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第12話「化けてみろ」と大蛇に迫られた役者田能久

落語傑作集の第12話・最終席。母の病を聞いて夜の山へ飛び出した田舎芝居の役者タノキュウは、名前を「タヌキ」と聞き違えた山の主の大蛇に「化けてみせろ」と迫られる。命がけの早変わりと「一番怖いのはお金」のひと言が、思いもよらない結末を呼ぶ。

19ページ全話無料・会員登録なし

ひとことで言うと: 田能久(たのきゅう)は、芝居が得意な百姓の久兵衛が、山の主の大蛇に名前を「たぬき」と聞き違えられ、狸のふりをして化け比べと「嫌いなもの」の打ち明け合いを切り抜ける古典落語です。大蛇は仕返しのつもりで「狸の一番嫌いなもの」のお金を投げ込み、久兵衛は思いがけず大金持ちになります。筋は四代目橘家円蔵の口演を記録した『円蔵落語会』(1908年・明治41年)で確かめました。

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この作品はここまで。次はこちらもどうぞ

この話のあらすじ

阿波の国(今の徳島県)の田能村に、久兵衛という百姓がいました。芝居がとても上手で、田舎芝居の役者として「田能久」の名で知られています。よその土地で一座と興行していたとき、故郷の母が病気だという知らせが届きます。興行先は伊予(今の愛媛県)とされ、宇和島とする型も多くあります。久兵衛は一人で山を越えて急いで帰ろうとしますが、山の中で日が暮れてしまいます。 やっと見つけた一軒の小屋で、白髪の老人に一晩泊めてもらうことになりました。名前を聞かれて「田能久」と答えると、老人は「狸か」と思い込み、自分はこの山の主の大蛇(うわばみ)だと正体を明かします。

原典落語傑作集 — 日本 · 噺は江戸時代〜明治の伝承。筋の根拠にする速記本は1890〜1925年の刊行

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この話のもとになった神話

田能久(たのきゅう)のあらすじとオチ解説|大蛇と狸の落語

田能久のあらすじ(原典の筋)

阿波の国(今の徳島県)の田能村に、久兵衛という百姓がいました。芝居がとても上手で、田舎芝居の役者として「田能久」の名で知られています。よその土地で一座と興行していたとき、故郷の母が病気だという知らせが届きます。興行先は伊予(今の愛媛県)とされ、宇和島とする型も多くあります。久兵衛は一人で山を越えて急いで帰ろうとしますが、山の中で日が暮れてしまいます。

やっと見つけた一軒の小屋で、白髪の老人に一晩泊めてもらうことになりました。名前を聞かれて「田能久」と答えると、老人は「狸か」と思い込み、自分はこの山の主の大蛇(うわばみ)だと正体を明かします。「狸なら化けてみせろ」と迫られた久兵衛は、持っていた鬘と衣装で女の姿になってみせ、大蛇はすっかり感心して本物の狸だと信じました。

夜更けに、二人はお互いの一番嫌いなものを打ち明け合います。大蛇は「煙草のヤニと柿渋」、久兵衛は「お金」と答えました。山を下りた久兵衛がこの話を村人に伝えると、村人たちはヤニと柿渋を持って山へ押しかけ、大蛇を追い払います。しゃべられたと恨んだ大蛇は、狸の嫌いなものをくれてやろうと、久兵衛の家に大金を投げ込みました。こうして久兵衛は思いがけず大金持ちになるのです。

落語とは? この漫画の語り手について

落語は、一人の噺家が座布団に座ったまま、扇子と手ぬぐいだけを使って、登場人物を全員演じ分ける日本の話芸です。寄席と呼ばれる演芸場で、数百年にわたって受け継がれてきました。話の最後には、聞き手をくすっと笑わせる「オチ(サゲ)」があります。この漫画の冒頭と結びに登場する噺家・笑門亭福来は、シリーズのために作った架空の語り手です。筋は明治・大正の速記本(話をその場で書き取った本)で確かめ、漫画の台本は私たちが自分で書きました。

話の仕掛けと時代の背景

この噺の仕掛けは、名前の聞き違いです。「たのきゅう」と「たぬき」は音がよく似ていて、日本では狸は人を化かす動物だと昔から言われてきました。だから大蛇は、久兵衛を同じ山の化け物仲間だと思い込み、親しく話しかけてくるのです。

