第9話まぶしい巨神に、小さな踊り子ひとり天孫降臨
第9話、地上へ降りる若き神ニニギの前に天と地を照らすまぶしい神が立ちはだかり、一番小柄な踊り子の女神ウズメが踊るような足取りでたった一人歩み寄って正体を問う。祖母の鏡を胸に降り立った地上で、ウズメは道案内の神を海へ見送り、その名を受け継ぐ。
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第9話、地上へ降りる若き神ニニギの前に天と地を照らすまぶしい神が立ちはだかり、一番小柄な踊り子の女神ウズメが踊るような足取りでたった一人歩み寄って正体を問う。祖母の鏡を胸に降り立った地上で、ウズメは道案内の神を海へ見送り、その名を受け継ぐ。
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この話のもとになった神話
地上の国(葦原中国)を従わせたという知らせが届くと、天照大御神と高木神は、天照の子の天忍穂耳命に「地上へ降りて国を治めなさい」と命じます。ところが忍穂耳は「支度をしている間に子が生まれました。この子を降ろすのがよいでしょう」と答えました。こうして役目を受け継いだのが、天照の孫にあたるニニギです。母は高木神の娘で、兄に天火明命がいます。
ニニギが出発しようとすると、道がいくつにも分かれる「天の八衢」に、上は天の世界の高天原から、下は地上までを照らす神が立っていました。天照と高木神は、アメノウズメ(天宇受売命)を一人で行かせ、名前を聞かせます。ウズメは「か弱い女神だが、どんな相手と向き合っても気おされない神」と言われていました。光る神は「地上の神、サルタビコです。天の神の御子が降りると聞いて、道案内をしようと待っていました」と答えます。
ニニギは五柱のお供の神(五伴緒)を連れ、勾玉・鏡・草那藝剣と、思金神・手力男神・天石門別神を授かります。天照は「この鏡を私の魂だと思って、私を拝むように祀りなさい」と言いました。ニニギは幾重にも重なる雲を押し分け、天浮橋を通って、筑紫の日向の高千穂の久士布流多気に降り立ちます。そして「朝日も夕日もよく当たる、とても良い土地だ」と言い、立派な宮を建てて住みました。
その後、ウズメはニニギに命じられてサルタビコを送り届け、その名前を受け継いで「猿女君」の祖先になります。サルタビコはのちに阿邪訶で漁をしていて、貝に手をはさまれて海に沈んでしまいました。帰ってきたウズメは魚たちを集め、「天の神の御子に仕えるか」とたずねます。ただ一つ答えなかったナマコの口を小刀で裂いたので、今もナマコの口は裂けている、と古事記は語ります。
主人公は、天照大御神の孫のニニギです。命令を出すのは天照と、ニニギの母方の祖父にあたる高木神。この話でいちばん活躍するのはアメノウズメで、前の場面の「天岩戸」では、隠れた天照を外へ誘い出すために踊った女神です。サルタビコは地上の神(国つ神)で、古事記では男神とされています。体中から光を放つことは書かれていますが、顔や姿の描写はありません。
古事記は712年に太安万侶がまとめた、日本でいちばん古い歴史書です。天孫降臨は「天皇家の祖先は天から降りてきた神の子孫だ」という由来を語る、とても大事な場面です。ニニギが授かった勾玉・鏡・剣は、のちに「三種の神器」と呼ばれるようになりました(古事記の中にはこの呼び名は出てきません)。
鏡を天照の魂として祀れという命令の後には、その鏡が「伊須受能宮」に祀られたと書かれています。これは伊勢の神宮のことだと考えられています。また、五柱のお供の神は、中臣氏や忌部氏、猿女君など、朝廷の祭りを担った一族の祖先とされています。それぞれの一族が自分たちの役目の始まりを説明する話でもあったのです。ナマコの話も、志摩の国から届く初物を猿女君に与えるならわしの由来とされています。
ニニギが降りた高千穂がどこなのかは、宮崎県の高千穂町だという説と、宮崎・鹿児島の県境にある高千穂峰だという説があります。
漫画ではウズメを「一番小柄な踊り子」として描いていますが、古事記には体の大きさについての記述はありません。「か弱い女神」という評価と、天岩戸で踊った話をもとにした漫画の設定です。踊るような足取りで歩み寄る場面や、問答の間合い、表情も漫画の演出です。ただし、名前を問う・名乗るというやりとりの中身は原典に沿っています。
まぶしい巨神としてのサルタビコの姿や、雲・光・天浮橋の絵も漫画の創作です。サルタビコといえば鼻の長い天狗のような姿がよく知られていますが、これは『日本書紀』に書かれた姿で、古事記にはありません。
ウズメが鏡を胸に抱いて降りる場面も漫画の演出です。原典で鏡を授かるのはニニギです。また、原典ではウズメがサルタビコを「送った」とだけ書かれていて、行き先は書かれていません。阿邪訶が伊勢(今の三重県)にあたることから、伊勢へ送ったと考えられることが多く、漫画ではこの別れを「海への見送り」として描いています。
文章だけだと神さまの名前が多くて覚えにくい天孫降臨も、漫画なら、光の神の前に一人で進み出るウズメの勇気や、ニニギが雲を分けて降りていく場面を、目で見て楽しめます。『古事記 ―神々の系譜―』は、Manga Portalで全話無料・会員登録なしで読めます。天岩戸で踊ったウズメが、どうして猿田毘古の名前を受け継ぐことになったのか。前の話から続けて読むと、神々のつながりがよくわかります。
天照大御神の孫ニニギが、地上の国を治めるために天から降りてくる古事記の神話です。ニニギは勾玉・鏡・剣とお供の神々を連れて、日向の高千穂に降り立ちました。天皇家の祖先の由来を語る大切な場面です。
古事記では「筑紫の日向の高千穂の久士布流多気」に降りたとされています。場所については、宮崎県の高千穂町だという説と、宮崎・鹿児島県境の高千穂峰だという説があります。
天と地の分かれ道に立ち、ニニギの道案内を申し出た地上の神です。古事記では天から地上までを照らす光を放つ神とされていて、顔や姿の描写はありません。鼻の長い天狗のような姿は『日本書紀』に書かれたものです。
光る神の正体を一人で問いただし、それがサルタビコだと明らかにしました。その後サルタビコを送り届けて名前を受け継ぎ、猿女君の祖先となります。答えなかったナマコの口を裂いた話も残っています。
はい。ニニギが授かった勾玉・鏡・草那藝剣が、のちに「三種の神器」と呼ばれるものです。ただし、古事記の中には「三種の神器」という言葉そのものは出てきません。