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第2話終わらせると決めた恋に、彼が来た源氏物語「賢木」野宮の別れ

シリーズ第2話。伊勢へ下ってこの恋を自分の手で終わらせると決めた女のもとへ、別れの前に男が会いに来てしまう。簾ごしに歌を交わし、一夜を語り明かした女は、引き止めの手紙にも応えず、振り返らずに都を去る。

19ページ全話無料・会員登録なし

ひとことで言うと: 「野宮の別れ」は、源氏物語の「賢木(さかき)」の巻の冒頭で、六条御息所が光源氏との苦しい恋を断つために、斎宮になった娘について伊勢へ下ると決め、その前に嵯峨野の野宮を訪ねてきた源氏と一夜を語り明かして別れる物語です。御息所は帰ったあとの源氏の手紙にも心を揺らしますが、決心は変えずに都を去ります。

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次回予告 · 制作中第3話 和泉式部日記 ―橘の香―

亡くなった恋人の弟から、一枝の花が届いた。――1000年前に実在した恋多き歌人が、自分で書いた恋の記録。

この作品はここまで。次はこちらもどうぞ

この話のあらすじ

六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)は、光源氏の年上の恋人です。源氏の正妻・葵の上が亡くなったあと、世間は「次は御息所が正妻に迎えられるのでは」と噂しました。ところが源氏の訪れはかえって途絶え、御息所はつらい思いを抱えます。ちょうど娘が伊勢神宮に仕える「斎宮(さいぐう)」に選ばれたため、御息所は娘について伊勢へ下り、この恋を自分から終わらせようと決めました。 出発の前、母娘は嵯峨野の「野宮(ののみや)」に移っていました。源氏はこのまま別れては薄情だと思われるし、自分も心残りだと考え、秋の終わりごろ、長月七日ごろに野宮を訪ねます。

原典恋と妖し ―大人の古典夜話― — 日本 · 平安時代(10〜12世紀。伊勢物語・源氏物語・和泉式部日記・今昔物語集)と江戸時代(1776年。雨月物語)。根拠にする刊本は1610〜1930年の刊行

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この話のもとになった神話

源氏物語「賢木」野宮の別れ あらすじ|六条御息所と光源氏

元の物語のあらすじ(源氏物語「賢木」冒頭)

六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)は、光源氏の年上の恋人です。源氏の正妻・葵の上が亡くなったあと、世間は「次は御息所が正妻に迎えられるのでは」と噂しました。ところが源氏の訪れはかえって途絶え、御息所はつらい思いを抱えます。ちょうど娘が伊勢神宮に仕える「斎宮(さいぐう)」に選ばれたため、御息所は娘について伊勢へ下り、この恋を自分から終わらせようと決めました。

出発の前、母娘は嵯峨野の「野宮(ののみや)」に移っていました。源氏はこのまま別れては薄情だと思われるし、自分も心残りだと考え、秋の終わりごろ、長月七日ごろに野宮を訪ねます。花の枯れた野原、かすれた虫の声、強く吹く松風、どこからか途切れ途切れに聞こえる楽の音。皮のついたままの木で作った黒木の鳥居や小柴垣に囲まれた、質素で神々しい仮の宮の様子に、源氏は胸を打たれます。

御息所はためらった末、簾(すだれ)ごしに源氏と会います。源氏は手折ってきた榊(さかき)の枝を簾の下から差し入れ、二人は歌を交わします。月の光の中で、これまでの恨みや思いを語り合ううちに夜が明けました。別れの朝にも歌を交わし、源氏は帰っていきます。

その後も源氏から心のこもった手紙が届き、御息所の心は揺れますが、いまさら引き返せないと決心を守ります。娘の斎宮は桂川でみそぎをし、宮中での別れの儀式をへて都を発ちます。源氏は出発の日に「鈴鹿川」を詠みこんだ歌を送り、御息所は翌日、逢坂の関を越えた先から返歌を届けました。源氏はその返事を手に、去っていく人を思って物思いに沈みます。

この物語が伝えていること(時代の背景)

