日本語言語を選ぶ

第3話完璧な嘘に届いた一枚の請求書蓬莱の玉の枝

クラモチ皇子は旅に出たふりをして隠れ工房で玉の枝を作らせ、作り話の大冒険で姫を追い詰める。だが枝の切り口に違和感を覚えていた姫の前に現れたのは、千日分の代金を求める煤だらけの職人たちだった。

19ページ全話無料・会員登録なし

ほかの言語で読む:English简体中文繁體中文한국어EspañolFrançais

1 / 19
2 / 19
3 / 19
4 / 19
5 / 19
6 / 19
7 / 19
8 / 19
9 / 19
10 / 19
11 / 19
12 / 19
13 / 19
14 / 19
15 / 19
16 / 19
17 / 19
18 / 19
19 / 19

最後まで読んでくれてありがとう!

次回予告 · 制作中第4話 燃える皮衣と龍の嵐

「燃えない毛皮」を大金で買った大臣と、「龍を倒す」と言って嵐に泣いた大納言。1000年前の無茶なクエスト、失敗編

この作品はここまで。次はこちらもどうぞ

RSS

この話のもとになった神話

竹取物語「蓬莱の玉の枝」あらすじ|車持皇子の嘘がばれた理由

竹取物語の「蓬莱の玉の枝」とは

『竹取物語』は平安時代の前期に作られたと考えられている物語で、作者はわかっていません。竹の中から見つかったかぐや姫に、五人の貴公子が結婚を申しこみます。姫はそれぞれに「この世で手に入りそうにない宝物」を持ってくるよう求めました。

車持皇子(くらもちのみこ)が頼まれたのは、東の海にある蓬莱山に生えているという木の枝です。根は銀、茎は金で、白い玉の実がついています。この段は、皇子が本物を探しに行かず、偽物で勝負しようとする話です。

元の物語のあらすじ(前半)―三日で戻った「長旅」

悪知恵の働く皇子は、朝廷には「筑紫(今の九州)へ湯治に行く」と言って休みをもらい、姫の家には「玉の枝を取りに行く」と伝えました。難波(今の大阪)から少しの供を連れて船出しますが、見送りの人が帰ると、三日ほどでこっそり戻ってきます。

皇子は、国でいちばん腕の良い鍛冶の職人六人を集めました。人が近づけない家を建て、かまどを三重に囲み、その中で職人たちに枝を作らせます。皇子自身もいっしょにこもり、領地の財産をつぎこみました。完成までにかかったのは、およそ千日です。

枝ができあがると、皇子は難波へ運び出し、長い船旅から帰ってきたように苦しそうなふりをします。「皇子が優曇華の花を持って都へ上った」という噂が広まり、それを聞いた姫は、もう負けてしまうと胸がつぶれる思いでした。

元の物語のあらすじ(後半)―作り話と職人たちの訴え

皇子は旅姿のまま姫の家を訪れ、枝を差し出しました。姫の育ての親である翁は、注文どおりの品だと感心して結婚を勧め、寝室の支度まで始めます。姫は何も言い返せず、頬杖をついて嘆くばかりでした。

枝のありかを翁に聞かれた皇子は、大冒険の話を語ります。嵐で沈みかけ、鬼のようなものに殺されそうになり、食べ物が尽きて草の根や貝で命をつなぎ、病気にも苦しんだ。五百日目にようやく海に浮かぶ山を見つけると、天人のような女に「ここは蓬莱の山です」と教えられた――という話です。翁はすっかり感動して、皇子の苦労をねぎらう歌を詠みました。

ところがそこへ、六人の男が庭に現れます。宮中の工芸を受けもつ役所の職人、漢部内麻呂(あやべのうちまろ)が、「千日あまり働いたのに、まだ代金をもらっていない」という訴え状を差し出したのです。嘘はたちまちばれました。姫は晴れやかな顔になり、歌を添えて枝を返すと、職人たちにたっぷり褒美を与えます。ところが皇子は、帰り道の職人たちを血が出るまで打たせ、褒美を捨てさせました。そして「一生の恥だ」と言って一人で深い山へ入り、二度と見つかりませんでした。

この話が伝えていること(時代の背景)

