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第5話飲み干した顔が、訪ねてくる茶碗の中

怪談傑作集・第5話。正月の茶屋で、茶碗のお茶に知らない若侍の顔が映った。短気な若い侍は「人の茶に勝手に入るな」とその顔ごと飲み干すが、その夜から、ていねいすぎる「お返し」の予告が届きはじめる――そしてこの話には、結末がない。

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次回予告 · 制作中第6話 第六席 青柳

雪の山で出会った妻は、5年後の朝に言った。「誰かが、私の木を切っている」

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この話のあらすじ

時は天和三年(1683年ごろ)の正月四日。中川佐渡守という武士が年始の挨拶に向かう途中、江戸の本郷・白山にある茶屋で家来たちと一休みします。 お供の若党・関内が茶碗をのぞくと、お茶に自分ではない若く美しい侍の顔が映っていました。振り返っても誰もいません。茶を捨てて茶碗を調べても、ふつうの茶碗です。ところがお茶を入れ直すと、顔はまた現れ、今度はばかにしたように笑っていました。関内は「何者だろうと、もう惑わされない」と、顔ごとお茶を飲み干してしまいます。 その夜、屋敷で宿直をしていた関内の部屋に、あの若侍が音もなく入ってきます。

原典怪談傑作集 ―百物語の夜― — 日本 · 話は江戸時代〜明治の伝承。根拠にする原典の刊行は、ハーンの英語版が1902年(Kottō)・1904年(Kwaidan)、円朝の速記本が1884年(怪談牡丹燈籠)・1888年(真景累ケ淵)

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この話のもとになった神話

小泉八雲「茶碗の中」のあらすじ|結末がない怪談とは

ひとことで言うと: 「茶碗の中」は、茶碗のお茶に映った見知らぬ若侍の顔を、若党の関内が顔ごと飲み干してしまい、その夜から若侍とその家来が訪ねてくる怪談です。仕返しの予告が届いたところで話はぷつりと途切れ、結末は読者にまかされます。原典は、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の『骨董(Kottō)』(1902年)に入っている「In a Cup of Tea」です。

「茶碗の中」のあらすじ(原典)

時は天和三年(1683年ごろ)の正月四日。中川佐渡守という武士が年始の挨拶に向かう途中、江戸の本郷・白山にある茶屋で家来たちと一休みします。

お供の若党・関内が茶碗をのぞくと、お茶に自分ではない若く美しい侍の顔が映っていました。振り返っても誰もいません。茶を捨てて茶碗を調べても、ふつうの茶碗です。ところがお茶を入れ直すと、顔はまた現れ、今度はばかにしたように笑っていました。関内は「何者だろうと、もう惑わされない」と、顔ごとお茶を飲み干してしまいます。

その夜、屋敷で宿直をしていた関内の部屋に、あの若侍が音もなく入ってきます。式部平内と名乗り、昼間に会ったばかりなのに、ひどい目にあわされたと恨みを言います。関内が化け物だと思って斬りつけると、平内は壁の中へ消え、何の跡も残りません。屋敷の誰も、そんな客を通した覚えはなく、その名を聞いたこともありませんでした。

翌晩、家にいた関内のもとへ、平内の家来だという侍が3人やって来ます。「主人は斬られた傷を治すため湯治に出た。来月十六日に戻って、この仕返しをする」と告げるのです。関内が刀を抜いて飛びかかると、3人は隣の塀へ跳び移り、影のように登っていきました。そして、話はここで終わっています。

なぜ結末がないの?ハーンの前置きと結び

この話の大きな特徴は、ハーンが本編の前後に自分の言葉を書き足していることです。前置きでは、暗い塔の階段を上っていったら先がなかった、というたとえを使い、昔の日本の本には途中で終わってしまう話がある、と語ります。作者がなまけたのか、出版する人とけんかしたのか、急に呼ばれて机に戻れなかったのか、書いている途中で亡くなったのか、と理由を想像してみせます。

結びでは、続きは昔の書き手の頭の中にしかなく、もう誰にもわからない、と書きます。いくつか結末は思いつくけれど、西洋の読者が納得するものはない。だから、魂を飲み込んだらどうなるのかは、読者自身に考えてほしい、と締めくくります。結末がないこと自体が、この話のこわさになっているのです。

時代と文化の背景

舞台は江戸時代の前半、武士が主君に仕えていた時代です。若党は主君のそばに仕える身分の低い武士で、宿直は夜に屋敷の番をする仕事でした。正月に主君が挨拶回りをし、家来がお供をするのは当時のふつうの光景です。

ハーンが下敷きにしたのは、江戸時代の説話集『新著聞集』の一話だという説がよく知られています。日本の古い怪談を英語で書き直し、世界に紹介したのがハーンの仕事でした。

漫画版で変えたところ・足したところ

漫画「怪談傑作集 ―百物語の夜―」では、語り手の福来が行灯のそばで物語を語り出し、最後に灯を吹き消すという枠を作っています。これは漫画のオリジナルですが、原典でハーンが受け持っていた前置きと結びの役を福来が担う形にしています。

茶屋の様子や正月の白山の景色、関内の年齢や性格、両親の姿、平内や家来たちの顔立ちや衣装、壁抜けや塀を登る場面の見せ方も、漫画で描き足した部分です。一方で、原典にない結末は足していません。「続きは読む人が想像するしかない」というところを、絵の工夫で味わえるようにしています。

漫画で読むには

文章で読むと短い話ですが、茶碗に浮かぶ顔や、音もなく現れる若侍、塀を這い上がる3人の影は、絵で見るとぞっとする迫力があります。Manga Portal の「怪談傑作集 ―百物語の夜―」は全話無料で、会員登録なしですぐに読めます。結末のない夜の続きを、ぜひ自分の目で確かめてみてください。

この話の登場人物

関内(せきない)
中川佐渡守に仕える若党で、茶碗に映った見知らぬ顔をお茶ごと飲み干してしまう気の強い主人公。
式部平内(しきぶ へいない)
茶碗に顔が映った正体不明の美しい若侍で、その夜に関内の前へ現れ、斬られると壁の中へ消える。
平内の家来3人(へいないのけらい)
翌晩に関内の家を訪ね、主人が来月十六日に戻って仕返しをすると告げる侍たち。
中川佐渡守(なかがわ さどのかみ)
関内の主君で、年始の挨拶に向かう途中、白山の茶屋で一行と休む。
ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)
前置きと結びの語り手で、途中で終わった古い話を、結末を作らずに読者へゆだねる。

よくある質問

「茶碗の中」はどんな話?

茶碗のお茶に映った見知らぬ若侍の顔を、若党の関内が飲み干してしまう怪談です。その夜から若侍本人や家来が現れ、仕返しを予告したところで話が途切れます。

「茶碗の中」に結末がないのはなぜ?

ハーンは、もとになった古い日本の話が途中で終わっていたと説明しています。続きを勝手に作らず、魂を飲み込んだらどうなるかを読者に考えてほしい、と結んでいます。

「茶碗の中」は何という本に入っている?

ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が1902年に出した『骨董(Kottō)』に、「In a Cup of Tea」という題で入っています。

「茶碗の中」の元ネタは?

江戸時代の説話集『新著聞集』の一話がもとになっている、という説がよく知られています。

式部平内とは何者?

茶碗に顔が映った若侍で、正体は最後まで明かされません。屋敷の誰もその名を知らず、斬られると壁を抜けて消えてしまいます。

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