この話のもとになった物語
まんじゅうこわい あらすじとオチの意味|「お茶が怖い」はなぜ笑える? ひとことで言うと: 「まんじゅうこわい」は、「怖いものなんかない」と言う男が「実はまんじゅうが怖い」とうそをつき、仲間に山ほど持ってこさせて平らげてしまう古典落語です。だまされた仲間に本当に怖いものを問われると、「濃いお茶が一杯怖い」と答えて噺は終わります。大正時代の速記本には『饅頭ぎらひ』の題で残っています。
「まんじゅうこわい」のあらすじ 長屋に若い衆が集まり、それぞれの「怖いもの」を言い合っています。蛇だ、蜘蛛だ、蟻だと盛り上がるなか、一人だけ「怖いものなんかねえ」と鼻で笑う男がいます。漫画で松公と呼ばれるこの男は、仲間に詰め寄られると急に青い顔になり、「実は……まんじゅうが怖い」と打ち明けて、震えながら隣の部屋で寝込んでしまいます。
面白がった仲間は「あいつを懲らしめてやろう」と、お金を出し合ってまんじゅうを買い集め、寝ている松公の枕元に山と積みます。ところが襖のすき間からのぞくと、松公は「怖い、怖い」と叫びながら、一つ、また一つと口へ放り込んでいます。怖がるどころか、とうとう全部食べてしまいました。
だまされたと気づいた仲間が「お前が本当に怖いものは何だ!」と問いつめると、松公は満腹の顔でこう答えます。「ここらで濃いお茶が一杯怖い」。
落語とは? 扇子と手ぬぐいだけの話芸 落語は、一人の噺家が座ったまま、扇子と手ぬぐいだけを道具にして、登場人物全員を演じ分ける日本の話芸です。顔の向きと声を変えるだけで会話が生まれ、扇子や手ぬぐいは、しぐさ次第でいろいろな物に見えてきます。「寄席」と呼ばれる演芸場で、数百年にわたって続いてきました。話の最後を締めくくる一言を「オチ」または「サゲ」といいます。
原典は古い速記本『饅頭ぎらひ』 落語の多くは語り継がれてきたもので、この噺の作者もわかっていません。文字に残ったものとしては、三代目 蝶花楼馬楽(1914年没)の口演を記録した速記本があり、『袖珍落語集』(1913年)や『落語五人全集』(1925年)に『饅頭ぎらひ』の題で載っています。「ぎらひ」は「嫌い」の昔のかなづかいで、速記本とは噺家の語りを文字に起こした本のことです。
語り手や土地によって、噺の形は違います。関西に伝わる型には、途中に怪談めいた話が入る長いものもあります。また、中国の古い笑い話集に似た話があり、そこから伝わったという説もあります。怖いものの中身や最後の言い回しも、一つに決まっているわけではありません。
漫画版で足したところ この漫画は、上の速記本で筋を確かめたうえで、台本とセリフを自分たちで書いたものです。「まんじゅうが怖いと言う→山ほど持ってこられて平らげる→最後にお茶をねだる」という流れは、伝わってきた噺のとおりです。
一方で、次の部分は漫画のための創作です。まず、冒頭と結びに登場する噺家・笑門亭福来は、このシリーズの架空の語り手で、実在の人物ではありません。結びで手ぬぐいをまんじゅうに見立てて食べるしぐさも、漫画の締めとして入れました。松公という呼び名や仲間の顔ぶれも、漫画に合わせて整理しています。
絵の見せ場も足しました。怖いものを言い合う場面は、それぞれが怖がる姿を想像のコマで大げさに描いています。蒸し・焼き・栗・そばとまんじゅうの種類を並べるところ、襖のすき間に仲間の顔が重なるところ、震えながらほおばる松公の顔芸も、漫画ならではの演出です。
オチ(サゲ)の解説 笑いの仕掛けは二段になっています。一段目は「まんじゅうが怖い」がうそだったこと。松公は、仲間のいたずら心を利用して、大好物をただで手に入れたのです。
二段目が最後の一言です。日本には、甘い和菓子のあとに濃い緑茶を飲む習慣があります。まんじゅうを山ほど食べた口が次に欲しがるのは、渋いお茶というわけです。「ここらで」は「このへんで、そろそろ」という意味です。松公はもう「怖いと言えば持ってきてもらえる」と知っています。うそがばれたあとなのに同じ手を使い、本当に欲しいものを「怖い」と言ってねだる。このずうずうしさが笑いどころです。
なお、ここでいうまんじゅうは、小麦の皮であんこを包んだ甘い和菓子で、中国の肉まんとは違います。甘いお菓子だと知っていると、お茶の一言がぐっとわかりやすくなります。
漫画で読むには Manga Portal の『落語傑作集 ―笑いの十二席―』は全12話で、全話無料、会員登録なしで読めます。一話ごとに別の噺なので、どの話からでも楽しめます。第1話では、「怖い、怖い」と言いながら食べ続ける松公の顔と、のぞき見る仲間たちの表情の変化をぜひ絵で味わってください。筋を知ったあとに読み返すと、最初に青ざめる場面からもう笑えてくるはずです。
この話の登場人物 松公(まつこう) 「怖いものなんかない」と威張り、「まんじゅうが怖い」とうそをついて大好物をせしめる主役で、松公は漫画での呼び名です。 長屋の仲間たち(ながやのなかまたち) 怖いものを言い合う若い衆で、松公を懲らしめようとまんじゅうを買い集め、逆にだまされます。 笑門亭福来(しょうもんてい ふくらい) 漫画の冒頭と結びに登場する、このシリーズの架空の噺家です。
よくある質問 まんじゅうこわいのオチはどういう意味? 「怖いと言えば持ってきてもらえる」と知った男が、まんじゅうを食べたあとに本当に欲しくなった濃いお茶を「怖い」と言ってねだる、というオチです。うそがばれても同じ手を使うずうずうしさが笑いどころです。
なぜ「まんじゅうが怖い」と言ったの? 本当は大好物だからです。怖いと言えば、仲間がいたずらで持ってきてくれると見込んだ作戦でした。
まんじゅうこわいの原典や作者は? 作者はわかっていません。古い記録として、三代目 蝶花楼馬楽の口演を記した大正時代の速記本があり、『饅頭ぎらひ』の題で載っています。中国の古い笑い話に似た話があり、そこから伝わったという説もあります。
この噺のまんじゅうは肉まんのこと? 違います。小麦の皮であんこを包んだ甘い和菓子です。甘いものを食べたあとだからこそ、濃いお茶が欲しくなるというオチにつながります。
漫画に出てくる噺家の笑門亭福来は実在の人? 実在しません。このシリーズのために作った架空の語り手です。
漫画を最初から読む(無料)