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第4話逃げずに、首のない体を隠した僧ろくろ首

怪談傑作集・第4話。山で親切な一家に泊めてもらった、もとは荒武者の旅の坊さん。真夜中、眠る家族の体に首がないと気づいた彼は、逃げるかわりに、ひとつの体をそっと隠した。

20ページ全話無料・会員登録なし

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次回予告 · 制作中第5話 第五席 茶碗の中の顔

お茶の中に、知らない男の顔が映っていた。彼はそれを飲み干した。——この話には、結末がない。

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この話のあらすじ

今からおよそ500年前、九州の菊池家に仕えていた磯貝平太左衛門武連という強い武士がいました。主家がほろびたあと、彼はお坊さんになって回龍と名乗り、諸国を旅します。危ない場所もこわがらない、度胸のある僧でした。 甲斐の国(今の山梨県)の山で日が暮れて野宿しようとしたとき、通りかかった木こりに「ここは物の怪が出る」と言われ、その小屋に泊めてもらいます。小屋には男女4人がいて、主人を入れると5人。主人は「昔は身分のある者だったが、自分のあやまちで家をつぶした」と打ち明け、回龍はその人のために夜おそくまでお経を読みました。 夜中、水を飲もうとした回龍は、横になった5つの体に首がないことに気づきます。

原典怪談傑作集 ―百物語の夜― — 日本 · 話は江戸時代〜明治の伝承。根拠にする原典の刊行は、ハーンの英語版が1902年(Kottō)・1904年(Kwaidan)、円朝の速記本が1884年(怪談牡丹燈籠)・1888年(真景累ケ淵)

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この話のもとになった神話

ろくろ首 あらすじ|小泉八雲『怪談』の回龍と首の怪

ひとことで言うと: 「ろくろ首」は、もとは武士だった旅の僧・回龍が、山の小屋で眠る人々の体に首がないことに気づき、逃げずに主人の体を隠して、首だけの化け物たちと戦う物語です。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が1904年に出した『Kwaidan(怪談)』に入っています。

元の話のあらすじ

今からおよそ500年前、九州の菊池家に仕えていた磯貝平太左衛門武連という強い武士がいました。主家がほろびたあと、彼はお坊さんになって回龍と名乗り、諸国を旅します。危ない場所もこわがらない、度胸のある僧でした。

甲斐の国(今の山梨県)の山で日が暮れて野宿しようとしたとき、通りかかった木こりに「ここは物の怪が出る」と言われ、その小屋に泊めてもらいます。小屋には男女4人がいて、主人を入れると5人。主人は「昔は身分のある者だったが、自分のあやまちで家をつぶした」と打ち明け、回龍はその人のために夜おそくまでお経を読みました。

夜中、水を飲もうとした回龍は、横になった5つの体に首がないことに気づきます。血も切り口もないので、人殺しではなく「ろくろ首」だとわかりました。首のない体を動かすと首は戻れずに死ぬ、という書物の言い伝えを思い出し、回龍は主人の体を窓から外へ出します。

林では、首たちが虫を食べながら「太った坊主を食おう」と話していました。体がなくなったと知った主人の首は怒りくるい、首たちが回龍におそいかかります。回龍は若木を引き抜いて打ち払い、4つの首は逃げますが、主人の首は回龍の左のそでにかみついたまま死にました。夜が明けると、回龍は首をそでにぶら下げたまま信濃の諏訪へ下り、人殺しとうたがわれて捕まります。けれど年長の奉行が首を調べてろくろ首だと認め、回龍があの有名な磯貝だと見抜いたため、ほめられて許されました。その後、山で出会った追いはぎが首つきの衣を買い取りますが、やがてたたりがこわくなり、甲斐の小屋のそばに首をほうむって供養します。その墓は「ろくろ首の塚」として今も見られる、と語り手は伝えている、という言葉で話は終わります。

主な登場人物

主人公の回龍は、武士の強さと僧の信心をあわせ持つ人物です。こわがらずに冷静に考え、書物の知識で化け物の正体を見破ります。首がついたそでを「よいお土産だ」と笑うような、豪快でどこかおかしみのある人です。

