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第7話七年ぶりの家に、灯がともっていた雨月物語「浅茅が宿」

シリーズ第7話。「秋には必ず帰る」と妻に約束して京へ商いに出た男は、帰れない理由が重なるうちに七年を過ごしてしまう。草に埋もれた故郷で、彼の家にだけ灯がともっていた。

19ページ全話無料・会員登録なし

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次回予告第8話 西の対 ―月やあらぬ―

去年と同じ月。同じ梅。いないのは、あの人だけ。――千年前の男が詠んだ、“失恋の名歌”。

この作品はここまで。次はこちらもどうぞ

この話のあらすじ

舞台は室町時代の下総国葛飾郡、真間の郷(いまの千葉県市川市のあたり)。勝四郎は豊かな家に生まれましたが、畑仕事を嫌ったせいで家は貧しくなり、親族からも軽く見られていました。家を立て直そうと、勝四郎は残りの田を売って絹を仕入れ、京の商人・雀部曽次と一緒に京へ商いに行くと決めます。 妻の宮木は、美しいうえに心ばえも優れた女性でした。夫の旅を不安に思って引き止めますが、勝四郎は「この秋には必ず帰る」と約束して旅立ちます。ところがその夏、関東で大きな戦(享徳の乱)が起こり、郷の人々は次々と逃げていきました。宮木は夫の約束を信じて家に残り、言い寄ってくる男たちをはねつけ、戸を閉ざして待ちつづけます。

原典恋と妖し ―大人の古典夜話― — 日本 · 平安時代(10〜12世紀。伊勢物語・源氏物語・和泉式部日記・今昔物語集)と江戸時代(1776年。雨月物語)。根拠にする刊本は1610〜1930年の刊行

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この話のもとになった神話

雨月物語「浅茅が宿」のあらすじ|七年待った妻・宮木の物語

ひとことで言うと: 「浅茅が宿」は、「秋には帰る」と約束して京へ商いに出た勝四郎が、戦乱や病に阻まれて七年後にようやく故郷へ帰り、待っていた妻の宮木と一夜を過ごす物語です。夜が明けると家は廃屋で、宮木はすでに亡くなっており、勝四郎が会ったのは妻の霊でした。上田秋成『雨月物語』(1776年刊)巻之二に収められた一編です。

原典のあらすじ① 「この秋には帰る」という約束

舞台は室町時代の下総国葛飾郡、真間の郷(いまの千葉県市川市のあたり)。勝四郎は豊かな家に生まれましたが、畑仕事を嫌ったせいで家は貧しくなり、親族からも軽く見られていました。家を立て直そうと、勝四郎は残りの田を売って絹を仕入れ、京の商人・雀部曽次と一緒に京へ商いに行くと決めます。

妻の宮木は、美しいうえに心ばえも優れた女性でした。夫の旅を不安に思って引き止めますが、勝四郎は「この秋には必ず帰る」と約束して旅立ちます。ところがその夏、関東で大きな戦(享徳の乱)が起こり、郷の人々は次々と逃げていきました。宮木は夫の約束を信じて家に残り、言い寄ってくる男たちをはねつけ、戸を閉ざして待ちつづけます。

原典のあらすじ② 灯のともる家と、夜明けの塚

勝四郎は京で絹を売って利益を得ますが、帰り道の木曾で山賊に荷をすべて奪われます。関所も閉ざされたと聞き、「郷は焼け、妻も死んだだろう」と思い込んで引き返し、近江で熱病に倒れます。助けてくれた児玉嘉兵衛のもとに身を寄せるうち、七年が過ぎてしまいました。

ようやく帰った郷は草に埋もれていましたが、雷に打たれた松を目印に見つけた我が家にだけ、灯がともっていました。出てきたのは、ひどくやつれた宮木。二人は泣きながら離れていた間のことを語り合い、床につきます。ところが明け方、目を覚ますと屋根も戸もない荒れ家で、宮木の姿はありません。寝所の跡には土を盛った塚があり、宮木の筆で、夫を信じて今日まで生きてきたという思いをこめた辞世の歌が残されていました。郷に残っていた漆間の翁から、宮木が待ちつづけた末に亡くなり、翁が葬ったことを聞き、勝四郎は嘆き悲しみます。

