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第1話歌をやめたら、神々が消えるヘシオドスとムーサ ―神統記のはじまり―

シリーズ第1話。霧の夜、はぐれた子羊を追う腹ぺこの羊飼いヘシオドスは、「腹しかない」と笑う歌の女神ムーサたちから、嘘か真か分からない歌の声を授かる。喉からあふれる歌は一本の裂け目から始まる世界の誕生を描く。やめれば子らが消え、続ければその先の惨事まで歌うことになる。それを知りながら、彼は父をにらむ末の子クロノスの目まで歌いきる。

19ページ全話無料・会員登録なし

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続けて読む第2話「誰か」と母は鎌を差し出したクロノスとウラノス第2話を読む

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この話のあらすじ

『神統記』は、古代ギリシャの詩人ヘシオドスが、神々がどのように生まれ、だれが世界の王になったのかを歌った長い詩です。その冒頭で、作者自身が登場します。 ヘシオドスがギリシャ中部の聖なる山ヘリコンのふもとで羊の番をしていると、ゼウスの娘である歌の女神ムーサたちが現れます。女神たちは野で暮らす羊飼いを「食べることしか頭にない、なさけない者たち」とからかい、さらに「わたしたちは本当によく似たうそをいくらでも語れるし、その気になれば本当のことも歌える」と言い放ちます。 そして花の咲いた月桂樹の枝を折って杖としてヘシオドスに渡し、過去とこれからのことを歌える神の声を吹き込みます。

原典神統記 — ギリシャ · 紀元前700年頃

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この話のもとになった神話

神統記のあらすじ|ヘシオドスとムーサ、カオスからクロノス誕生まで

ひとことで言うと: 『神統記』のはじまりは、羊飼いのヘシオドスが歌の女神ムーサたちから神の声を授かり、世界と神々の誕生を歌いはじめる物語です。最初に「カオス(裂け目)」が生じ、大地ガイア、天ウラノス、ティタンたちが次々に生まれ、最後に父を憎む末っ子クロノスが登場します。出典は古代ギリシャの詩人ヘシオドスの『神統記』(前700年ごろ)です。

元の神話のあらすじ① 羊飼いヘシオドスとムーサの出会い

『神統記』は、古代ギリシャの詩人ヘシオドスが、神々がどのように生まれ、だれが世界の王になったのかを歌った長い詩です。その冒頭で、作者自身が登場します。

ヘシオドスがギリシャ中部の聖なる山ヘリコンのふもとで羊の番をしていると、ゼウスの娘である歌の女神ムーサたちが現れます。女神たちは野で暮らす羊飼いを「食べることしか頭にない、なさけない者たち」とからかい、さらに「わたしたちは本当によく似たうそをいくらでも語れるし、その気になれば本当のことも歌える」と言い放ちます。

そして花の咲いた月桂樹の枝を折って杖としてヘシオドスに渡し、過去とこれからのことを歌える神の声を吹き込みます。女神たちが命じたのは、不死の神々の一族を歌うこと。ここから世界のはじまりの歌が始まります。

元の神話のあらすじ② カオスからクロノスの誕生まで

いちばん最初に生じたのはカオスです。続いて、神々のゆるがない住まいとなる広い大地ガイア、大地の奥深くにある暗いタルタロス、そして神も人も心を奪われてしまう、最も美しい神エロスが生まれました。

カオスからは暗闇エレボスと夜ニュクスが生まれ、その夜と暗闇から、上空の輝きアイテールと昼ヘーメラーが生まれます。暗さから光が生まれる、という順番がおもしろいところです。

ガイアは自分と同じ大きさの星空ウラノスを生み、自分をすっぽり覆わせました。さらに山々と海ポントスを生み、そのあとウラノスとの間にオケアノスやレア、テミスたちティタンを産みます。最後に生まれた末っ子がクロノス。悪だくみにたけ、子どもたちの中でいちばん恐ろしく、父ウラノスを憎んでいました。この憎しみが、次の大事件へとつながっていきます。

主な登場人物

語り手のヘシオドスは、ムーサから歌の力を授かった羊飼いの詩人です。原典には年齢や見た目は書かれていません。ムーサたちはゼウスと記憶の女神ムネモシュネの娘で、九人の姉妹とされます。

