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第8話剣の上に座る神、「国をゆずるか」国譲り

第8話。親友と作った国を一人で守ってきたオオクニヌシのもとへ、天から使者が次々と送られるが、誰も戻らない。最後に来た無口な雷神タケミカヅチは海に立てた剣の切先に座り、力くらべの末、王は天に届く柱の宮を願って国を手放す。

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この話のもとになった神話

国譲りのあらすじ|オオクニヌシとタケミカヅチ【古事記】

国譲りとは? ひとことで言うと

国譲り(くにゆずり)は『古事記』上巻にある神話です。地上の国「葦原中国(あしはらのなかつくに)」を作って治めていた大国主神(オオクニヌシ)が、天の世界・高天原(たかまがはら)の神々に国を差し出すまでを描いています。天からは何度も使者が送られますが、うまくいきません。最後に建御雷神(タケミカヅチ)が来て、ようやく話がまとまります。

元の神話のあらすじ① 戻ってこない使者たち

大国主は、海から小さな舟に乗ってやって来た少名毘古那神(スクナビコナ)と兄弟になり、二人で国を作り固めました。ところが少名毘古那は、海の向こうの常世国(とこよのくに)へ去ってしまいます。そのあと、海を照らしながら現れた神を御諸山(みもろやま)にまつり、大国主は国作りを続けました。この神を大物主神とするのは通説で、この場面の本文には名前が出てきません。

いっぽう高天原では、天照大御神(アマテラス)が「地上の国は、わが子の天忍穂耳命(アメノオシホミミ)が治める国だ」と言いわたします。ところが忍穂耳は、天と地をつなぐ天浮橋から下をのぞき、「ひどく騒がしい」と言って帰ってきてしまいました。そこで神々が会議を開き、知恵の神・思金神(オモイカネ)の案で天菩比神(アメノホヒ)を送ります。しかし天菩比は大国主にすり寄り、三年たっても報告しませんでした。次に送られた天若日子(アメノワカヒコ)は、大国主の娘の下照比売(シタテルヒメ)と結婚します。そして国を自分のものにしようとたくらみ、八年も戻りませんでした。

様子を見に来た雉(きじ)の鳴女(なきめ)を、天若日子は天佐具売(アメノサグメ)にそそのかされて射殺してしまいます。その矢は天まで届きました。高木神(高御産巣日神の別名)が「悪い心があるなら当たれ」と言って投げ返すと、矢は寝ていた天若日子の胸に当たります。葬式には友人の阿遅志貴高日子根神(アヂシキタカヒコネ)が弔いに来ました。ところが姿があまりにそっくりなため、死んだはずの天若日子と間違えられてしまいます。怒った高日子根は、亡きがらを置く喪屋(もや)を剣で切り倒し、蹴り飛ばしました。

元の神話のあらすじ② 剣の上に座るタケミカヅチ

三番目の使者に選ばれたのが建御雷です。建御雷は天鳥船神(アメノトリフネ)とともに出雲の伊耶佐(いざさ)の小浜に降りました。そして剣を波の上に逆さに突き立て、その切先にあぐらをかいて座ります。そのうえで「お前の治める国は天の御子に任されている。どう考えるか」と大国主に問いかけました。

大国主はその場では答えず、息子の事代主神(コトシロヌシ)に判断をまかせます。事代主は承知して身を隠しました。もう一人の息子の建御名方神(タケミナカタ)は、大きな岩を手に現れて力くらべを挑みます。ところが建御名方が手をつかむと、建御雷の手は氷の柱に、さらに剣の刃に変わりました。逆に建御名方の手は、若い葦のように握りつぶされて投げ飛ばされます。建御名方は科野国(しなののくに)の州羽(すわ)の海まで追いつめられ、降参しました。

最後に大国主は、息子たちの言うとおりにすると答えます。そのうえで、ひとつ条件を出しました。地の底の岩に太い柱を立て、屋根の千木(ちぎ)が高天原に届くほど高い住まいを建ててくれれば、自分は引き下がろう、というものです。多芸志(たぎし)の小浜に宮が建てられ、櫛八玉神(クシヤタマ)が火をおこしてごちそうを供えました。建御雷は天に帰り、このことを報告しました。

