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第1話扇を買えと言われ、傘を買ってきた末広かり

シリーズ第1話。「末広がり」が扇のことだと知らないまま、太郎冠者は都へ買い物に出されます。口のうまい詐欺師に古い傘を高値で買わされ、殿は大激怒。追い出された太郎冠者は、詐欺師に教わった歌で勝負に出ます。

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次回予告 · 制作中第2話 附子 ―なめたら死ぬ壺―

「この壺は猛毒。近づくな」と言われたら、あなたは開ける? 600年前の家来は開けて、全部食べた。そして最強の言い訳を思いつく。

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この話のあらすじ

裕福で幸せ者の主人(果報者)が、めでたい祝いの席で客に「末広がり」を贈ろうと考えます。主人は家来の太郎冠者を呼んで、都へ買いに行くよう言いつけます。そのとき「地紙がよく、骨に磨きがかかっていて、要がしっかりしていて、戯れ絵が描いてあるものを選べ」と、良い品の条件も教えます。ところが太郎冠者は、末広がりが何なのかを知らないのに、聞き返さずに出かけてしまいます。 都に着いても、どの店で売っているのかわかりません。そこで太郎冠者は「末広がり買おう」と呼びながら歩き回ります。これに目をつけたのが、すっぱ(都の詐欺師)です。

原典狂言傑作集 ―笑いの六百年― — 日本 · 室町時代〜江戸時代(『狂言記』1660年刊)

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この話のもとになった物語

狂言『末広かり』のあらすじ|扇と傘を取り違えた太郎冠者の話

ひとことで言うと: 狂言『末広かり』は、主人から「末広がり(扇)」を買ってくるよう言いつけられた太郎冠者が、それが扇のことだと知らないまま都へ行き、すっぱ(詐欺師)に古い傘を高値で買わされる話です。主人は怒りますが、太郎冠者がすっぱに教わった囃子物を歌って舞うと、主人もつい浮かれて機嫌を直します。大蔵流・和泉流に伝わるめでたい脇狂言で、古い台本である大蔵虎明本にも入っています。

『末広かり』のあらすじ(原典)

裕福で幸せ者の主人(果報者)が、めでたい祝いの席で客に「末広がり」を贈ろうと考えます。主人は家来の太郎冠者を呼んで、都へ買いに行くよう言いつけます。そのとき「地紙がよく、骨に磨きがかかっていて、要がしっかりしていて、戯れ絵が描いてあるものを選べ」と、良い品の条件も教えます。ところが太郎冠者は、末広がりが何なのかを知らないのに、聞き返さずに出かけてしまいます。

都に着いても、どの店で売っているのかわかりません。そこで太郎冠者は「末広がり買おう」と呼びながら歩き回ります。これに目をつけたのが、すっぱ(都の詐欺師)です。太郎冠者は主人から聞いた条件をそのまま話してしまい、すっぱは古い傘を持ち出します。「開けば先へ広がる」と言い、地紙・骨・要・絵の条件にも一つずつこじつけて、これこそ末広がりだと信じ込ませ、高い値段で売りつけます。そのうえ「主人の機嫌が悪いときに歌えば直る」と言って、「傘をさすなる春日山」で始まる囃子物(はやしもの)まで教えます。

太郎冠者は得意になって帰り、傘を見せます。主人は「末広がりとは扇のことだ」と怒り、太郎冠者を追い出します。困った太郎冠者は教わった囃子物を思い出し、傘をさして歌いながら舞います。主人はだんだん浮かれてきて、とうとう一緒に囃して舞い、太郎冠者を許します。最後は二人でめでたく囃しながら舞台を去ります。

「末広がり」とは? 言葉と時代の背景

「末広がり」は扇の別の呼び名です。開くと先へ向かって広がる形が、「この先ますます栄える」ことを思わせるので、縁起のよい品として祝いの席の贈り物に使われてきました。今でも「八」の字を末広がりと呼んで縁起をかつぐのは、同じ考え方からです。

