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第10話用件を忘れた侍、思い出す鍵はお尻粗忽の使者

落語傑作集の第10話。腕は立つが大の粗忽者の侍・ジブエモンは、主君の使者として訪ねた屋敷で、伝えるはずの用件をすっかり忘れてしまう。思い出す方法は「尻をつねってもらうこと」。侍の指ではまるで効かず、大工のトメが道具を手に名乗り出るが――。

19ページ全話無料・会員登録なし

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次回予告 · 制作中第11話 湯屋番

銭湯の番台に座った居候の若旦那。仕事をそっちのけで始めた『妄想劇場』を、客全員が見ていた。

この作品はここまで。次はこちらもどうぞ

この話のあらすじ

ある大名家に、地武太治部右衛門(じぶた・じぶえもん)という家臣がいました。武骨で忠義にあつい侍ですが、とんでもない粗忽者(そそっかしい人)です。その治部右衛門が、殿様の使者として別の大名屋敷へ行くことになりました。 先方の屋敷では取次の家臣が丁寧に出迎え、座敷に通して「ご口上(使者が伝える正式な用件)を」とうながします。ところが治部右衛門は、伝えるはずの用件を一言も思い出せません。役目を果たせなければ腹を切るしかない、と思い詰めた治部右衛門は「子どものころから、尻をつねってもらうと物を思い出すのです」と打ち明けます。 取次の家臣が力いっぱいつねっても、鍛えた尻にはまるで効きません。

原典落語傑作集 — 日本 · 噺は江戸時代〜明治の伝承。筋の根拠にする速記本は1890〜1925年の刊行

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この話のもとになった神話

粗忽の使者 あらすじとオチ解説|用件を忘れた侍の落語

「粗忽の使者」のあらすじ(もとの落語の筋)

ある大名家に、地武太治部右衛門(じぶた・じぶえもん)という家臣がいました。武骨で忠義にあつい侍ですが、とんでもない粗忽者(そそっかしい人)です。その治部右衛門が、殿様の使者として別の大名屋敷へ行くことになりました。

先方の屋敷では取次の家臣が丁寧に出迎え、座敷に通して「ご口上(使者が伝える正式な用件)を」とうながします。ところが治部右衛門は、伝えるはずの用件を一言も思い出せません。役目を果たせなければ腹を切るしかない、と思い詰めた治部右衛門は「子どものころから、尻をつねってもらうと物を思い出すのです」と打ち明けます。

取次の家臣が力いっぱいつねっても、鍛えた尻にはまるで効きません。そこへ、屋敷で仕事をしていた大工の留が話を聞きつけて「俺がやる」と名乗り出ます。職人をそのまま使者の前に出すわけにはいかないので、留は侍の身なりをさせられ、慣れない侍言葉で座敷へ。隠し持った大工道具の釘抜きで、尻を思い切りつねります。治部右衛門は飛び上がって「思い出した!」。一同が身を乗り出して用件を聞くと――最後のひと言で噺は終わります(答えは後半の「オチの解説」で)。

落語とは? 一人ですべてを演じる日本の話芸

落語は、一人の噺家(はなしか)が座布団に座ったまま、扇子と手ぬぐいだけを道具に、登場人物全員を声や顔の向きで演じ分ける日本の話芸です。扇子は箸や刀、手ぬぐいは財布や手紙にもなります。江戸時代から寄席(よせ)という演芸場で語り継がれ、数百年続いてきました。本題に入る前の短い前置きを「まくら」、最後の落ちの一言を「オチ」または「サゲ」と呼びます。

時代の背景――武士の「使者」と「口上」

江戸時代、大名家どうしの連絡は、家臣が使者として相手の屋敷へ出向き、決まった言葉で用件を述べる「口上」で行われることがありました。使者は主君の代わりですから、その振る舞いは家の名誉そのものです。武士は面目(めんぼく)をとても大切にしたので、使いに来て用件が言えないのは大きな恥でした。治部右衛門が「腹を切る」とまで思い詰めるのは、大げさに見えて、この時代の感覚を誇張して笑いにしたものです。

