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第1話50年後に海に沈む一族の、最初の勝利殿上の闇討ち

シリーズ第1話。武士として初めて殿上に上がったタダモリは、それを妬む公家たちに宴の夜の闇討ちを企てられる。息子キヨモリが見守るなか、刃を一度も振るわず、暗がりできらめく「刀」と忠実な家来イエサダだけで、見下してきた者たちを黙らせる逆転の物語。

19ページ全話無料・会員登録なし

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この話のもとになった神話

平家物語「祇園精舎」「殿上闇討」のあらすじ|忠盛と銀箔の木刀

平家物語のはじまり「祇園精舎」のあらすじ

平家物語は、平家一門が栄えてから滅びるまでを語る軍記物語です。最初の段「祇園精舎」は、物語全体のテーマを示す序文にあたります。インドにあった祇園精舎の鐘の音や、娑羅双樹の花の色を例にして、この世のものは移り変わり、勢いのある者もいつか必ず衰えると説きます。おごり高ぶる者の栄えは、春の夜の夢や、風に吹き飛ばされる塵のように長くは続かない、というのです。

そのあと、実際に滅んだ人物の名前が並びます。中国からは秦の趙高、漢の王莽、梁の朱异、唐の安禄山。日本からは平将門、藤原純友、源義親、藤原信頼です。そして最も近い時代の例として、平清盛のありさまは言葉では言い表せないほどだったと結びます。物語は、主人公である一族の「終わり」を最初に予告してから始まるのです。

「殿上闇討」のあらすじ ―銀箔を貼った木刀―

次の段「殿上闇討」の主人公は、清盛の父・平忠盛です。平家は桓武天皇の血を引く一族ですが、臣下になってからは地方の国司を務めるばかりで、宮中の殿上の間に上がること(昇殿)は許されていませんでした。忠盛は鳥羽院の願いで得長寿院というお寺を造って納め、その褒美として三十六歳で初めて昇殿を許されます。

これを妬んだ殿上人(昇殿を許された貴族)たちは、五節豊明節会という宮中の宴の夜に、忠盛を闇討ちしようと相談します。うわさを聞いた忠盛は、武士の家に生まれた者が思わぬ恥を受けてはならないと考え、準備をしてから参内しました。大きな刀を装束の下に差し、薄暗いところでそっと抜いて耳ぎわの髪に当てると、刀は氷のように光って見えました。さらに家来の家貞が、狩衣の下に鎧を着こみ、太刀を抱えて庭に控えます。出て行けと言われても、主君がどうなるか見届けると言って動きません。貴族たちは手を出せず、闇討ちは行われませんでした。

それでも貴族たちは、舞を舞う忠盛を、一族が伊勢に住んでいたことや、忠盛の目が斜視だったことにかけた言葉ではやして笑います。忠盛は宴の途中で刀を宮中の役人・主殿司に預けて退出し、様子を尋ねる家貞には「何もなかった」とだけ答えました。後日、貴族たちは「武装した家来を庭に置き、刀を差して宴に出た」と訴えます。ところが預けた刀を取り寄せてみると、中身は木刀に銀箔を貼ったものでした。上皇は、その場の恥を避けながら後の訴えまで見越した用意を褒め、忠盛は罪に問われませんでした。

この話が伝えていること(時代の背景)

この話が描くのは、武士が貴族の世界に足を踏み入れはじめた時代です。武力を持ちながらも、宮中では低く見られていた武士が、どうすれば認められるのか。忠盛は刀を一度も振るわず、知恵と準備だけで危機を切り抜けました。家貞が暴れださないよう本当のことを言わなかった点にも、忠盛の慎重さが表れています。

この勝利は、平家が出世していく出発点になりました。忠盛の子・清盛はやがて太政大臣にまで上りつめ、一族は大いに栄えます。しかし最後は、1185年の壇ノ浦の戦いで海に沈みます。冒頭で「おごる者は長く続かない」と予告したうえで、一族の最初の勝利を語る。この組み立てが平家物語の大きな見どころです。なお平家物語は琵琶法師が語り伝えた物語で、作者ははっきりせず、諸説あります。