この神話が伝えていること

国譲りは、天の神の子孫が地上を治めるようになるまでの流れを語る大事な場面で、このあと天孫降臨(てんそんこうりん)の話へ続きます。ただ、大国主は負けて国を取られただけではありません。立派な宮を建てることを条件にして、しっかり交渉もしています。この宮は出雲大社の始まりと考えられることが多く、建御名方が逃げた州羽は今の長野県の諏訪とされています。二神の力くらべを相撲の始まりとする説や、出雲の勢力が大和に従った歴史を映しているという見方もありますが、はっきりしたことはわかっていません。

漫画版で変えたところ

原典に書かれているのは、出来事と短いセリフがほとんどです。神々の顔立ちや服装、浜辺の景色や天気は漫画で描き足したものです。また、天菩比が戻らなかった理由や気持ち、天若日子と下照比売の夫婦の日常、天佐具売の正体も原典には書かれていません。これらは漫画オリジナルの補いです。建御雷の無口な性格や力くらべの見せ方も漫画の演出ですが、手が氷から刃へ変わる順番は原典どおりにしています。漫画の「親友」は、原典では神産巣日神(カミムスヒ)に「兄弟となれ」と命じられた少名毘古那のことで、このくだりは冒頭に短くまとめています。国を手放すときの大国主の表情も、条件つきで承知した言葉しか原典にないため、漫画の解釈です。

漫画で読むには

文章で読むと登場人物が多くて複雑な国譲りも、漫画なら誰が何をしたのかがすっと頭に入ります。海に立てた剣の上に座る建御雷の姿は、ぜひ絵で見てほしい場面です。「古事記 ―神々の系譜―」は全話無料で、会員登録もいりません。第8話を読んだら、前後の話もあわせてどうぞ。

この話の登場人物

大国主神(おおくにぬしのかみ)
地上の国を作って治めていた神で、天の神々から国を譲るよう迫られ、立派な宮を建てることを条件に国を差し出す。
少名毘古那神(すくなびこなのかみ)
小さな舟で海から来た小さな神で、大国主と兄弟になって国を作るが、のちに常世国へ去る。
天照大御神(あまてらすおおみかみ)
高天原の中心となる神で、地上の国は自分の子が治めるべきだと宣言する。
天若日子(あめのわかひこ)
二番目の使者で、大国主の娘と結婚して八年戻らず、天から投げ返された矢に当たって死ぬ。
建御雷神(たけみかづちのかみ)
三番目の使者で、波の上に立てた剣の切先に座って国譲りを迫り、力くらべにも勝つ武の神。
建御名方神(たけみなかたのかみ)
大国主の息子で、建御雷に力くらべを挑むが負け、州羽の海まで追われて降参する。

よくある質問

国譲りとはどんな話?

『古事記』にある神話で、地上の国を治めていた大国主神が、天照大御神たち天の神々に国を差し出すまでの物語です。何人もの使者が失敗したあと、建御雷神が来て話をまとめました。

国譲りで、最初の使者たちはなぜ戻らなかったの?

原典によると、天菩比神は大国主にすり寄って三年報告せず、天若日子は大国主の娘と結婚して国を自分のものにしようとし、八年戻りませんでした。それ以上くわしい理由や気持ちは、原典には書かれていません。

オオクニヌシは国を譲るときに何を求めた?

地の底の岩に太い柱を立て、高天原に届くほど高くそびえる住まいを建ててほしいと求めました。この宮は出雲大社の始まりと考えられることが多いです。

タケミカヅチとタケミナカタの力くらべはどうなった?

建御名方が建御雷の手をつかむと、その手は氷の柱から剣の刃に変わりました。建御名方は手を握りつぶされて投げ飛ばされ、州羽(今の諏訪とされる)の海まで追われて降参します。

国譲りの舞台はどこ?

建御雷が降りたのは出雲国の伊耶佐の小浜で、今の島根県出雲市にある稲佐の浜のこととされています。大国主の宮が建てられたのは多芸志の小浜と書かれています。

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