敵役は小屋の主人です。親切な木こりのふりをして、昔のあやまちを悔いているようにも見せますが、正体はろくろ首の頭目でした。ほかに、仲間の4人のろくろ首、取り調べをする諏訪の奉行たち、最後に出てくる気の小さい追いはぎが登場します。

この話が伝えていること(文化・時代の背景)

ろくろ首というと首が長く伸びる妖怪を思いうかべる人が多いですが、首が体から抜けて飛び回る「抜け首」と呼ばれるタイプも昔から語られてきました。この話に出てくるのは、首が抜けて飛ぶほうです。

作者のハーンはギリシャ生まれで、日本に移り住み、のちに小泉八雲と名乗りました。日本の古い話を英語で書き直して世界に紹介した人です。この話も江戸時代の読み物がもとになったと言われています。ハーンが書くと、おそろしいだけでなく、主人公のゆうゆうとした強さや、追いはぎの場面のようなおかしさも楽しめる話になっています。こわさの中に、知恵と勇気で危機を乗りこえる気持ちよさがあることが、長く読まれてきた理由の一つでしょう。

漫画版で変えたところ

筋の要点は原典どおりにえがいていますが、漫画ならではの工夫もあります。話の語り手・福来が「えー、一席お付き合いを願います」と始め、最後に行灯を一つ吹き消す場面は、漫画オリジナルの演出です。

原典では、小屋の人々は「男女4人と主人」としか書かれていません。漫画で「一家」として見せていることや、4人の年齢や組み合わせ、様子を見に行く首がだれかは、漫画で決めたものです。人物の顔や衣装、小屋や諏訪の町のようす、取り調べのこまかいせりふ、戦いのコマ割りも漫画の創作です。戦いは墨の動きで見せて血はえがかず、首が虫を食べる場面も気味悪くなりすぎないようにおさえています。追いはぎの後日談は、くすっと笑える2ページの結びにまとめました。

漫画で読むには

文章で読むと少しこわい「ろくろ首」も、漫画なら回龍の落ち着いた表情や、首たちとの戦いの動きが目で追えて、話の流れがすっと入ってきます。Manga Portal の『怪談傑作集 ―百物語の夜―』は全話無料で、会員登録もいりません。第4話を読んだあとは、ほかの怪談も一話ずつ、百物語の夜を楽しむ気分でのぞいてみてください。

この話の登場人物

回龍(かいりょう)/磯貝平太左衛門武連(いそがい へいだざえもん たけつら)
もとは九州・菊池家の強い武士で、主家がほろびたあと僧になり、物の怪もこわがらずに旅をする主人公。
小屋の主人(こやのあるじ)
親切な木こりのふりをして回龍を泊めるが、正体は回龍を食べようとたくらむろくろ首の頭目。
小屋の4人(こやのよにん)
主人の仲間の男女4人で、夜になると首が抜けて林で虫を食べるろくろ首たち。
年長の奉行(ねんちょうのぶぎょう)
諏訪で回龍を取り調べ、首を調べてろくろ首だと見抜き、回龍の正体にも気づく役人。
追いはぎ(おいはぎ)
回龍から首つきの衣を買い取るが、たたりがこわくなって首をほうむり供養する、気の小さい悪人。

よくある質問

小泉八雲の「ろくろ首」はどんな話?

もとは武士の旅の僧・回龍が、山の小屋で首のない体を見つけ、主人の体を隠して首の化け物と戦う話です。回龍は化け物の首をそでにつけたまま町へ下り、その勇気をたたえられます。

この話のろくろ首は首が伸びるの?

この話のろくろ首は、首が長く伸びるのではなく、首が体から抜けて飛び回るタイプです。このタイプは「抜け首」とも呼ばれます。

回龍はなぜ首のない体を隠したの?

首のない体を別の場所に動かすと、首は体に戻れずに死んでしまう、という書物の言い伝えを思い出したからです。逃げるかわりに、化け物の弱点をついたのです。

「ろくろ首」は何という本に入っている?

ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が1904年にアメリカで出した『Kwaidan(怪談)』に入っています。同じ本には「耳なし芳一」や「雪女」なども入っています。

話の最後はどうなるの?

回龍から首つきの衣を買った追いはぎが、たたりをこわがって甲斐の小屋のそばに首をほうむり、供養します。その墓は「ろくろ首の塚」として今も見られると語られて、話は終わります。

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