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第1話誰も抜けない剣を、兄だけが抜いたシグムンドの剣(ヴォルスンガ・サガ)

妹シグニューの婚礼の夜、片目の老人が館の大樹に剣を突き立てて消える。誰も抜けない剣を兄シグムンドだけがあっさり抜き、花婿の王が出す黄金も笑って断る。だがその勝利が、妹を災いへ送り出す始まりになる。

19ページ全話無料・会員登録なし

ひとことで言うと: 「シグムンドの剣」は、妹シグニューの婚礼の夜に片目の老人が館の大木へ突き刺した剣を、兄シグムンドただ一人が抜き、花婿のシゲイル王が出す黄金も断る話です。この断りがシゲイルの恨みを生み、のちの悲劇の始まりになります。13世紀のアイスランドで書かれた『ヴォルスンガ・サガ』第1〜3章の物語です。

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次回予告第2話 森の足かせと雌狼

毎晩一人ずつ消える兄弟――生き残る方法は『蜂蜜』だった

この作品はここまで。次はこちらもどうぞ

この話のあらすじ

物語はシグムンドの曾祖父のさらに父、シギから始まります。オーディンの息子とされるシギは、奴隷のブレジと狩りに出て、獲物の数で負けてしまいます。悔しさからブレジを殺し、死体を雪の吹きだまりに隠しますが、罪は見つかり、無法者として国を追われました。それでもオーディンに導かれて軍船を手に入れ、戦いを重ねてフーナランドの王になります。しかし年老いてから妻の兄弟たちに裏切られて殺され、息子のレリルが仇を討ちました。 レリル夫妻には子どもができませんでした。祈りを聞いた女神フリッグの願いを受けて、オーディンは巨人フリームニルの娘を鳥の姿で送り、塚に座るレリルの膝にリンゴを落とさせます。

原典ヴォルスンガ・サガ — 北欧(アイスランド) · 13世紀後半

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この話のもとになった神話

ヴォルスンガ・サガ あらすじ|シグムンドの剣と片目の老人

元の神話のあらすじ(第1〜3章)

物語はシグムンドの曾祖父のさらに父、シギから始まります。オーディンの息子とされるシギは、奴隷のブレジと狩りに出て、獲物の数で負けてしまいます。悔しさからブレジを殺し、死体を雪の吹きだまりに隠しますが、罪は見つかり、無法者として国を追われました。それでもオーディンに導かれて軍船を手に入れ、戦いを重ねてフーナランドの王になります。しかし年老いてから妻の兄弟たちに裏切られて殺され、息子のレリルが仇を討ちました。

レリル夫妻には子どもができませんでした。祈りを聞いた女神フリッグの願いを受けて、オーディンは巨人フリームニルの娘を鳥の姿で送り、塚に座るレリルの膝にリンゴを落とさせます。それを食べた妃は身ごもりますが、6年たっても子は生まれません。レリルは遠征先で病に倒れ、妃は自分の命と引きかえに子を取り出させました。生まれた子はすでに大きく、母に口づけをし、そのあと母は息を引き取ります。この子がヴォルスングです。

王となったヴォルスングは、リンゴを運んだ娘フリョーズを妃に迎え、10人の息子と1人の娘をもうけます。長子は双子のシグムンドとシグニュー。館の真ん中には大木バルンストックが立ち、枝は屋根の上まで広がっていました。

ガウトランドのシゲイル王がシグニューを妃に望み、シグニューは気が進まないまま判断を父に任せて、婚約が決まります。婚礼の宴の夜、背の高い片目の老人がつば広の帽子に裸足という姿で現れ、剣をバルンストックに柄まで突き刺して「抜いた者に授ける」と言い残し、消えました。身分の高い者から順に試しても誰も抜けない中、シグムンドだけがすっと抜きます。シゲイルは剣の重さの3倍の黄金で買おうとしますが、シグムンドは「ふさわしいならあなたにも抜けたはずだ」と断りました。シゲイルは怒りを顔に出さず、仕返しを心に決めます。翌日、シグニューは父にこの結婚から不幸が生まれると訴えますが、父は約束を破るのは恥だとして聞き入れませんでした(一般的な章分けでは第4章の冒頭)。