一方の大工の留は、口が悪く威勢のいい江戸っ子の職人。かしこまった侍の世界に、職人の言葉と道具が飛び込んでくる身分のちがいのおかしさも、この噺の見どころです。

漫画版で変えたところ・足したところ

筋は、明治時代の終わり(1910年)に出版された落語の速記本(高座の語りを文字に起こした本)で確かめ、台本はManga Portalが自分たちで書きました。冒頭と結びに登場する噺家・笑門亭福来(しょうもんてい・ふくらい)は、このシリーズの架空の語り手で、もとの落語にはいません。まくらの小話も福来のオリジナルです。

ほかにも、両家の家名・紋・殿様の名前はすべて架空にし、実在の大名とは結びつけていません。主人公の呼び名「ジブエモン」、取次の家臣の名前や心配性な人柄、出かける支度のどたばた、留が侍に化けるときのずれた刀や着慣れない裃、尻をつねる場面の大げさな顔や効果音なども漫画で足した演出です。痛そうな場面は暴力ではなく、喜劇として描いています。

オチ(サゲ)の解説――なぜ笑えるのか

釘抜きでつねられ、ついに「思い出した!」と叫んだ治部右衛門。一同が「して、ご口上は?」と迫ると、胸を張ってこう答えます。「屋敷を出るとき、口上を聞かずに参った」。

つまり、痛い思いまでして思い出したのは、用件の中身ではなく「そもそも用件を聞いていなかった」という事実でした。思い出す・思い出さない以前の大失敗で、尻をつねった苦労も、腹を切る覚悟も、すべて空振りになります。面目を重んじる侍が、いちばん大事な場面で堂々と言い切ってしまうところに、粗忽者の噺らしい笑いがあります。ちなみに大工のあいだでは釘抜きを俗に「えんま(閻魔)」と呼び、地獄の閻魔様が舌を抜く道具にたとえた名前とされます。

漫画で読むには

Mangا Portalの「落語傑作集 ―笑いの十二席―」第10話では、この「粗忽の使者」を、汗と目玉が飛び出すにぎやかな絵で楽しめます。オチの直前の溜めや、にわか侍・留のちぐはぐな言葉づかいは、漫画ならではの見どころです。全話無料・会員登録なしで読めるので、ほかの古典落語とあわせて気軽にどうぞ。

この話の登場人物

地武太治部右衛門(じぶた・じぶえもん)
武骨で忠義な侍だが大の粗忽者で、使者に来た屋敷で用件をすっかり忘れてしまう主人公。
取次の家臣(とりつぎのかしん)
使者を迎える側の家臣で、頼まれて尻をつねるが効かず困り果てる。漫画では架空の名前と人柄にしている。
留(とめ)
屋敷で仕事をしていた江戸っ子の大工で、侍に化けて釘抜きで尻をつねる。
主君(しゅくん)
治部右衛門を使者に出す殿様。漫画では家名・紋とも架空にしている。
笑門亭福来(しょうもんてい・ふくらい)
冒頭と結びに高座で語る、このシリーズの架空の噺家。

よくある質問

「粗忽の使者」はどんな話?

そそっかしい侍が殿様の使者として他家を訪ね、伝えるはずの用件を忘れてしまう古典落語です。尻をつねられると思い出すという癖のため、最後は大工の留が釘抜きでつねります。

「粗忽の使者」のオチ(サゲ)は?

つねられて「思い出した」と叫んだ侍が、「屋敷を出るとき、口上を聞かずに参った」と答えるのがオチです。苦労して思い出したのが、用件をそもそも聞いていなかったことだった、という笑いです。

「粗忽」とはどういう意味?

そそっかしく、うっかりした失敗が多いことです。落語には粗忽者が主人公の噺がいくつもあり、「粗忽長屋」などもよく知られています。

なぜ侍は「腹を切る」とまで言うの?

使者は主君の代わりで、用件が言えないのは家の名誉を傷つける大きな恥だったからです。噺ではその武士の真面目さを大げさにして笑いにしています。

漫画の噺家・笑門亭福来は実在する人?

いいえ、Mangu Portalのこのシリーズのために作った架空の語り手で、実在の噺家とは関係ありません。

漫画を最初から読む(無料)