狂言は室町時代に能と一緒に育った、せりふとしぐさで笑わせる劇です。そのなかでも『末広かり』は「脇狂言」と呼ばれるめでたい曲に分けられ、笑いのあとに祝いの気分で終わるのが特徴です。主人公の太郎冠者は、多くの狂言に出てくるおなじみの家来の役です。都会の詐欺師が田舎から来た人をだます筋立てには、当時の都の活気や、町に出てくる人びとの姿も表れています。

笑いのしかけと見どころ

いちばんの見どころは、すっぱの「こじつけ」です。扇にしか当てはまらないはずの条件を、口のうまさだけで傘に結びつけていくので、見ている人は答えがわかっていても笑ってしまいます。また、主人が怒ってから浮かれ出すまでの変わりようも楽しいところです。歌と舞の調子のよさに乗せられてしまう主人の姿から、怒りを笑いと祝いで包む狂言らしい明るさが伝わってきます。

なお、傘の売り値の具体的な額は、流派や台本によって言い方が違います。祝いの席がいつなのかについても、原典では「めでたい席」とされているだけで、正月と決まっているわけではないと考えられます。

漫画版で変えたところ

漫画の第1話では、シリーズの入り口として、主人を果報者から都に住む大名に変え、正月の祝いの品を探すという設定にしています(原典の役は果報者です)。冒頭には、見栄っぱりの大名と、うっかり者の太郎冠者の性格を紹介する場面を足しました。

原典の舞台には何も置かれないので、都の店や通行人、物売りでにぎわう町並みは漫画で描き足したものです。太郎冠者が呼び歩いて笑われる場面、すっぱが傘を開いて見せる場面や言いくるめるときの表情、傘の破れ具合、お金を払う場面も漫画の演出です。主人の表情が怒りから笑顔へ変わっていく流れや、最後の舞の絵も、実際の舞台の型をそのまま写したものではなく、漫画ならではの表し方にしています。

漫画で読むには

Manga Portal の『狂言 ―笑いの六百年―』は、全話無料で、会員登録なしで読めます。第1話の『末広かり』は、狂言をまったく知らない人でも、扇と傘の取り違えだけで笑える話です。舞台を見る前の予習にも、六百年前の笑いを気軽にのぞいてみたいときにもおすすめです。ページをめくって、太郎冠者の買い物について行ってみてください。

この話の登場人物

太郎冠者(たろうかじゃ)
主人の家来で、この曲のシテ(主役)。人がよくてうっかり者だが、叱られても歌と舞で主人の機嫌を直す機転がある。
果報者(かほうもの)
太郎冠者の主人で、裕福な幸せ者。すぐ怒るが、囃子物にはつい浮かれてしまう陽気な人。漫画では大名として描かれる。
すっぱ
都の詐欺師。口がうまく、古い傘を末広がりだと言いくるめて売りつけるが、機嫌直しの歌を教える憎めない一面もある。

よくある質問

狂言『末広かり』はどんな話?

主人から末広がり(扇)を買ってくるよう言われた太郎冠者が、扇のことだと知らずに、詐欺師に古い傘を買わされる話です。主人は怒りますが、太郎冠者が教わった歌で舞うと主人も浮かれて許し、めでたく終わります。

「末広がり」とは何のこと?

扇の別の呼び名です。開くと先へ広がる形が「この先栄える」ことを表すので、縁起のよい贈り物とされてきました。

すっぱとはどういう意味?

狂言に出てくる、都の詐欺師やいかさま師の役のことです。口のうまさで田舎から来た人をだます役として、よく登場します。

太郎冠者とはどんな人物?

多くの狂言に出てくる、主人に仕える家来の役です。うっかり者で失敗もしますが、明るく、知恵を働かせて切り抜けることもあります。

脇狂言とは何?

狂言の分け方の一つで、祝いの気分が強いめでたい曲のことです。『末広かり』もそのひとつで、最後は笑いと囃子でにぎやかに終わります。

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