カオス、ガイア、ウラノスなどは、人の姿をした神というより「世界そのもの」として語られる存在です。ティタンたちはこのあと神々の王座をめぐる争いの中心になり、とくにクロノスはシリーズ全体の大切な鍵をにぎります。

この神話が伝えていること(文化・時代の背景)

当時のギリシャでは、詩は文字で読むより、声に出して歌い聞かせるものでした。詩人は「自分の力ではなく、ムーサが歌わせてくれる」と考えられていて、詩の最初に女神へ呼びかけるのはそのためです。

ムーサが「うそも本当も語れる」と言う場面は、物語の力と危うさを語ったものとして、昔からさまざまに読まれてきました。詩人の自信を示しているという説もあれば、ほかの詩人の歌との違いを示しているという説もあります。また、世界のはじまりを家族の系図のように語るやり方は、神々の順番や役割を整理して伝える知恵でもありました。

漫画版で変えたところ

漫画では、ヘシオドスを腹ぺこの若者として描き、はぐれた子羊を追う霧の夜にムーサと出会うという場面を作っています。年齢や性格、子羊を追う流れ、ムーサ一人ひとりの外見やセリフの分担は漫画の創作です(ムーサが夜に霧に包まれて歩くという描写は原典にあります)。

「歌をやめたら子らが消え、続ければその先の惨事まで歌うことになる」という葛藤や、最後にクロノスがこちらをにらむ演出も漫画のオリジナルです。カオスやガイアとウラノスの姿も、原典に描写がほとんどないため、裂け目や星空のドームなどの絵で表しています。一方、生まれる順番や神々の名前は原典に沿っています。

漫画で読むには

文字だけだと名前が多くて迷いやすい『神統記』も、漫画なら「だれから、だれが生まれたか」が絵でひと目でわかります。Manga Portal の「ギリシャ神話 ―天の王座をめぐる三代―」は、全話無料・会員登録なしで読めます。第1話でクロノスが誕生したあと、物語はウラノス、クロノス、ゼウスと三代の王座争いへ進みます。気になった方は、ぜひ続けて読んでみてください。

この話の登場人物

ヘシオドス(へしおどす)
ヘリコン山のふもとで羊の番をしていた詩人で、ムーサから歌の力を授かり、神々の誕生を歌う語り手。
ムーサ(むーさ)
ゼウスと記憶の女神ムネモシュネの娘たちで、詩人に歌を授ける九人の歌の女神。
カオス(かおす)
世界でいちばん最初に生じた存在で、名前は「ぽっかり開いた裂け目」という意味。
ガイア(がいあ)
広い大地そのものの女神で、天ウラノス・山々・海、そしてティタンたちの母。
ウラノス(うらのす)
ガイアが生んだ星空の神で、大地を覆い、ガイアとの間にティタンたちをもうけた父。
クロノス(くろのす)
ティタンの末っ子で、悪だくみにたけ、父ウラノスを憎んでいた次の時代の主役。

よくある質問

『神統記』とはどんな作品?

古代ギリシャの詩人ヘシオドスが前700年ごろに作ったとされる詩で、世界のはじまりと神々の家系、ゼウスが王になるまでを歌っています。ギリシャ神話の神々の関係を知るための、最も古い資料のひとつです。

ギリシャ神話で最初に生まれた神はだれ?

『神統記』では、いちばん最初に生じたのはカオスです。そのあとに大地ガイア、タルタロス、エロスが続きます。

カオスは「混沌」という意味?

今は「混沌」の意味で使われますが、『神統記』でのカオスは「裂け目」「ぽっかり開いたすき間」に近い意味とされます。ごちゃごちゃした状態というより、何もない空間のイメージです。

ムーサとはどんな女神?

ゼウスと記憶の女神ムネモシュネの娘で、歌や詩などをつかさどる九人の女神です。英語の「ミュージック(音楽)」や「ミュージアム(博物館)」の語源になったことでも知られています。

クロノスはなぜ父ウラノスを憎んでいたの?

『神統記』の第1話にあたる範囲では、クロノスが父を憎んでいたことだけが語られます。このあと、ウラノスが子どもたちを大地の奥に押し込めたことから、ガイアとクロノスが父に立ち向かう話へと続きます。

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