第2話時計の中で、末っ子は見ていたオオカミと七ひきの子ヤギ
グリム童話シリーズ第2話。母さんの留守に、声と足を化けさせて3度戸をたたくオオカミ。柱時計の箱に隠れたいちばん小さな子ヤギは、暗がりで最後まで聞き届け、家族を取り戻すためにひとりで走る。



















最後まで読んでくれてありがとう!
ラプンツェルの名前は、母親が食べたがった『野菜』の名前だった。
グリム童話シリーズ第2話。母さんの留守に、声と足を化けさせて3度戸をたたくオオカミ。柱時計の箱に隠れたいちばん小さな子ヤギは、暗がりで最後まで聞き届け、家族を取り戻すためにひとりで走る。



















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ラプンツェルの名前は、母親が食べたがった『野菜』の名前だった。
この話のもとになった神話
「オオカミと七ひきの子ヤギ」は、ドイツのグリム兄弟がまとめた昔話集『子どもと家庭のための昔話』(グリム童話)の5番目に入っているお話です。グリム兄弟は何度も本を直しながら出し直しており、この記事では最後の版である1857年の第7版(決定版)をもとに、あらすじを紹介します。
母ヤギの留守に、オオカミが3回やって来て、声や足をごまかしながら家に入りこもうとする――日本でも絵本や紙芝居でよく知られた話ですが、原作を読むと、細かいところに意外な発見があります。
年をとった母ヤギには7匹の子ヤギがいて、とても大事に育てていました。ある日、森へ食べ物を取りに行くことになった母ヤギは、子どもたちに「オオカミに気をつけなさい。あいつは化けるのがうまいけれど、しわがれた声と黒い足ですぐに分かるよ」と言い聞かせて出かけます。
1回目、オオカミは「母さんだよ、おみやげがあるよ」と戸をたたきますが、ガラガラ声で見破られます。そこでオオカミは店で大きなチョークを買って食べ、声を細くしました。2回目は声はごまかせたものの、窓にかけた黒い前足で見破られます。
オオカミはパン屋に「足をけがした」と言って生地を塗らせ、さらに粉屋に白い粉をまぶすよう頼みます。粉屋はあやしいと思って断りますが、「やらないなら食ってやる」とおどされ、こわくなって言うとおりにしてしまいます。語り手はここで「人間とはそういうものだ」と、ちくりと皮肉を言っています。
3回目、白い足を見た子ヤギたちは母さんだと信じて戸を開けてしまいます。机の下、ベッド、かまど、台所、戸棚、洗いおけの下、そして柱時計の箱へと逃げこみますが、オオカミは6匹を見つけて次々に丸のみにしました。時計の箱に隠れたいちばん小さな末っ子だけが、見つかりませんでした。
おなかいっぱいになったオオカミは、野原の木の下で眠りこみます。帰ってきた母ヤギが見たのは、開けっぱなしの戸と、ひっくり返った家具でした。子どもたちの名前を呼んでも返事はなく、最後に末っ子を呼んだとき、ようやく時計の箱の中から声がします。話を聞いた母ヤギは泣きました。
母ヤギが末っ子と外へ出ると、オオカミが大いびきをかいていて、ふくれたおなかの中で何かが動いています。まだ生きているかもしれない――母ヤギは末っ子を家へ走らせ、はさみと針と糸を持ってこさせました。おなかを切ると、6匹が次々に元気に飛び出してきます。オオカミがかまずに丸のみにしていたからです。
母ヤギは子どもたちに大きな石を集めさせ、オオカミのおなかに詰めて縫い合わせました。目を覚ましたオオカミはのどが渇いて井戸へ向かい、おなかの石がごろごろ鳴るのをふしぎがるひとり言を言いながら、水を飲もうとかがんだところで、石の重みで井戸に落ちて溺れてしまいます。ヤギたちは「オオカミは死んだ!」と叫び、井戸のまわりを喜んで踊りました。
いちばん分かりやすい教えは「留守番のとき、知らない相手に戸を開けてはいけない」ということです。子ヤギたちは母の教えを守って2回は見破りますが、見た目だけで判断した3回目にだまされてしまいます。
グリム兄弟の注記では、この話はヘッセン地方に伝わる話とされています。兄弟が暮らしたカッセルの家庭から聞いた話だという説もありますが、誰が語ったのかははっきりしていません。柱時計の箱に隠れる場面は、当時のドイツの家にあった、背の高い箱型の振り子時計を思い浮かべると分かりやすいでしょう。
もう一つ見のがせないのが、粉屋の場面です。おどされると悪いことにも手を貸してしまう人間の弱さを、語り手は短い一言で皮肉っています。子ども向けの昔話の中に、大人に向けたまなざしもまじっているのが、グリム童話のおもしろいところです。
漫画「グリム童話 ―森の語り部たち―」第2話は、時計の箱に隠れた末っ子の目線で話を描いています。暗がりの中でオオカミの声や兄弟たちの悲鳴を最後まで聞き届け、家族を取り戻すために走る姿は、原作の「はさみと針と糸を取りに家へ走る」場面をふくらませたものです。
原作には子ヤギ一人ひとりの名前や性格は書かれていません。漫画で子ヤギたちに名前や見た目の違いがあるのは、読みやすくするための創作です。母ヤギが森で何を取ってきたか、村や家のようすなども漫画オリジナルです。
また、若いグリム兄弟がカッセルで近所の娘たちから話を聞き、書きとめるという冒頭と結びの場面も、漫画で加えた枠です。おなかを切る場面は、幅広い年齢の読者が楽しめるよう、こわくなりすぎない表現にしています。オオカミの韻を踏んだひとり言も、漫画のために新しく日本語の言い回しを作りました。
文章で読むと短いお話ですが、3回の訪問のはらはら感や、暗い時計の箱の中で息をひそめる末っ子の気持ちは、絵で見るとぐっと伝わってきます。
Manga Portal の「グリム童話 ―森の語り部たち―」は、全話無料・会員登録なしで読めます。原作のあらすじを知ったうえで、漫画ならではの末っ子の小さな冒険をのぞいてみてください。
母ヤギが眠っているオオカミのおなかを切ると、丸のみにされた6匹が生きたまま出てきます。代わりに石を詰められたオオカミは、井戸に落ちて溺れます。ヤギたちは井戸のまわりで喜んで踊ります。
柱時計の箱の中です。オオカミはほかの6匹は見つけましたが、時計の箱に隠れた末っ子だけは見つけられませんでした。
声はチョークを食べて細くしました。足はパン屋に生地を塗らせ、粉屋をおどして白い粉をまぶさせて、母ヤギのような白い足に見せかけました。
オオカミが食い意地を張って、かまずに丸のみにしたからです。そのため、おなかを切ると6匹とも無事に出てきました。
グリム童話(『子どもと家庭のための昔話』)の5番目に収められています。グリム兄弟の注記では、ヘッセン地方に伝わる話とされています。