太郎冠者とは
うっかり者で機転の利く召使い
太郎冠者(たろうかじゃ)
太郎冠者(たろうかじゃ)とは、狂言に最もよく登場する召使いの役名です。特定の一人の名前ではなく、主人に仕える家来の筆頭を指し、この役が活躍する狂言は「小名狂言」や「太郎冠者物」とも呼ばれます。「冠者」はもともと若者を指す言葉で、のちに若い召使いの意味でも使われました。うっかり者でずる賢く、それでいてどこか憎めない人物です。
第1話『末広かり』では、扇のことだと知らずに「末広がり」を探し、すっぱに古い傘を買わされます。叱られても、教わった囃子物を歌い舞って主人の機嫌を直します。第2話『附子』では猛毒とされた砂糖をなめ、掛物を破り茶碗を割る言い訳を思いつきます。第3話『棒縛』では両腕を棒に縛られながらも次郎冠者と酒を飲み、第4話『蚊相撲』では大うちわで蚊の精を追い払い、最後は主人を投げ飛ばします。
登場する話5
第1話
扇を買えと言われ、傘を買ってきた末広かり
シリーズ第1話。「末広がり」が扇のことだと知らないまま、太郎冠者は都へ買い物に出されます。口のうまい詐欺師に古い傘を高値で買わされ、殿は大激怒。追い出された太郎冠者は、詐欺師に教わった歌で勝負に出ます。
19ページ第2話
風だけで死ぬ猛毒、のぞいてみた附子(ぶす)
シリーズ第2話。殿が「風に当たるだけで死ぬ猛毒」と言い残した桶。留守番の太郎冠者と次郎冠者は、こわいのに気になってたまらない。中身を知った二人が、殿のうそをそのまま言い訳に使い返す、教科書でもおなじみの狂言。
19ページ第3話
自分では飲めない。でも二人なら飲める棒縛(ぼうしばり)
シリーズ第3話。留守のたびに酒を飲まれる殿(原典では「主」。本作ではシリーズの大名)は、太郎冠者を棒に、次郎冠者を後ろ手に縛って出かけます。自分の口には届かないけれど、相手の口には届く――二人が見つけた、六百年前の「協力プレイ」の狂言です。
19ページ第4話
組んだ相手の顔が、蚊になった蚊相撲(かずもう)
シリーズ第4話。見栄っ張りの殿に「今日中に強い家来を」と言われ、太郎冠者が街道で見つけたのは腕自慢の相撲取り。けれどその正体は、人間ほどもある蚊の精だった――。
19ページ第5話
殿様のカンニング、合図は家来のすね萩大名
シリーズ第5話。歌の詠めない見栄っ張りの殿が、家来の扇の骨と、なぜか「すね」を合図に和歌の席へ。読者だけが答えを知っている、六百年前のカンニング喜劇「萩大名」です。
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