蓬莱山は、中国の神仙思想で東の海にあるとされた、仙人が住む不老不死の山です。優曇華は、仏教で三千年に一度だけ咲くといわれる花で、「めったにないもの」のたとえでした。当時の都の人々にとって、どちらも本当にあるかどうかわからない、遠い世界の宝だったのです。

この段のおもしろさは、どれほど手のこんだ嘘でも、代金を払わなかったことひとつで崩れてしまうところにあります。身分の高い皇子が、実際に働いた人たちを軽く扱ったせいで自滅する筋書きには、権力者への皮肉も読み取れます。なお、車持皇子のモデルは実在の貴族・藤原不比等だという説もあります。

漫画版で変えたところ

原典には、姫が枝を疑っていたとは書かれていません。漫画で姫が「枝の切り口」に違和感を覚えるのは、姫の賢さを伝えるための創作です。また、隠れ工房の中の様子、千日という時の流れ、職人一人ひとりの顔や性格、玉の枝のデザインも、原典にはくわしい描写がないため、漫画で新しく描いています。

皇子の冒険談は、皇子自身が嘘だとわかっている作り話です。そのため漫画ではファンタジー風に大げさに描きました。ただし、出来事の順番と中身は原典の皇子の語りに合わせています。鬼のようなものや、蓬莱山の女「うかんるり」の姿かたちも、原典に描写がないので漫画オリジナルのデザインです。

漫画で読むには

『竹取物語 ―月から来たかぐや姫―』は全話無料、会員登録なしで読めます。第3話では、得意げに冒険を語る皇子と、それを聞く姫や翁の表情を交互に見せながら、一枚の「請求書」で嘘がひっくり返る瞬間を描いています。あらすじを知ったうえで読むと、皇子の嘘がどこからほころびていくのかを探す楽しみもあります。前後の話とあわせて、ぜひ読んでみてください。

この話の登場人物

車持皇子(くらもちのみこ)
かぐや姫に求婚した五人の一人で、職人に偽物の玉の枝を作らせ、作り話で姫をだまそうとした悪知恵の働く皇子。
かぐや姫(かぐやひめ)
皇子に蓬莱の玉の枝を求めた姫で、嘘がばれると晴れやかな顔で枝を返し、職人たちに褒美を与えた。
竹取の翁(たけとりのおきな)
姫の育ての親で、偽物の枝と皇子の冒険談をすっかり信じこみ、結婚の支度まで始めてしまった人のよい老人。
漢部内麻呂(あやべのうちまろ)
宮中の工芸を受けもつ役所の職人で、千日あまりの仕事の代金を求める訴え状を出し、嘘が明らかになるきっかけを作った(名前の読み方は本によって異なる)。
職人たち(六人)
閉ざされた工房で千日あまりかけて玉の枝を作った腕利きの鍛冶の職人たち。
うかんるり
皇子の作り話の中だけに出てくる、蓬莱山で水を汲んでいた天人のような女。

よくある質問

かぐや姫が出した五つの難題とは?

石作皇子には「仏の御石の鉢」、車持皇子には「蓬莱の玉の枝」、右大臣阿倍御主人には「火鼠の皮衣」、大納言大伴御行には「龍の首の珠」、中納言石上麻呂には「燕の子安貝」を求めました。どれもこの世にあるかどうかわからない宝物で、結局だれも本物を手に入れられませんでした。

蓬莱の玉の枝とはどんなもの?

東の海にある蓬莱山に生えているという木の枝で、根が銀、茎が金、実が白い玉でできています。蓬莱山は、中国の神仙思想で仙人が住むとされた伝説の山です。

車持皇子の嘘はなぜばれたの?

偽物の枝を作った職人たちが、千日あまり働いた代金をまだもらっていないと、姫の家まで訴えに来たからです。皇子が長い冒険談を語り終えた直後のことで、作り話はその場で崩れました。

車持皇子はその後どうなった?

皇子は褒美をもらった職人たちを帰り道で打たせ、褒美を捨てさせました。そして「一生の恥だ」と言って一人で深い山へ入り、家来たちが探しても見つかりませんでした。生きているのかどうかも、原典には書かれていません。

漫画を最初から読む(無料)