この話のもとになった物語
ほら吹き男爵 銀の斧と月のあらすじ|豆の蔓で月へ行く話
ひとことで言うと: ほら吹き男爵の「銀の斧と月」は、トルコの捕虜となってスルタンの蜂番をしていた男爵が、熊に投げた銀の斧を月まで飛ばし、豆の蔓を登って取り戻しに行く話です。帰りは藁の綱が切れて墜落しますが、爪で穴を掘って生還します。ルドルフ・エーリヒ・ラスペ『ほら吹き男爵の冒険』(1785年の英語版)にある一編です。
元の話のあらすじ① 捕虜の蜂番、斧を月まで飛ばす
ミュンヒハウゼン男爵は、トルコ軍との戦いで大勢の敵に押し切られて捕虜になり、奴隷として売られてしまいます。与えられた仕事は、スルタン(トルコの君主)の蜂の世話でした。毎朝、家畜のように蜂を牧場へ追っていき、一日じゅう見張り、夜になると巣へ連れ戻します。きつくはないものの、奇妙で退屈な役目です。
ある夕方、男爵は蜂が1匹足りないことに気づきます。見ると、2頭の熊が蜜を狙ってその蜂に襲いかかっていました。手元にある武器は、スルタンの庭師や農夫の印である銀の斧だけ。男爵は熊を脅して蜂を逃がそうと斧を投げますが、腕の振りを誤り、斧は上へ上へと飛んで、とうとう月まで届いてしまいます。
普通ならあきらめるところですが、男爵はトルコ豆が早く高く育つことを思い出し、1粒植えます。豆はたちまち伸びて、月の角の一つに絡みつきました。
元の話のあらすじ② 月での斧探しと、命がけの帰り道
蔓を登って無事に月へ着いた男爵を困らせたのは、何もかもが銀のように輝いていることでした。銀の斧はなかなか見つからず、苦労の末に、もみ殻と刻み藁の山の中で発見します。
ところが帰ろうとすると、豆の蔓は太陽の熱で枯れていました。そこで刻み藁をより合わせて、できるだけ長く丈夫な綱を作り、月の角に結んで端まで滑り降ります。ここからが男爵らしい理屈です。左手で綱につかまったまま、右手の斧で頭上の余った部分を切り、それを足もとの端に結び足す。これを繰り返して降りていくのです。
継ぎ足しで傷んだ綱は、地上まであと数マイルのところで切れてしまいます。男爵は地面にたたきつけられて気を失い、気がつくと、自分の重みで開いた深さ九尋(ひとひろは両手を広げた長さほど)もの穴の中にいました。それでも爪で足がかりを掘り、たやすく地上へ出ます。このあとトルコと和平が結ばれ、男爵は自由の身となって帰国の旅に出ます。
この話の読みどころと時代背景
原典はラスペが1785年に英語で出した本で、ゴットフリート・アウグスト・ビュルガーのドイツ語版(1786年、1788年に増補)も古典として知られています。主人公のモデルは、ロシア軍に仕えてトルコとの戦争に加わった18世紀の実在のドイツ貴族とされます。この話も、軍人の体験談という形で語られます。
面白さの中心は、教訓よりも語り口にあります。月まで行く理由は、斧1本を取り戻すためだけ。小さな目的に対して手段があまりに大げさです。綱の継ぎ足しも、もっともらしく聞こえますが、実際にはありえません。そんな話を事実のように平然と語るところに笑いが生まれます。奴隷に売られても嘆くより工夫で動く男爵の姿に、ほら話ならではの痛快さを感じる読み方もできるでしょう。
版によって違うところ
この話は英語版の章立てで第6章にあたりますが、章番号や区切りは版によって異なることがあります。綱が切れた地点の距離など、細かな数字も版で違う可能性があります。また英語版の章の見出しでは、斧が「跳ね返って」月へ飛ぶとされ、本文の説明と差があるとも見られます。
爪は40年伸ばしたものだったという補足や、馬車の轅(ながえ)に蜂蜜を塗って熊をおびき寄せ、月夜に通りかかったスルタンが笑い転げるという続きも、版によって語られるとされます。どの版にあるかをここでは確かめられていないため、上のあらすじには入れていません。
漫画版で変えたところ
捕虜の男爵が蜂の番をすること、銀の斧が月まで飛ぶこと、豆で取りに行くことは原典にある話です。一方、語りの枠と聞き手、庭師頭と点呼の期限、スルタンの登場は漫画の脚色です。原典の主筋ではスルタンはほぼ名前が出るだけで、男爵と向き合う場面も宮廷の様子も語られません。
真顔で答える「では豆を植えましょう」という台詞も、漫画ならではの見せ場です。原典での男爵は、豆のことを自分で思い出して植えます。男爵の見た目や表情、蜂番の日常、空や月面の見せ方も、原典に詳しい記述がないため、漫画の表現として楽しんでください。
漫画で読むには
この話は、Manga Portal の『ほら吹き男爵の冒険 ―十四夜の大ぼら―』第5話「月まで飛んだ斧を、豆で取りに行く」で読めます。全話無料で、会員登録もいりません。原典の筋を知ったうえで読むと、どこが元の話でどこが漫画の工夫なのかを見比べる楽しみも増えます。気になったら、このページの漫画や前後の話ものぞいてみてください。
この話の登場人物
- ミュンヒハウゼン男爵(ミュンヒハウゼンだんしゃく)
- 語り手の「私」で主人公の軍人。捕虜になっても工夫で動き、銀の斧を取り戻すためだけに月まで行く話を平然と語ります。
- スルタン(スルタン)
- 男爵の主人で、蜂と農園の持ち主。原典の主筋ではほぼ名前が出るだけで、漫画で直接登場するのは脚色です。
- スルタンの蜂(スルタンのはち)
- 男爵が毎日世話をする群れ。蜜を運んでいた1匹が熊に襲われ、騒動の発端になります。
- 2頭の熊(にとうのくま)
- 蜜を狙って蜂に襲いかかる相手。男爵に「強盗」と呼ばれ、斧を投げられるきっかけを作ります。
よくある質問
ほら吹き男爵の銀の斧の話とは、どんな話?
捕虜として蜂番をしていた男爵が、熊に投げた銀の斧を月まで飛ばしてしまう話です。男爵は豆の蔓を登って斧を取り戻し、藁の綱で地上へ戻ろうとします。
ほら吹き男爵はどうやって月へ行ったの?
早く高く育つトルコ豆を1粒植え、月の角に絡みついた蔓を登って行きました。帰るころには蔓が太陽の熱で枯れていたため、刻み藁で綱を作って降ります。
ほら吹き男爵は月からどうやって帰ったの?
藁の綱の上の余りを斧で切り、下の端に結び足しながら降りました。地上まで数マイルのところで綱が切れて墜落し、深い穴にめり込みますが、爪で足がかりを掘って地上へ出ます。
『ほら吹き男爵の冒険』の作者は誰?
ルドルフ・エーリヒ・ラスペが1785年に英語で出した本が原典とされます。ゴットフリート・アウグスト・ビュルガーのドイツ語版(1786年、1788年に増補)も古典として知られています。
「ジャックと豆の木」と関係はある?
豆の蔓を登って空の上へ行く点はよく似ています。ただし、二つの話につながりがあるかどうかは、ここでは確かめられていません。
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