題名の意味と、この物語が伝えていること

「浅茅」は、丈の低いチガヤという草のことです。「浅茅が宿」は、草がぼうぼうに生えた荒れ果てた家を指し、主のいない家と、待ちつづけた妻の姿を重ねた題名になっています。

物語の終わりで翁は、昔この地にいた「真間の手児奈」の言い伝えを語ります。手児奈は多くの男に想いを寄せられて思い悩み、身を投げたと『万葉集』にも歌われた娘です。翁は、宮木の心はその手児奈にもまさると語ります。約束を信じきった妻のまっすぐさと、帰れない理由を重ねるうちに約束を果たせなかった夫の弱さ。その対比が、怪談でありながら深い悲しみを残す理由です。なお、この話は中国・明代の怪異小説集『剪灯新話』の一編をもとにしているという説が広く知られています。

漫画版で変えたところ・足したところ

原典にある筋(約束、戦乱、七年の不在、灯のともる家、一夜の再会、夜明けの塚、翁の話)は、そのまま守っています。一方、原典には宮木について「美しい」「やつれていた」程度しか書かれていないため、顔立ちや衣装、家の間取りは漫画で作りました。

また、宮木がひとりで待った七年の日々(季節の移り変わり、機織り、夫の帰りを見張る姿)や、言い寄る男たちを断る場面の台詞、京や近江での勝四郎の暮らしの細部は、漫画で足した創作です。再会の夜の会話は、原典の要点を外さない範囲で現代の言葉にしています。宮木の死は翁の語りと季節の絵で見せ、遺体は描いていません。宮木が霊であることを夜の場面でどこまでほのめかすかも、漫画ならではの工夫です。

漫画で読むには

この話は、シリーズ「恋と妖し ―大人の古典夜話―」の第7話「七年ぶりの家に、灯がともっていた」として漫画にしています。草に埋もれた郷に一つだけともる灯、夜明けの有明の月など、文章で読むと想像しにくい景色も絵で味わえます。全話無料・会員登録なしで読めるので、結末を知ったうえでも、もう一度ページをめくって宮木の待った時間を感じてみてください。

この話の登場人物

勝四郎(かつしろう)
真間の郷の男。家を立て直そうと京へ商いに出るが、山賊や病に阻まれ、七年帰れなかった主人公。
宮木(みやぎ)
勝四郎の妻。美しく心の優れた女性で、戦乱の中も夫の約束を信じて家で待ちつづけた。
雀部曽次(ささべのそうじ)
毎年、足利の絹を仕入れに来る京の商人。勝四郎と一緒に京へ上る。
児玉嘉兵衛(こだまかへえ)
近江の武佐で、熱病に倒れた勝四郎を家に置いて看病した人。
漆間の翁(うるまのおきな)
郷に残っていた老人。宮木の最期を見届けて葬り、勝四郎に真相を語る。
真間の手児奈(ままのてごな)
翁の話に出てくる昔の伝説の娘。多くの男に想われて思い悩み、身を投げたと伝わる。

よくある質問

「浅茅が宿」の結末はどうなる?

勝四郎は七年ぶりに帰った家で妻の宮木と再会し一夜を過ごしますが、夜明けには家は廃屋で、宮木の姿はありません。寝所の跡に塚と辞世の歌があり、宮木はすでに亡くなっていて、会ったのは霊だったとわかります。

「浅茅が宿」の作者と、いつの作品?

作者は江戸時代の読本作家・上田秋成です。怪異小説集『雨月物語』(安永5年=1776年刊)の巻之二に収められています。

「浅茅が宿」という題名の意味は?

「浅茅」は丈の低いチガヤという草で、「浅茅が宿」は草の生い茂った荒れ果てた家のことです。主のいない家と、ひとりで待ちつづけた妻の境遇を表しています。

真間の手児奈とは誰?

いまの千葉県市川市の真間に伝わる、伝説の美しい娘です。多くの男に想いを寄せられて思い悩み、入り江に身を投げたと『万葉集』にも歌われています。

宮木はなぜ逃げずに待っていたの?

夫が「この秋には帰る」と約束したことを信じていたからです。戦乱で郷の人々が逃げても家に残り、言い寄る男たちも拒んで、夫の帰りを待ちつづけました。

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