第2話頭を3回叩かれた、本当の意味孫悟空の弟子入り(スボダイ祖師)
シリーズ第2話。仲間の死を見て〈終わり〉を恐れた猿の王は、海を渡って仙人スボダイ祖師に弟子入りし「ソン・ゴクウ」の名を授かる。頭を三度叩かれた謎を解いて死なない道を得るが、術を見せびらかして破門され、故郷を荒らす魔王に立ち向かう。
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シリーズ第2話。仲間の死を見て〈終わり〉を恐れた猿の王は、海を渡って仙人スボダイ祖師に弟子入りし「ソン・ゴクウ」の名を授かる。頭を三度叩かれた謎を解いて死なない道を得るが、術を見せびらかして破門され、故郷を荒らす魔王に立ち向かう。
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この話のもとになった神話
『西遊記』は明の時代に広まった長い小説です。今に残る古い版のひとつに、1592年に南京の世徳堂から出た本があります。漫画の第2話は、その第1回の後半から第2回にあたります。
花果山の猿の王・美猴王は、自分もいつか死ぬことを恐れ、年をとらず長く生きる方法を探しに旅に出ます。筏で海を渡ると、人の着物を奪って身につけ、人間の町で言葉や礼儀をまねながら何年もさまよいました。けれども人間はお金や名声を追ってばかりで、仙人は見つかりません。猴王はもう一度海を渡り、西牛賀洲の山で歌を歌う木こりに出会います。そして霊台方寸山・斜月三星洞に住む須菩提祖師のことを教わりました。
祖師は猿が来ることを前もって知っていました。親を聞かれた猿は「石から生まれた」と答えます。祖師は「猢猻(さる)」の字から獣へんを取った「孫」を姓として与えました。さらに、門下の弟子の世代を表す字「悟」を使い、「孫悟空」と名づけます。
悟空は掃除や薪割りをしながら、六、七年を過ごします。ある日、祖師がいろいろな術を教えようとしますが、悟空はそのたびに「それで長生きできますか」と聞きます。できないとわかると、すべて断りました。祖師は怒ったように台から下り、戒尺(細長い板)で悟空の頭を三度叩きます。それから手を後ろに組んで奥へ入り、中門を閉めてしまいました。
兄弟弟子たちは悟空を責めますが、本人は笑っています。三度叩いたのは「夜の三更(真夜中ごろ)に来い」、手を後ろに組んだのは「奥で待つ」、門を閉めたのは「裏から入れ」という合図だと見抜いていたのです。その夜、裏門から寝室へ行った悟空は、長生きの秘訣をひそかに授かりました。
三年後には災いをよけるための七十二の変化の術を、そのあと一回の宙返りで十万八千里を飛べる觔斗雲を身につけます。ところが仲間にせがまれて松の木に化けてみせ、大騒ぎになりました。祖師は「術を見せびらかすと、ねたまれて害される」と言って悟空を破門し、「わしの弟子だとは決して言うな」と厳しく命じます。故郷に帰ると、混世魔王が猿たちを苦しめていました。悟空は分身の猿を出して巨体の魔王を囲み、魔王の刀を奪って斬り、さらわれた仲間を連れ帰ります。
『西遊記』には、仏教・道教・儒教の考えがまじっています。須菩提という名前は、仏教の経典に出てくるお釈迦様の弟子と同じです。いっぽう、祖師が教える長生きの法は道教の修行を思わせます。「悟空」は「空(くう)を悟る」という、仏教らしい意味をもつ名前です。
山と洞窟の名前「霊台方寸」「斜月三星」は、どちらも「心」を表すなぞなぞだという説があります。斜めの月と三つの星を「心」という字の形に見立てるのです。そう読むと、悟空が本当に訪ねたのは自分の心の中だった、と考えることもできます。言葉ではなく身ぶりで問いかけ、その意味に気づいた者にだけ大事な教えを伝える場面は、師と弟子の問答を大切にする修行の考え方に近いともいわれます。
力を手に入れたとたんに見せびらかして破門される流れは、このあと悟空が大暴れすることの予告にもなっています。なお、作者は呉承恩とされることが多いものの、はっきりしないという説もあります。
原典の兄弟弟子は名前のない集団ですが、漫画ではひとりひとりに名前や見た目、性格をつけました。ただ、悟空を責める、觔斗雲を見て「配達係になれば食べていける」とからかう、変化を見せてとせがむ、といったせりふの中身は原典のとおりです。
三星洞の建物のつくり、祖師や木こりの細かな姿、修行の年月をまとめて見せる場面、謎を解いた瞬間の悟空の心の声、夜道を裏門へ忍んでいく場面は、漫画で加えた演出です。混世魔王の顔や手下のデザインも創作ですが、黒い甲冑と巨体は原典に合わせています。戦いも、名乗りとあざけり、素手の打ち合い、分身、刀を奪って斬るという原典の順番を守っています。
「頭を3回叩かれた」謎が解ける瞬間は、絵で見るといっそうわかりやすくなります。『西遊記 斉天大聖伝 ―石より生まれし猿―』は、Manga Portalで全話無料、会員登録なしで読めます。第2話で悟空の名前と力がどこから来たのかを知ってから、続きの物語も読んでみてください。
仙人の須菩提祖師です。「猢猻(さる)」の字から獣へんを取って「孫」の姓を与え、弟子の世代を表す字「悟」を使って「孫悟空」と名づけました。
祖師がこっそり出したなぞかけでした。三度叩いたのは「真夜中の三更に来い」、手を後ろに組んだのは「奥で待つ」、門を閉めたのは「裏門から入れ」という合図で、悟空はそれを解いて長生きの秘訣を授かりました。
西牛賀洲の霊台方寸山・斜月三星洞に住む仙人で、悟空の師です。名前は仏教の経典に出てくるお釈迦様の弟子と同じで、悟空が来ることを前もって見抜くほどの力を持っています。
兄弟弟子にせがまれ、みんなの前で松の木に化けて大騒ぎを起こしたからです。祖師は術をひけらかすと人にねたまれて害されると戒め、「わしの弟子だとは言うな」と命じて悟空を帰しました。
どちらも須菩提祖師のもとで覚えました。長生きの秘訣を得た三年後に災いをよけるための七十二変化を、そのあと一回の宙返りで十万八千里を飛べる觔斗雲を授かっています。