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第5話「夫は大蛇よ」その夜、灯りを手にエロスとプシュケ(キューピッドとプシュケ)

シリーズ第5話。身ごもったプシュケは、二度目に訪ねてきた姉たちに夫の秘密を守ろうとするが、うっかり前と違う話をしてしまう。嫉妬した姉たちに「夫は怪物よ」と吹きこまれたプシュケは、眠る夫の隣で震える指を灯りへ伸ばす――。

19ページ全話無料・会員登録なし

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次回予告 · 制作中第6話 灯りの夜 ―一滴の油―

見てはいけないと言われた顔を、彼女は見てしまった。そこにいたのは――愛の神だった。

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この話のあらすじ

プシュケは、谷の奥にある宮殿で、夜にだけやって来る夫と暮らしています。夫は顔を見せず、「姉たちの言うことに乗ってはいけない。わたしの顔を見ようとしてはいけない」とくり返し注意していました。プシュケは身ごもっており、秘密を守れば子は神に、漏らせば人の子になると告げられています。それでも姉たちに会いたいと頼みこみ、夫は折れて、西風ゼピュロスに姉たちを崖の上から宮殿へ運ばせます。 夫のことを聞かれたプシュケは、前に話した「狩りをする若者」という作り話を忘れ、「隣の国の大商人で、中年、髪に白いものがまじっている」と答えてしまいます。あわてて話を切り上げ、贈り物を持たせて姉たちを帰しました。

原典エロスとプシュケ ―見てはならない夫― — ローマ · 2世紀後半(170年ごろ。北アフリカ出身のローマ帝国の作家アプレイウスの小説『変身物語(黄金のろば)』全11巻のうち、第4巻28節〜第6巻24節に挿入された物語)。物語の舞台は神話の時代のギリシャ・小アジアの王国

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この話のもとになった神話

エロスとプシュケのあらすじ|姉たちの嘘「夫は大蛇」と灯りの夜

ひとことで言うと: エロスとプシュケ(キューピッドとプシュケ)は、顔を見てはいけない夫と暮らす娘プシュケが、嫉妬した姉たちに「夫は人を食う大蛇だ」と吹きこまれ、眠る夫の正体を灯りで確かめようとする物語です。出典は、2世紀のローマの作家アプレイウスがラテン語で書いた『黄金のろば(変身物語)』の中の挿話です。

元の神話のあらすじ(姉たちの二度目の訪問から灯りの夜まで)

プシュケは、谷の奥にある宮殿で、夜にだけやって来る夫と暮らしています。夫は顔を見せず、「姉たちの言うことに乗ってはいけない。わたしの顔を見ようとしてはいけない」とくり返し注意していました。プシュケは身ごもっており、秘密を守れば子は神に、漏らせば人の子になると告げられています。それでも姉たちに会いたいと頼みこみ、夫は折れて、西風ゼピュロスに姉たちを崖の上から宮殿へ運ばせます。

夫のことを聞かれたプシュケは、前に話した「狩りをする若者」という作り話を忘れ、「隣の国の大商人で、中年、髪に白いものがまじっている」と答えてしまいます。あわてて話を切り上げ、贈り物を持たせて姉たちを帰しました。

帰り道、姉たちは話の食い違いに気づきます。「嘘をついているか、夫の顔を知らないかのどちらかだ。どちらにしても夫は神で、生まれる子も神になる」。嫉妬にかられた二人は、親にも本当のことを言わず、眠れない夜を過ごして企みを練りました。

夜明け、姉たちはまた宮殿へ下ろしてもらい、涙を浮かべて心配するふりをします。「お前の夫は、神託が言ったとおりの恐ろしい大蛇だ。夕方に川を泳ぎ渡る姿を、農夫や狩人が見ている。お腹の子が育ったら、お前を食べるつもりだ」。おびえたプシュケは、夫の顔を一度も見たことがないと打ち明けてしまいます。姉たちは「鋭い剃刀と、油を満たした灯りを隠しておき、夫が眠ったら首を断ちなさい」と教え、すぐに立ち去りました。ひとり残されたプシュケは、急いではためらい、勇んではおびえ、同じ相手の中の獣を憎みながら夫を愛して揺れ続けます。やがて夜になり、夫が来て眠りにつきました。

主な登場人物

主人公のプシュケは、人間の王の三人姉妹の末娘で、女神ウェヌス(ギリシアのアフロディテ)と比べられるほど美しい娘です。素直で姉たちを慕っていますが、前についた嘘を忘れてしまう、うかつで正直なところもあります。

