第3話姉は鎧を着て、弟を待っていたアマテラスとスサノオの誓約(うけい)
第3話。父に追放されたスサノオは姉アマテラスに別れを告げに天へ昇るが、完全武装の姉に迎えられる。誓いの占いで子を生み「俺の勝ちだ」と叫んだ弟の乱暴を姉はかばい続けたが、一人の機織りの娘の死をきっかけに、恐れて岩屋に閉じこもってしまう。
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第3話。父に追放されたスサノオは姉アマテラスに別れを告げに天へ昇るが、完全武装の姉に迎えられる。誓いの占いで子を生み「俺の勝ちだ」と叫んだ弟の乱暴を姉はかばい続けたが、一人の機織りの娘の死をきっかけに、恐れて岩屋に閉じこもってしまう。
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この話のもとになった神話
父イザナギから海原を治めるように任されたスサノオは、その役目を果たしませんでした。長いあごひげが胸に届くほどの大人になっても、泣きわめいてばかりいたのです。古事記によると、その泣き方はすさまじく、緑の山は枯れ、川や海の水は干上がりました。悪い神々の声が夏のハエのようにあふれ、あらゆる災いが起こったといいます。
泣く理由をたずねられたスサノオは「亡き母の国、根之堅州国(ねのかたすくに)へ行きたい」と答えます。父はひどく怒り、スサノオを追放しました。スサノオは、その前に姉のアマテラスに事情を話そうと、天(高天原)へ昇っていきます。ところが、スサノオが昇るときに山も川も大地も揺れ動いたため、アマテラスは「弟は国を奪いに来たにちがいない」と疑いました。
アマテラスは髪を角髪(みずら)に結い直し、勾玉をつないだ玉飾りを髪や両腕に巻きました。背中と脇には矢を入れる靫(ゆき)を付け、手首に鞆(とも)を着け、弓を構えて待ち受けます。さらに堅い地面に腿まで足を踏み込み、土を雪のように蹴散らして雄叫びを上げ、「何をしに来たのか」と問いただしました。
スサノオは「悪い心はない」と言い、心が清いことを示すために、それぞれ誓約をして子を生もうと持ちかけます。誓約とは、神に誓いを立て、その結果で物事の正しさを占う方法です。二柱は天安河(あめのやすのかわ)をはさんで向き合いました。アマテラスは弟の剣をかみ砕いて吹き出した霧から三柱の女神を、スサノオは姉の玉飾りから五柱の男神を生みます。
アマテラスは「男神は私の持ち物から生まれたので私の子、女神はあなたの子」と分けました。するとスサノオは「自分の心が清いから、やさしい女の子が生まれた。だから私の勝ちだ」と言い出します。ここで気をつけたいのは、古事記では「どちらの子が生まれたら潔白か」という条件が先に決められていないことです。勝ち負けもスサノオがそう言っているだけで、語り手もアマテラスも判定していません。
勝ったつもりのスサノオは、アマテラスの田のあぜを壊して水路を埋め、神聖な儀式を行う御殿に汚物をまき散らします。アマテラスはとがめず、「酔って吐いたのだろう」「土地を惜しんでやったのだろう」と良いほうに言い直してかばいました。しかし乱暴はますますひどくなります。ついにスサノオは、神の衣を織る機屋(はたや)の屋根に穴を開け、皮をはいだ馬を投げ込みました。驚いた機織りの女性は、機織りの道具の梭(ひ)で体を突いてしまい、亡くなります。これを見て恐れたアマテラスは、天の岩屋戸(いわやと)にこもってしまいました。
古事記は、和銅5年(712年)に太安万侶(おおのやすまろ)がまとめた、日本に残っている最も古い歴史書の一つです。この場面では、高天原を治めるアマテラスと、秩序を乱すスサノオがぶつかります。そして次の「天の岩屋戸」の話へつながる、物語の大きな曲がり角になっています。
誓約で生まれた三柱の女神は、胸形(むなかた)の三つの宮にまつられたと古事記に書かれていて、現在の福岡県の宗像大社につながる神々です。また、五柱の男神のうち天之忍穂耳命(あめのおしほみみのみこと)は、のちの話で、天から地上へ降りる神の父として登場します。
この場面には、いろいろな説があります。たとえば、アマテラスが角髪に結ったのは、男性の髪型にして「男装」したのだという説がよく知られています。ただし、原典に「男の姿になった」とは書かれていません。また、誓約はスサノオの勝ちで、潔白が証明されたと説明されることも多いです。しかしこれは、先に条件を示している日本書紀の話を重ねた解釈だという見方もあります。
漫画は、原典の出来事の順番を守りながら、原典が語らない部分を絵と演出でおぎなっています。スサノオが泣き続けた理由や気持ち、高天原や機屋の景色、アマテラスの武装のデザインなどは漫画の創作です(勾玉・靫・鞆・弓という持ち物は原典どおりです)。タイトルの「鎧を着て」も、武装した姿を漫画らしく表した言い方です。
原典には、スサノオの勝利宣言をアマテラスがどう受け止めたのかが書かれていません。漫画で描かれる姉の表情や、弟をかばう気持ち、だんだん乱暴になっていくスサノオの心の動きは、作品としての解釈です。また、原典では亡くなった機織りの女性の人数が書かれていないので、「一人の機織りの娘」という描き方も漫画の脚色です。
揺れ動く山や川、地面を踏み鳴らすアマテラス、天安河をはさんで向き合う姉と弟の緊張感は、文章よりも絵で見たほうがずっと伝わります。『古事記 ―神々の系譜―』は、Manga Portalで全話無料・会員登録なしで読めます。第3話で原典の流れを確かめたら、岩屋にこもったアマテラスがこの先どうなるのかも、続けて読んでみてください。
スサノオが「自分に悪い心はない」と示すために提案した、神に誓って子を生む占いです。アマテラスはスサノオの剣から三柱の女神を、スサノオはアマテラスの玉飾りから五柱の男神を生みました。
古事記では、スサノオが「女の子が生まれたから私の勝ちだ」と言うだけで、語り手もアマテラスも勝ち負けを判定していません。スサノオの勝ちとする説明は多いですが、日本書紀の内容を重ねた解釈だという見方もあります。
誓約のあと、スサノオは田を壊したり御殿を汚したりと乱暴を続けました。最後に機屋へ皮をはいだ馬を投げ込み、機織りの女性が亡くなったのを見て、アマテラスは恐れて岩屋戸にこもりました。
古事記では、スサノオは「亡き母の国、根之堅州国へ行きたい」と理由を答えています。それ以上の気持ちは原典に書かれていないので、寂しさや反抗といった心の描写は、漫画などの創作で補われる部分です。
古事記には、胸形(むなかた)の三つの宮にまつられたと書かれています。現在の福岡県にある宗像大社にまつられている神々です。