この神話が伝えていること(文化・時代の背景)

『ヴォルスンガ・サガ』は、13世紀後半ごろのアイスランドで、作者不明のまま古ノルド語で書かれた物語です。もっと古い英雄の歌をもとにまとめたものと考えられ、ドイツの『ニーベルンゲンの歌』や、ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』と同じ伝説の流れにあります。

片目の老人の名前は、原典には出てきません。ただ、片目で帽子をかぶった旅人の姿は北欧神話の主神オーディンによく見られる特徴なので、オーディンだと読むのが一般的です。神が一族の始まりから見守り、贈り物を与えるという流れが、この一族の特別さを示しています。

名誉を守ることや約束を破らないことが何より大事とされた社会の考え方も、はっきり表れています。誇り高く断ったシグムンドと、娘の訴えより約束を選んだヴォルスング。正しいはずの選択が、次の悲劇につながっていきます。

漫画版で変えたところ

漫画では、冒頭の一族の由来をナレーションで短くまとめ、殺人や出産の場面はやわらかい表現にしています。バルンストックの見た目や館の作り、宴の明かり、人物の顔や服、年齢の見た目は、原典にくわしく書かれていないため漫画の創作です。

老人の片目と帽子は大きく描いてオーディンらしさを伝えていますが、原典と同じく名前ははっきり出していません。シグムンドが笑って黄金を断る口調、シゲイルの表情、剣を試す人たちの反応も漫画の脚色です。一方、シグニューが「行きたくない」「不幸が起きる」と訴える中身は、原典どおりにしています。

漫画で読むには

この剣は、のちにシグムンドの息子シグルズへ受け継がれ、竜退治と呪いの黄金の物語へつながっていきます。Manga Portalの「北欧神話 ヴォルスンガ・サガ ―竜殺しシグルズと呪いの黄金―」は全話無料、会員登録なしで読めます。第1話で大木から剣が抜ける場面を絵で見てから続きを読むと、一族の運命がぐっとわかりやすくなります。

この話の登場人物

シグムンド(Sigmundr)
ヴォルスングの長男で、兄弟の中でいちばん優れた若者。誰も抜けなかった剣をただ一人抜く。
シグニュー(Signý)
シグムンドの双子のきょうだい。美しく、先を見る力を持ち、シゲイルとの結婚が不幸を呼ぶと気づいている。
ヴォルスング(Völsungr)
フーナランドの王で、一族の名前のもとになった人物。母の胎内に6年いて生まれ、約束と名誉を重んじる。
シゲイル(Siggeirr)
ガウトランドの王で、シグニューの花婿。剣を黄金で買おうとして断られ、怒りを隠して仕返しをたくらむ。
片目の老人
婚礼の宴に現れ、剣を大木に突き刺して去る見知らぬ男。原典は名前を出さないが、オーディンと読まれることが多い。
シギ(Sigi)
オーディンの息子とされる一族の始祖。罪を犯して追放されたあと、王になる。

よくある質問

ヴォルスンガ・サガとはどんな物語?

13世紀後半ごろのアイスランドで書かれた、ヴォルスング一族の何代にもわたる物語です。一族の始まりから、竜殺しの英雄シグルズと呪われた黄金の悲劇までが描かれます。作者はわかっていません。

シグムンドの剣を突き刺した片目の老人は誰?

原典は名前を出していません。ただ、片目でつば広の帽子をかぶった姿はオーディンの特徴なので、オーディンだと考えるのが一般的です。

シグムンドが抜いた剣はその後どうなる?

物語の後半で剣は折れてしまい、その破片はシグムンドの息子シグルズのために鍛え直されます。この剣がグラムと呼ばれ、竜ファーヴニル退治に使われます。

シグムンドとシグルズの関係は?

シグムンドはシグルズの父です。第1話のシグムンドの物語は、のちのシグルズの竜退治へとつながる一族の物語の始まりにあたります。

木に刺さった剣の話はアーサー王の伝説と関係がある?

「選ばれた者だけが剣を抜ける」という点が似ているため、よく比べられます。ただし、二つの話が直接つながっているかどうかははっきりしていません。

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