大蛇の嫌いなものとして出てくる「ヤニ」は、煙草を吸うキセルの中にたまる脂のこと、「柿渋」は青い柿をしぼって作る渋い液で、木や紙を丈夫にするために暮らしの中で使われていました。どちらも蛇が嫌うものだと言われていたのです。また、田舎芝居の役者が鬘や衣装を持ち歩いていたことが、「化けてみせろ」の場面を切り抜ける助けになりました。芸が身を助けるところも、この噺の楽しさです。

漫画版で変えたところ・足したところ

原典の筋はそのままに、漫画では絵で楽しめるよう場面を描き足しています。一座の仲間や伊予の町のにぎわい、夜の山道や小屋の中の様子、大蛇が正体を見せる場面の見せ方は漫画の創作です。早変わりで演じる役柄や衣装の細かいところも、私たちが考えました。

村人たちの顔ぶれや大蛇を追い払う場面の動き、千両箱が窓から次々に飛び込んでくる絵も脚色です。母の病気がその後どうなったかは原典にははっきり書かれていないため、漫画でも控えめに描いています。噺家・福来のまくらと結びの一言、第1話「まんじゅうこわい」とつなげる演出も、漫画だけの工夫です。

オチ(サゲ)の解説

大蛇は、狸の一番嫌いなものは「お金」だと信じています。そこで、告げ口された仕返しとして、いやがらせのつもりでお金をどっさり投げ込みました。ところが、それは久兵衛が本当は一番欲しかったものです。仕返しのはずが、最高のごほうびになってしまう。このずれがオチの笑いです。

江戸時代には小判という金貨が使われ、「千両」は庶民が一生かかっても手にできないほどの大金でした。そして、この形は第1話「まんじゅうこわい」と同じです。「怖い」と言ってみせて、欲しいものを手に入れる。最初の席と最後の席が同じ笑いで結ばれ、シリーズの締めになっています。

漫画で読むには

Manga Portal の『落語傑作集 ―笑いの十二席―』は、全話無料で、会員登録なしで読めます。第12話「田能久」は、命がけの早変わりと、山奥での大蛇との化かし合いを絵で楽しめる最終席です。第1話「まんじゅうこわい」と読み比べると、結びの一言がいっそう楽しくなります。

この話の登場人物

久兵衛/田能久(きゅうべえ/たのきゅう)
阿波・田能村の百姓で、芝居上手の田舎役者。母の病を知って山を越え、大蛇の前で狸のふりを通す主人公。
白髪の老人/大蛇(うわばみ)
山中の小屋の主で、正体は山の主の大蛇。「田能久」を「狸」と聞き違え、最後はお金を投げ込んで仕返しをする。
村人たち
久兵衛から大蛇の弱点を聞き、ヤニと柿渋を持って山へ押しかけ、大蛇を追い払う人々。
久兵衛の母
故郷で病に伏しているとされ、久兵衛が山越えをするきっかけになる人物。
笑門亭福来(しょうもんてい ふくらい)
漫画の冒頭と結びに登場する、このシリーズの架空の噺家。原典には登場しない。

よくある質問

落語「田能久」はどんな話?

芝居上手の百姓・久兵衛が、山の大蛇に名前を「たぬき」と聞き違えられ、狸のふりをして切り抜ける噺です。お互いの嫌いなものを打ち明け合ったことから、最後は大蛇がお金を投げ込み、久兵衛が大金持ちになります。

田能久のオチはどういう意味?

大蛇は狸の一番嫌いなものが「お金」だと信じて、仕返しにお金を投げ込みます。でも、それは久兵衛が本当は一番欲しいものだった、という食い違いが笑いになっています。

なぜ大蛇は田能久を狸だと思ったの?

「たのきゅう」という名前が「たぬき」と聞こえたからです。日本では狸は人を化かす動物とされていたので、大蛇は化け物の仲間だと思い込みました。

ヤニと柿渋とは何?

ヤニはキセルなどにたまる煙草の脂、柿渋は青い柿から作る渋い液です。どちらも蛇が嫌うものだと言われていました。

田能久と「まんじゅうこわい」は似ている?

どちらも「怖い・嫌いだ」と言うことで、本当に欲しいものを手に入れる形の噺です。漫画のシリーズでは、第1話と最終話がこの共通点でつながっています。

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