夫の正体は、ウェヌスの息子である愛の神クピド(ラテン語ではアモルとも呼ばれ、ギリシアではエロス、英語ではキューピッド)です。ただし、この場面ではまだ名乗っておらず、プシュケも正体を知りません。二人の姉は原典に名前がなく、どちらもほかの国の王に嫁いでいますが、自分の結婚に不満を抱え、妹の幸せを妬んでいます。

この神話が伝えていること(文化・時代の背景)

『黄金のろば』は、ろばに変えられた男ルキウスの冒険を描く長い物語で、「クピドとプシュケ」はその途中で、盗賊にさらわれた娘に老婆が語って聞かせる話として出てきます。古代ローマの読者は、ギリシア神話の神々を自分たちの名前で呼びながら楽しんでいました。

プシュケという名前は、ギリシア語で「たましい・こころ」を意味します。そのため、この物語を「人のこころが、愛を疑い、試練をへて、愛と結ばれる話」と読む説もあります。「見てはいけない」と言われたものを見てしまう、という形は世界の昔話によく見られ、日本の『古事記』でイザナギが黄泉の国でイザナミの姿を見てしまう話と比べられることもあります。

漫画版で変えたところ・足したところ

出来事の流れは原典に沿っていますが、絵にするために足した部分があります。姉たちの顔立ちや年齢差、服装、宮殿の内装、谷や崖の景色は漫画の創作です。姉たちが帰り道で企む会話の細かい言い回しや、灯りと剃刀を隠す場所(原典は「器の下などに」としか書いていません)も、漫画で形にしたものです。

プシュケが一人で揺れる場面は、原典では短い対比の言葉で書かれているだけなので、漫画では独白やコマ割りで広げています。迷う理由も、単なる好奇心より「子と自分を守りたい怖れ」と「愛する人を自分の目で知りたい気持ち」に寄せて描きました。また、眠る夫は影や寝息、手だけで表し、剃刀は手に持つだけで、刃を夫に向ける構図にはしていません。

漫画で読むには

第5話は、姉たちの偽りの涙と、震える指が灯りへ伸びる夜の緊張を、漫画ならではの間で描いています。灯りがともったとき、プシュケは何を見るのか――続きは次の話で描かれます。Manga Portal の「エロスとプシュケ ―見てはならない夫―」は全話無料・会員登録なしで読めるので、第1話から通して読むと、プシュケの迷いがいっそう胸にせまるはずです。

この話の登場人物

プシュケ(ぷしゅけ)
人間の王の末娘で、顔を見せない夫と谷の宮殿に暮らし、姉たちの言葉に心を揺さぶられる主人公。
エロス/クピド(えろす/くぴど)
夜にだけ来るプシュケの夫で、正体は女神ウェヌスの息子の愛の神(英語名キューピッド)。
上の姉(うえのあね)
妹の幸せを妬み、話の食い違いから夫が神だと見抜いて「夫は大蛇」と吹きこむ姉。
下の姉(したのあね)
上の姉と組んで、妹に剃刀と灯りで夫を討つ手順を教える姉。
ゼピュロス(ぜぴゅろす)
夫の命令で、姉たちを崖の上から谷の宮殿へ運び下ろす西風。

よくある質問

エロスとプシュケはどんな話?

顔を見てはいけない夫と暮らす娘プシュケが、約束を破って夫の正体を見てしまい、夫を失います。そのあと女神ウェヌスの試練を乗り越え、最後は夫と再び結ばれる愛の物語です。

エロスとプシュケの原典は何?

2世紀のローマの作家アプレイウスがラテン語で書いた『黄金のろば(変身物語)』の第4巻から第6巻にある挿話です。英語では「キューピッドとプシュケ」として知られています。

プシュケの姉たちはなぜ「夫は大蛇」と言ったの?

妹の夫が神で、生まれる子も神になると気づき、嫉妬したからです。もともと神託で「恐ろしい怪物に嫁ぐ」と告げられていたことを利用して、妹を怖がらせました。

プシュケが夫の話で嘘をばれそうになったのはなぜ?

前の訪問では夫を「狩りをする若者」と言っていたのに、二度目には「中年の商人」と答えてしまったからです。夫の顔を本当は知らないため、話がそろわなかったのです。

エロスとキューピッドは同じ神?

はい、同じ愛の神を指します。ギリシア神話ではエロス、ラテン語ではクピドやアモルと呼ばれ、英語のキューピッドはクピドから来た名前です。

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