漫画版で変えたところ

原典の「祇園精舎」は、教えと人物の名前が並ぶだけで、場面はありません。漫画の序章で、鐘や娑羅双樹、滅んだ人物たちの姿を絵にして見せているのは創作です。また、武士が「番犬」のように扱われていたという導入は、昇殿を許されなかったことを表すために漫画で考えたたとえです。

いちばん大きな違いは清盛です。原典の「殿上闇討」に清盛は登場しません。少年の清盛が父を見守る場面は、物語のその後につなげるための漫画の演出です。ほかにも、人物の顔立ちやせりふの言い回し、忠盛が企てを誰から聞いたか、刀が木刀だと分かる瞬間の見せ方、宴の灯りや舞の様子などは漫画で描き足しました。原典では貴族たちに名前がないので、個々の人物の描き方も創作です。

漫画で読むには

「平家物語 ―源平合戦、驕れる者の最期―」第1話では、宴の夜の暗がりで刀がきらめく緊張の場面や、木刀だと明かされる逆転の瞬間を、絵で一気に味わえます。あらすじを知ってから読むと、忠盛がどこまで先を読んでいたのかがよく分かるはずです。

この漫画は全話無料で、会員登録なしで読めます。50年後に海に沈む一族が、どのように栄え、どのように滅んでいくのか。教科書でおなじみの冒頭の続きを、第1話から気軽にたどってみてください。

この話の登場人物

平忠盛(たいらのただもり)
清盛の父。武士として初めて昇殿を許され、貴族たちの闇討ちを銀箔の木刀と周到な準備で切り抜けた。
平家貞(たいらのいえさだ)
忠盛の忠実な家来。鎧を着こんで庭に控え、退去を命じられても主君のそばを離れなかった。
平清盛(たいらのきよもり)
忠盛の嫡男。「祇園精舎」で、おごって滅びる者の最も近い例として名前が挙がる。
鳥羽院(とばいん)
忠盛の昇殿を許した上皇。訴えを受けて刀を確かめ、忠盛の用意の深さを褒めた。
殿上人たち(てんじょうびと)
忠盛の昇殿を妬んで闇討ちを企て、はやし言葉で笑い、後で処分を訴えた貴族たち。原典には個人名がない。
主殿司(とのもづかさ)
宮中の雑務を担う役人。忠盛から預かった刀が、後に木刀だったと確かめる証拠になった。

よくある質問

平家物語の冒頭「祇園精舎」はどんな意味?

この世のものはすべて移り変わり、勢いのある者もいつか必ず衰える、という教えを述べた部分です。おごり高ぶる者の栄えは長く続かないと説き、平家一門の滅亡を最初に予告しています。

「殿上闇討」とはどんな話?

初めて昇殿を許された平忠盛を、妬んだ貴族たちが宴の夜に襲おうとした話です。忠盛は刀を光らせて見せ、家来の家貞を庭に控えさせて闇討ちを防ぎました。後の訴えも、刀が木刀だったことで退けています。

忠盛の刀はなぜ木刀だったの?

その場では本物の刀に見せて身を守り、あとで「宮中に刀を持ちこんだ」と訴えられても罪にならないようにするためです。上皇はこの先を読んだ用意を、武士の謀として褒めました。

殿上闇討の場面に清盛は出てくる?

原典の「殿上闇討」に清盛は登場しません。清盛は「祇園精舎」で名前が挙がるだけです。漫画で少年の清盛が父を見守る場面は創作です。

平家物語の作者は誰?

作者ははっきりしておらず、いくつかの説があります。平家物語は琵琶法師が語って広めた物語で、語り伝えられるうちに多くの本(系統)が生まれました。

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