

主人の出かける先や理由、酒蔵の造りや戸の開け方、酒の器の形、飲めるまでの試行錯誤のギャグは、漫画で足した部分です。二人の謡や舞の歌詞も、原典の文言ではなく短いオリジナルの歌にしています。ただし「杯に映った顔=主人の未練」という見立ては原典のまま残しました。

太郎冠者をお調子者、次郎冠者を要領がよいのにやられ役として描き分けたのも漫画の工夫です。最後の追いかけっこも漫画らしくふくらませています。太郎冠者が縛られた棒を振り回して主人に向かう場面は、流儀や演出によって差があるため、脚色として扱っています。

漫画で読むには

Manga Portalの『狂言 ―笑いの六百年―』第3話「自分では飲めない。でも二人なら飲める ―棒縛―」では、何もない能舞台で演じられてきたこの話を、屋敷と酒蔵を舞台にしたコマで描いています。二人が杯を差し出し合う「協力プレイ」の場面は、絵で見るといっそうわかりやすいはずです。

全話無料で、会員登録なしですぐに読めます。あらすじを知ったうえで、六百年前から変わらない笑いを漫画で味わってみてください。

この話の登場人物

太郎冠者(たろうかじゃ)
主人に仕える酒好きの召使いで、この狂言のシテ(主役)。棒術の型を見せたところを、両腕を棒に縛られてしまう。
次郎冠者(じろうかじゃ)
もう一人の召使い。はじめは主人に協力して太郎冠者を縛るが、自分も後ろ手に縛られ、最後は太郎冠者と組んで酒を飲む。
主人(しゅじん)/大名(だいみょう)
留守のたびに酒を飲まれて困り、二人を縛って出かける主人。原典では「主(あるじ)」とされることが多く、漫画ではシリーズ共通の大名として描く。

よくある質問

『棒縛』はどんな話?

主人が留守のあいだの盗み飲みを防ぐため、太郎冠者を棒に、次郎冠者を後ろ手に縛って出かける狂言です。二人は互いに杯を持って飲ませ合い、酒盛りをしてしまいます。最後は帰ってきた主人に見つかり、追い回されて終わります。

縛られた二人はどうやって酒を飲んだの?

太郎冠者は棒に縛られた手で杯を持って次郎冠者に飲ませ、次郎冠者は後ろ手のまま背中越しに杯を傾けて太郎冠者に飲ませました。自分の口には届かなくても相手の口には届くことを利用した、二人の協力プレイです。

太郎冠者とは何者?

狂言に何度も登場する召使いの役で、「冠者」は召使いを表す言葉です。主人の言いつけを守らなかったり出し抜いたりする、ずる賢くて憎めない人物として描かれます。

『棒縛』の最後はどうなる?

杯の酒に主人の顔が映り、二人はそれを主人の未練が映ったものだと謡でからかいます。ふり返って主人に気づき、怒った主人が「やるまいぞ、やるまいぞ」と二人を追い回して幕となります。

狂言とは何?

能とともに室町時代ごろに形づくられた、日本の古い喜劇です。ふつうの人々の失敗や欲を、せりふと身ぶりで笑いにして演じます。

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