斎宮とは、天皇に代わって伊勢神宮に仕えた未婚の皇族の女性です。選ばれると、宮中や野宮で身を清める期間を過ごしてから伊勢へ向かいました。野宮が飾り気のない黒木の鳥居や柴垣で作られているのは、神に仕える清らかな場所だからです。榊は神事に使う木で、源氏が榊を差し入れる場面は、神聖な場所に恋を持ち込むような、少し危うい美しさを感じさせます。

平安時代の貴族の女性は、男性の訪れを待つ立場に置かれがちでした。そんな中で御息所は、待つことをやめ、自分の意思で恋を終わらせる道を選びます。未練と誇りの間で揺れながらも振り返らない姿は、千年後の読者の心にも強く響きます。なお、京都・嵯峨野の野宮神社は、この場面ゆかりの地として知られています。

漫画版で変えたところ・足したところ

原典では、野宮の夜に二人が何を話したかは「昔からの思いを語り合った」としか書かれず、夜の中身もほのめかされるだけです。漫画では、歌以外のせりふを新しく作り、夜の場面は暗転させて別れの朝へ移しています。また、原典で「何の楽器かわからない」とされる遠くの音を、琴の音として描いています。

御息所の過去の回想(都の噂や、自分の心が怖くなった出来事)も漫画の見せ方です。原典では、前の巻の「葵」で御息所の生霊が葵の上を苦しめたとされる出来事があり、「賢木」では御息所の心の中でほのめかされるだけです。漫画も直接は描かず、ほのめかしにとどめています。

いちばん大きな演出は最後の場面です。漫画では御息所が鈴鹿川を渡りながら歌を詠み、振り返らずに去りますが、原典では、出発の翌日に逢坂の関の向こうから源氏へ返歌を送る形です。歌が源氏への返事であることは原典と同じです。

漫画で読むには

Manga Portal の『恋と妖し ―大人の古典夜話―』第2話「終わらせると決めた恋に、彼が来た」では、枯れゆく秋の嵯峨野、簾ごしの歌のやりとり、そして別れの朝までを、絵でじっくり味わえます。古文の授業で名前だけ知っていた六条御息所の、誇り高くて切ない一面に出会えるはずです。全話無料・会員登録なしで読めるので、あらすじを知ったうえで、ぜひ漫画でもこの別れを見届けてみてください。

この話の登場人物

六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)
亡き東宮の妃で斎宮の母。教養が高く誇り高い源氏の年上の恋人で、自分の意思で恋を断ち伊勢へ下る、この場面の主人公。
光源氏(ひかるげんじ)
御息所の恋人。薄情と思われたくない気持ちと本当の名残惜しさから野宮を訪ね、一夜を語り明かす。
斎宮(さいぐう)
御息所の娘で十四歳ほど。伊勢神宮に仕える斎宮に選ばれ、母が都を離れるきっかけとなる。のちの秋好中宮。
女別当(にょべっとう)
斎宮に仕える女官。源氏が斎宮に送った歌に、斎宮に代わって返事を書く。
朱雀帝(すざくてい)
当時の帝。宮中の大極殿で行われる別れの儀式で、斎宮の髪に櫛を挿す。

よくある質問

六条御息所はなぜ伊勢へ下ったの?

光源氏との苦しい恋を自分から断ち切るためです。娘が斎宮に選ばれたのをきっかけに、娘について伊勢へ行くことを決めました。

野宮(ののみや)とは何?

斎宮が伊勢へ向かう前に身を清めて過ごした仮の宮です。源氏物語では嵯峨野にあり、黒木の鳥居や小柴垣のある質素で神々しい場所として描かれています。

「賢木」という巻の名前の由来は?

源氏が野宮に榊の枝を持って訪ね、その榊を題材に御息所と歌を交わす場面にちなむとされます。榊は神事に使う神聖な木です。

野宮の別れのあと、二人はどうなった?

御息所は手紙で心を揺らしながらも決心を変えず、娘とともに伊勢へ下りました。出発の翌日には、源氏の歌への返歌を逢坂の関の向こうから送っています。

野宮の別れは源氏物語の何巻目?

第十帖の「賢木」の巻の冒頭です。六条御息所の生霊の出来事が描かれる「葵」の巻の次にあたります。

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