この話のもとになった神話
オースティン『説得』あらすじ第3〜4章|アンと海軍士官の別れた恋
第3〜4章のあらすじ(原典)
ナポレオン戦争が終わり、海で戦っていた海軍士官たちが次々と陸へ戻ってきます。浪費で借金を抱えたサー・ウォルター・エリオットは、自分の館ケリンチ・ホールを人に貸すことになりました。代理人のシェパード氏は「戦争で稼いだ金持ちの海軍士官こそ、借り手にぴったりです」と勧めます。
見た目と家柄にこだわるサー・ウォルターは、海軍が大嫌いです。「身分の低い者を出世させるし、海風で男の顔をすぐ老けさせる」と文句を言い、ずっと年上に見えたのに実は40歳だったという、ある提督の日焼け顔を笑いの種にします。ここで次女のアンだけが「国のために尽くしてくれた海軍の人たちには、安らげる家に住む資格がある」と、落ち着いて弁護します。
借り手の候補は、サマセット出身でトラファルガーの海戦にも出たクロフト提督に決まっていきます。提督の妻の弟が昔この近くのモンクフォードにいたという話になり、名前を思い出せないシェパード氏に代わって、アンが真っ先に「ウェントワースさんです」と答えてしまいます。父は副牧師をしていた兄のほうを思い浮かべ、「ああ、家柄も何もない男だ」と片づけました。アンは赤くなった頬を冷ますために部屋を出て、林の小道で「あと何か月かしたら、あの人もここを歩くかもしれない」とつぶやきます。
第4章は回想です。1806年の夏、手柄を立てて海軍中佐になったばかりのフレデリック・ウェントワース(副牧師の弟)と19歳のアンは恋に落ち、婚約しました。しかし父は冷たく黙って反対し、母代わりのレディ・ラッセルは「若すぎるし、相手には財産も後ろ盾もない」とアンを説き伏せます。アンは彼のためにもなると信じて婚約を解き、傷ついた彼は土地を去りました。その後アンは早く若さと輝きを失い、22歳のころにはチャールズ・マスグローヴの求婚も断っています。27歳になった今、アンはあのときの判断を違う目で見ていて、予想どおり出世して財産を築いたらしい彼のことを、新聞や海軍の名簿で知っているのです。
この話が伝えていること(時代の背景)
物語の舞台は、ナポレオン戦争が終わったころのイギリスです。当時の海軍では、敵の船を捕まえると賞金が入る仕組みがあり、生まれが貧しくても腕しだいでお金持ちになれました。一方、サー・ウォルターのような古い地主の家は、家柄はあっても浪費でお金に困っていました。
つまりこの2章には、「家柄の古い世界」と「実力で上がってくる新しい世界」がぶつかる様子が描かれています。父が海軍を見下す場面は笑いを誘いますが、そのそばで、実力の世界へ進んだ恋人を家柄のせいで手放したアンの痛みが、静かに浮かび上がります。
題名の「説得」は、アンが周りの人に説得されて婚約を解いたことを指しています。人の忠告に従うのは正しかったのか、という問いが作品全体を通るテーマです。なお、『説得』はオースティンが亡くなった後の1817年末に出版された、彼女の最後の長編小説です。
漫画版で変えたところ・足したところ
原典の第4章は、ほとんどが地の文による短いまとめで、二人の会話や会っている場面は書かれていません。漫画では回想を3〜4ページにふくらませ、若いころのウェントワースの見た目や表情、二人が手袋ごしに手を重ねるしぐさ、最後に会った場所と台詞を新しく描いています。これらは漫画の創作です。
レディ・ラッセルがアンを説得する場面も、「若すぎる・財産も後ろ盾もない」という中身は原典どおりですが、言い回しは漫画のオリジナルです。林の小道や館の部屋の風景、提督の日焼け顔をデフォルメで笑いにする演出も、漫画で足したところです。父が副牧師のほうを本気で思い浮かべて見下す、という原典の調子はそのまま残しています。
漫画の題名は「八年越しの恋」ですが、第4章の時点では別れから「7年あまり」とされています。1806年の夏の婚約から物語が進んで再会するころまでで、ほぼ8年になります。
漫画で読むには
文字で読むと短いまとめで終わる第4章の回想も、漫画なら19歳のアンの気持ちが表情やしぐさで伝わってきます。笑いだらけの相談の席で、アンだけが胸の中で揺れている、その対比も見どころです。
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この話の登場人物
- アン・エリオット
- 27歳の主人公。優しく分別があり、19歳で周りに説得されて婚約を解いた過去を、ひとりで胸にしまっている。
- フレデリック・ウェントワース
- アンの元婚約者の海軍士官。当時は財産も縁故もなかったが、その後出世して財産を築いたらしい。この2章では名前と回想だけで登場する。
- サー・ウォルター・エリオット
- アンの父で準男爵。見た目と家柄にこだわり、借金のせいで館を貸すことになる。海軍を見下している。
- レディ・ラッセル
- 亡き母の親友でアンの母代わり。アンのためを思って婚約に反対し、説得した。悪人ではない。
- シェパード氏
- エリオット家の代理人。機嫌を損ねないように話を運び、海軍士官を借り手に勧める。
- クロフト提督
- 館の借り手候補の海軍少将。トラファルガーの海戦に出た人物で、妻はウェントワースの姉にあたる。
よくある質問
『説得』(ジェイン・オースティン)はどんな話?
19歳のときに周りに説得されて海軍士官との婚約を解いたアン・エリオットが、約8年後にその人と再会する恋愛小説です。1817年に、作者が亡くなった後に出版された最後の長編です。
アンはなぜウェントワースとの婚約を解いたの?
父が冷たく反対し、母代わりのレディ・ラッセルが「若すぎるし、相手には財産も後ろ盾もない」と説得したからです。アンは、婚約を解くことが彼のためにもなると信じていました。
題名の「説得」とはどういう意味?
アンがレディ・ラッセルに説得されて婚約を解いたことを指しています。人の忠告に従うことは正しかったのか、という問いが物語全体のテーマになっています。
サー・ウォルターはなぜ海軍を嫌っているの?
海軍は身分の低い者を出世させるし、海の暮らしで男の顔を早く老けさせる、と考えているからです。家柄と見た目を何より大事にする彼の性格がよく表れた場面です。
手袋ごしに手を重ねる場面は原作にある?
ありません。原典の第4章は二人の恋をまとめた地の文だけで、会話や会っている場面は書かれていません。手を重ねるしぐさは漫画版で足した演出です。
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