第4話「燃えない毛皮」に大金を払った男火鼠の皮衣・龍の首の玉
竹取物語 第4話。大金で「燃えない毛皮」を買った右大臣アベと、龍の首の玉を力ずくで取ろうとした大納言オオトモ。見栄っ張りな二人の挑戦を、かぐや姫は自分の目で確かめ、そっと二人の無事を願う。残る求婚者は、あと一人――。



















最後まで読んでくれてありがとう!
五人目の求婚者が死んだとき、氷のような姫の心が初めて動いた。そして現れたのは、この国でいちばん力のある男だった
竹取物語 第4話。大金で「燃えない毛皮」を買った右大臣アベと、龍の首の玉を力ずくで取ろうとした大納言オオトモ。見栄っ張りな二人の挑戦を、かぐや姫は自分の目で確かめ、そっと二人の無事を願う。残る求婚者は、あと一人――。



















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五人目の求婚者が死んだとき、氷のような姫の心が初めて動いた。そして現れたのは、この国でいちばん力のある男だった
この話のもとになった神話
かぐや姫は、結婚を申しこむ五人の男たちに、それぞれ手に入れるのがとても難しい品を求めました。右大臣の阿倍御主人に求めたのは、唐(今の中国)にあるという「火鼠の皮衣」です。火に入れても燃えないと言われていた毛皮でした。
お金持ちの阿倍は、自分では探しに行きません。唐の商人の王けいに手紙とお金を送り、家来の小野房守を使いに出しました。王けいは初めに「唐にもない、うわさだけの品だ」と答えます。のちに「昔インドの聖人が持ちこんだ皮衣が西の山寺にあり、役所に頼んでやっと買い取った。足りない分を立て替えたので金五十両を追加してほしい」と知らせてきました。阿倍は大喜びで唐の方角を拝み、追加のお金を払います。
届いた皮衣は宝石で飾った箱に入っていて、深い青色の毛の先が金色に光る、とても美しいものでした。阿倍は歌を添えて姫の家に持って行きます。翁(おじいさん)は今度こそ姫が結婚すると期待しましたが、姫は「美しいけれど本物かどうかは分からない。火で焼いてみて」と言います。姫の言いつけで火にくべると、皮衣はあっという間に燃えてしまいました。阿倍は顔が草の葉のような色になって、だまって帰っていきます。姫のほうは喜び、皮肉のこもった歌を返しました。世間の人はこの話から、うまくいかずにがっかりすることを「あへなし」と言うようになった、と物語は伝えています。「阿倍」と「あへ」をかけた言葉遊びです。
大納言の大伴御行が求められたのは、龍の首にある五色に光る玉です。大伴は家来たちに「主人の命令なら命を捨ててでも取ってこい」と言い、屋敷の財産を残らず旅のお金として渡しました。けれど家来たちは陰で主人の悪口を言い、お金を分け合ってばらばらに去ってしまいます。大伴は姫を迎えるための豪華な家を建て、もとの妻たちとも別れて待っていました。
一年たっても知らせが来ないので、大伴は自分で難波(今の大阪)から船を出します。「弓で龍を射殺してやる」と強気でしたが、筑紫(今の九州)の沖で大嵐と雷に襲われ、すっかり取り乱しました。船頭に「龍を殺そうとしたから神が怒っているのだ」と言われると、大伴は「龍には毛一本ふれません」と千回ほども神にあやまります。
三、四日後、船は播磨の明石の浜に流れ着きました。大伴はお腹がふくれ、両目はすももを二つ付けたように腫れあがっていました。家に戻った大伴は、姫を「大盗人」とののしって求婚をあきらめます。逃げた家来たちが戻ってくると、かえってほうびを与えました。もとの妻は大笑いし、世間の人も「とても耐えられない」という意味の言葉を、玉の話にかけてうわさしたといいます。
竹取物語は平安時代の前期に書かれた、作者の分からない物語です。阿倍御主人や大伴御行という名前は、実在した奈良時代ごろの貴族の名前を借りたものだという説もあります。
二人とも、お金や身分、命令の力で何とかしようとしますが、自分で確かめたり、誠実に努力したりはしません。そうした見栄っ張りな姿が、笑い話として描かれています。物語の最後に「あへなし」のような言葉遊びを置くのも、この作品の楽しいところです。
原典では二つの話は別々の段ですが、漫画では一話にまとめ、二人が同じころに挑んでいたように描いています。難題は同じ場面で出されるので、大きな食い違いはありません。
登場人物の顔や年齢、服装は漫画のオリジナルです(大伴の腫れた目とふくれたお腹だけは原典にあります)。王けいが偽物と知っていたのか、皮衣を実際に火に入れたのは誰か、阿倍の心の声や帰り道の様子、嵐の場面の描き方なども漫画で考えたものです。原典では龍そのものは姿を見せず、大伴が祈る神の姿も書かれていません。
「お金の男」と「武力の男」という対比や、かぐや姫が二人の無事をそっと願う場面も、漫画ならではの解釈です。原典では、姫が大伴の結末を知ったかどうかは書かれていません。
文章で読むと短い場面でも、燃え上がる皮衣や、嵐の海でうろたえる大伴の姿は、絵で見るとぐっと分かりやすくなります。この「竹取物語 ―月から来たかぐや姫―」は全話無料・会員登録なしで読めます。求婚者は残り一人。次の話もあわせて楽しんでみてください。
火に入れても燃えないと言われた、想像上の動物「火鼠」の毛皮です。竹取物語では、かぐや姫が右大臣の阿倍御主人に求めましたが、届いた品は火で燃えてしまい、偽物だと分かりました。
竹取物語では、阿倍の皮衣が燃えて結婚できなかったことから、うまくいかないことを「あへなし」と言うようになった、と書かれています。ただしこれは「阿倍」と「あへ」をかけた物語の中の言葉遊びで、実際の語源を説明したものではないと考えられています。
手に入れられませんでした。自分で船を出したものの大嵐にあい、神に許しを願ってようやく助かります。帰ってからは求婚をあきらめ、かぐや姫を悪く言いました。
仏の御石の鉢、蓬莱の玉の枝、火鼠の皮衣、龍の首の玉、燕の子安貝の五つです。五人の求婚者がそれぞれ一つずつ求められましたが、誰も本物を持ってくることはできませんでした。